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労働保険の年度更新とは?計算方法とミスしやすいポイントを解説

労働保険料の年度更新のポイント

労働局から緑色の封筒が届くと、「もう、この季節か?」と感じる人事総務担当者の方は多くいらっしゃることでしょう。この労働局から送られてくる緑の封筒(業種によっては、青の場合も)に労働保険料の申告書が封入されています。

私たち、社会保険労務士にとって、お客様から緑の封筒が集まってくると、これから業務繁忙期が始まるぞ!のサインです。

労働保険料の年度更新とは

労働保険料は「4月から翌年3月末」までを保険年度としており、前年度支払った保険料「概算保険料」と、保険年度終了後、実際に支払った賃金を基に計算した「確定保険料」を精算することによって申告・納付します。これを「年度更新」といいます。

「年度更新」の際に、注意すべきポイントについて解説します。

ポイント1 賃金集計表の作成

労働保険料は、労災保険料と雇用保険料、一般拠出金を合わせて支払います。これらを計算するために、「賃金集計表」を作成します。

賃金集計表は、緑色の封筒に同封されていますが、厚生労働省HPからもダウンロードが可能です。

厚生労働省Webサイト 年度更新申告書計算支援ツール(継続事業用)(リンク)

賃金集計表を作成するに当たって、押さえておかなければならないのは、「労災保険と雇用保険の対象者が違う」ということです。前者は、パート、アルバイト等の臨時労働者を含む「全ての労働者」が対象となっており、後者は、週20時間以上勤務する等の要件を満たしている「雇用保険被保険者」が対象となります。

賃金集計表は、「労災保険(一般拠出金)」と「雇用保険」の対象者を分けて月ごとに集計します。当然、対象となるメンバーが違っていれば、保険料の対象となる賃金総額も異なります。

賃金集計表「労災保険」には臨時労働者の欄があります。ここには、臨時労働者であって、「雇用保険」に加入していない人の人数と賃金を記入します。通常、この欄以外は、労災保険も雇用保険も同じ数字となります。違いがある例を挙げると、出向者の受け入れがある会社(出向先)は、労災保険の対象となる賃金総額が高くなりますし。出向者を送り出す会社(出向元)は、労災保険の賃金総額は低くなります。

ポイント2 業務ソフトの設定

昨今、賃金計算はレコル給与などの「業務ソフト」で行っている企業が多いと思われます。

社会保険の算定基礎届と違って、労働保険料は、各人ごとに報告するのではなく、事業所全体で計算します。雇用保険に加入されていない臨時労働者の集計、正社員の集計、役員の集計などができるように設定しておくことで、賃金集計表の作成が容易になります。

レコル給与では、利用者情報の画面から労災・雇用保険とも個人ごとに設定が可能です。その設定に基づき、事業所全体の人数と賃金が自動で集計され、画面で確認することができます。

ポイント3 概算保険料の計算

「ポイント1」で計算した賃金総額に労災保険料率、雇用保険料率をそれぞれ乗じることで、確定保険料が計算されます。この保険料率は、業種ごとに定められています。

新年度に支払われる賃金の見込み額が前年度の100分の50(半分)以上、100分の200(2倍)以下の場合は、前年度の確定賃金総額を新年度の賃金総額として保険料を計算することになっているため、「確定保険料=新年度の概算保険料」となります。

なお、新年度において、大幅な人員の変動が予想される場合など、上記要件に該当しない場合は、新年度の賃金総額をあらためて見積もって概算保険料を算出します。

ポイント4 保険料率の確認

今年度の労災保険料率は、前年度から変更はされませんが、雇用保険料率は、変更されています。保険料率については、申告書に印字されているものですが、変更の有無については、必ず事前に確認するようにしてください。

令和7年労災保険料率(リンク)

令和7年度雇用保険料率(リンク)

ポイント5 納付金額の計算

前年度に納付している「申告済概算保険料」と「ポイント3」で算出した「確定保険料」とを精算し、納付額を計算します。

(1)「申告済概算保険料」-「確定保険料」が+の場合

「充当額」が生じています。したがって、新年度の概算保険料から「充当額」を控除して、保険料を納付します。なお、「充当額」が、新年度の概算保険料よりも高い場合は、還付請求をすることが出来ます。

 

(2)「申告済概算保険料」-「確定保険料」が-の場合

「不足額」が生じています。したがって、新年度の概算保険料に「不足額」を加えて、保険料を納付します。

 

(3)一般拠出金

一般拠出金とは、「石綿健康被害救済法」に基づき、平成19年4月1日から石綿健康被害救済のための「一般拠出金」の申告・納付が必要となっています。労災保険適用事業主の全事業主が対象で、労働保険料と併せて申告・納付することになります。

一般拠出金率は全業種同一で1000分の0.02となっています。

一般拠出金は、労災保険分の賃金総額に「1000分の0.02」を乗じて算出します。

ポイント6 提出・納付期限は6月1日から7月10日まで

「概算・確定保険料申告書」の提出・納付期限は毎年6月1日から7月10日までとなっています。労働保険料は、口座振替による納付が可能です。労働保険料を口座振替すると下表の通り、納付期限が延長されます。特に、第1期については、大幅に延長されますので是非ご活用ください。

口座振替を希望する場合は、所定の申込用紙を、金融機関の窓口に提出します。

申込用紙等は以下のサイトからダウンロードできます。

厚生労働省Webサイト 労働保険料等の口座振替納付(リンク)

納期全期または第1期第2期第3期
口座振替納付日9月8日11月14日2月16日
通常の納期限7月10日10月31日1月31日

注:納期限が土日祝日の場合は、土日祝日明けまで。

申込み手続きが完了すると、振替が開始される納付日の2カ月程度前までに登録情報の確認通知が届きます。その後、口座振替日の2週間程度前に振替納付額等の通知が、納付日から1カ月程度で振替結果通知が送られてきます。

なお、概算保険料が40万円(注)以上の会社は、1年分の労働保険料を3期に分けて納めることが可能です。第2期以降の納付書は各納期限の概ね10日前に都道府県労働局から送付されます。

注: 労災保険または雇用保険のいずれか一方のみの保険関係が成立している場合は20万円以上

ポイント7 最終チェック

私が、労働保険料を申告する際に最後に必ず確認するのは、「充当額」です。一般的に、賃金総額は、前年度より増額していくものです。特に昨今のように、賃金の大幅な上昇が行われている中では、特にその傾向が強いと思われます。したがって、その企業に人員削減があったなど、何か理由がなければ、「充当額」が発生しづらい状況にあります。

最後に納付額を確認して、多額の「充当額」が生じている場合には、「〇〇会社、人員整理などあったかな?」などと理由の確認をします。前述の通り、労働保険料は、事業所全体の賃金総額が基になっており、最終チェック時に、労働者一人一人の額を確認するのは負担となります。

この理由を確認することによって、「桁間違い」「出向者算入漏れ」などの大きなミスを防ぐことにつながります。

レコルの給与計算オプションの詳細についてはこちら

プロフィール

飯野 正明(特定社会保険労務士)

社会人歴34年間、社労士業界一筋。2010年いいの経営労務管理事務所、東京都日本橋で開業。2018(平成30)年Be Ambitious社会保険労務士法人に改称し、代表社員に就任。
現在、役員3名、スタッフ10名、テレワークスタッフ5名の18名で、顧問先だけでなく自分の事務所においても「働くをたのしめる」職場づくりを実践している。

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