blog

レコルブログ

  1. ホーム
  2. レコルブログ

毎月の勤怠締め作業で、「給与計算が終わった後に過去のデータが変わっていた」「勤務設定を変更したら、過去の集計結果まで変わってしまった」といった経験はありませんか? レコルには、こうした締め後の勤怠データの変更や再集計を防ぐための「勤務表の確定機能」があります。 勤怠データを確定しておくことで、給与計算に使用したデータをその時点の状態で管理しやすくなります。 本記事では、「勤怠の締め」と「確定」の違い、確定機能を利用するメリット、レコルでの具体的な操作手順や運用のポイントについて詳しく解説します。 勤怠の「締め」と「確定」は何が違う? 「締め」と「確定」は混同されやすい言葉ですが、レコルで勤怠を管理する際には、それぞれ役割が異なります。 勤怠締め(締め処理)勤務表の確定何をする?勤怠データを確認・修正・集計する勤務表を確定し、その時点のデータを保持する位置づけ業務上の一連の作業レコル上で行う操作主な目的正しい勤怠データを完成させる確定した勤怠データを保持するタイミング一定期間の終了時など締め作業の完了時、または日々の運用 勤怠締めとは、1か月などの対象期間について、出退勤時刻や残業、休暇などの勤怠データを確認・修正・集計する業務全体を指します。 一方、勤務表の確定は、締め作業などで確認した勤務表を、その時点の状態で確定するレコル上の操作です。 つまり、 「締め=対象期間の勤怠データを確認・修正し、給与計算などに利用できる状態に整える業務」 「確定=確認・修正した勤務表を、その時点の状態で確定するレコル上の操作」 と考えると分かりやすいでしょう。 確定した勤務表は編集できなくなり、勤務設定を変更しても再集計されません。 勤怠を正しく締めた後に勤務表を確定しておくことで、給与計算などに使用した勤怠データを管理しやすくなります。 「勤怠締めとは?やり方・手順・よくあるミスと効率化のコツを解説」(関連記事) なぜ勤怠の確定が必要?レコルで確定する4つのメリット レコルの勤務表の確定機能を活用すると、勤怠締め後のデータ管理をより安全に行えます。 1. 確定時点の勤務データを保持できる 勤務表を確定すると、その時点の勤務表が確定した状態になります。 給与計算などに使用する勤務表を確定しておくことで、後から勤務設定を変更した場合でも、確定した勤務表の集計結果が変わることを防げます。 月次の勤怠締めでは、正しいデータを確認したうえで確定することがポイントです。 2. 勤務設定を変更しても、確定した勤務表は再集計されない 勤怠管理では、働き方や就業規則の見直しなど、運用途中で勤務設定や集計に関する設定を変更することがあります。 通常、勤務設定を変更すると、その設定をもとに勤務表が自動集計されます。 一方、確定した勤務表は、勤務設定を変更しても再集計されません。 そのため、過去の勤務実績を確定しておくことで、後から設定を変更した際に、過去の給与計算に使用した勤務表の集計結果まで変わってしまうことを防げます。 例えば、 6月分の勤務表を確定 ↓ 7月から勤務設定を変更 ↓ 6月分の確定した勤務表は再集計されない というように、過去に確定した勤務実績と、その後に変更した勤務設定による勤務集計結果を分けて管理できます。 3. 確定時のアラート・申請チェックで不備を確認できる レコルでは、勤務表を確定する際に、出退勤アラートや進行中の申請がある場合、画面上で確認できる仕組みがあります。 例えば、 打刻忘れ未承認の申請 などが残っていないかを確認できます。 締め作業の最後に確定処理を行うことで、勤怠データに不備が残っていないかを確認するきっかけにもなります。 ※設定によって、確認ダイアログを表示するか、アラートや進行中の申請がある場合に確定できないようにするかを選択できます 【確定項目の設定画面】 「勤務の確定時に出退勤アラート/進行中の申請を確認する」にチェックした場合 「出退勤アラート/進行中の申請がある場合に勤務の確定を不可にする」にチェックした場合 設定を変更する手順につきましてはオンラインマニュアル「環境設定【勤務表】を設定する」のSTEP3をご参照ください。 4. 日々の確定で月末の負担を分散できる 勤務表の確定は、月末にまとめて行うだけではありません。 レコルでは、日単位で勤務表を確定する運用も可能です。 例えば、前日の勤怠を毎日確認して確定する、あるいは1週間ごとに確認・確定するといった運用ができます。 日頃から打刻漏れや申請の不備を確認し、問題がなければ確定しておくことで、月末に集中する勤怠確認の負担を分散できます。 日々の勤務の編集/確定 指定日に対して、複数の従業員の勤務表をまとめて編集することができます。 また、従業員の名前をクリックして、対象者の勤務表を開き編集することもできます。 勤務表の一括確定 月の締め作業として複数の従業員の1か月間の勤務表をまとめて確定することができます。 詳しくは「従業員の勤務表を確定する」をご覧ください。 「あとから修正があるから確定できない」は誤解? 「確定すると、その後は一切修正できないのでは?」と考えて、確定機能を利用していないケースもあります。 しかし、確定後に修正が必要になった場合でも、確定を解除して対応できます。 例えば、締め後に打刻漏れや申請の遅れなどが発覚した場合は、必要に応じて確定を解除し、勤怠データを修正したうえで再度確定できます。 つまり、 「修正が発生する可能性があるから確定しない」 のではなく、 「基本は確定しておき、必要な場合だけ解除して修正する」 という運用がおすすめです。 確定を解除する必要が生じた場合は、修正内容や理由を社内で記録・確認できるルールを設けておくと、より適切に運用できます。 レコルでの勤怠確定の手順 レコルで月次の勤怠締め・確定を行う場合は、以下の流れで確認します。 Step 1. 勤怠データの集計結果を確認する [勤務管理]>[勤務表一覧]タブを開き、従業員ごとの勤務表を確認します。 例えば、 総労働時間時間外深夜時間出勤日数 などの集計結果を確認し、想定と異なるデータがないか確認します。 Step 2. 打刻忘れや入力漏れを確認する [勤務管理]>[アラート一覧]タブを開き、打刻忘れや勤務表の入力漏れなどがないか確認します。 件数をクリックしてアラート対象者を確認し、不備がある場合は、該当する勤務表を確認し、必要に応じて修正します。 締め日になってからまとめて確認するのではなく、日々の勤怠管理の中で不備を解消しておくと、締め作業をスムーズに進められます。 Step 3. 未承認の申請を確認・処理する [勤務管理]>[承認一覧]タブを開き、残業や有給休暇などの未承認申請が残っていないか確認します。 未承認の申請は「進行中」と「承認対象」のステータスで確認できます。 未承認の申請がある場合は、内容を確認して承認します。 ※申請機能を利用していない場合は、このステップは不要です。 Step 4. 勤務表を確定する 最後に、[勤務管理]>[勤務表一覧]タブから対象従業員の勤務表を確定します。 必要な確認・修正を行ったうえで勤務表を確定しましょう。 特に、給与計算に使用する勤務表を確定した後に、勤務設定を変更する可能性がある場合は、あらかじめ勤務表を確定しておきましょう。 確定した勤務表は勤務設定を変更しても再集計されないため、過去の勤務表への影響を防げます。 詳細はオンラインマニュアル「従業員の勤務表を確定する」をご参照ください。 さらに便利に使いこなす!確定機能の設定 レコルでは、自社の勤怠管理方法に合わせて、確定時のチェック項目やアラートの動作を設定できます。 確定項目を追加する [設定]>[環境設定]>[勤務表]タブの「確定項目の設定」から、確定時に確認する項目を追加できます。 最大3個まで項目を追加でき、表示項目設定から勤務表に表示させることができます。 例えば、1つ目を本人、2つ目を部長などの所属長、3つ目を人事労務担当者とするなど、自社の確認フローに合わせて複数の確認項目を設定できます。 確定時のアラート・申請チェックを設定する 先述の通り、[環境設定]>[勤務表]タブから、確定時に「出退勤アラート」や「進行中の申請」がある場合の動作を設定できます。 例えば、確認用のダイアログを表示する設定や、エラーとして確定処理を止める設定が可能です。 自社の運用に合わせて設定することで、確定時のチェック漏れを防ぎやすくなります。 まとめ|勤怠の「確定」で締め後のデータを適切に管理しよう 勤怠の「締め」と「確定」は、似ているようで役割が異なります。 締めは、勤怠データを確認・修正・集計して正しい状態に整える業務。 確定は、整えた勤務表をその時点の状態で確定し、後からの再集計を防ぐための操作です。 レコルの勤務表の確定機能を活用することで、 確定時点の勤務データを保持できる勤務設定を変更しても確定した勤務表は再集計されない確定時に勤怠の不備や未承認申請を確認できる日々の確定によって月末の確認作業を分散できる といったメリットがあります。 また、確定後に修正が必要になった場合も、必要に応じて確定を解除して修正し、再度確定できます。 まだ勤務表の確定機能を利用していない場合は、まずは月次の勤怠締めが完了したタイミングで勤務表を確定する運用から始めてみましょう。 日々の勤怠確認・確定まで運用を広げることで、月末に集中しがちな勤怠確認の負担を分散することもできます。

毎月の締め日が近づくと、「紙の申請書が戻ってこない」「Excelの集計データが合わない」「打刻漏れを一人ずつ確認しなければならない」といった対応に追われていませんか? 勤怠締め(締め処理)は、毎月の勤怠データを確認・集計し、給与計算などに利用できる状態にするための重要な業務です。勤怠データに不備があると、給与計算の誤りや労働時間の把握漏れなどにつながる可能性があります。 一方で、タイムカードやExcelを使った勤怠管理では、データの回収や打刻漏れの確認、申請・承認の催促、集計・転記などに多くの手間がかかります。 本記事では、勤怠締めとは何か、具体的なやり方・手順、紙やExcelでよくあるミス、勤怠締めを効率化する方法について分かりやすく解説します。 勤怠締め(締め処理)とは? まずは、勤怠締めがどのような業務なのか、「勤怠管理」との違いや一般的なスケジュールを確認しましょう。 勤怠締めの概要と「勤怠管理」との違い 「勤怠管理」と「勤怠締め」は混同されやすい言葉ですが、指す範囲やタイミングが異なります。 項目勤怠管理勤怠締め定義従業員の出退勤、休暇、残業時間などを記録・管理すること毎月の勤怠データを確認・集計し、確定するための作業目的労働時間や休暇などを適切に把握・管理する給与計算などに利用する勤怠データを確定するタイミング日々の運用毎月の締め日 勤怠管理は、日々の出退勤や休暇、残業時間などを記録・管理する業務全体を指します。 一方、勤怠締めとは、毎月蓄積された勤怠データを確認・集計し、給与計算などに利用できる状態にするための作業です。 つまり、勤怠管理が「日々の記録・管理」であるのに対し、勤怠締めは「毎月の勤怠データを確認・集計する作業」と考えると分かりやすいでしょう。 日々の勤怠管理を適切に行い、締め日までに必要な確認・修正を済ませておくことが、スムーズな勤怠締めにつながります。 代表的な締め日・給与支払日のスケジュール例 締め日や給与支払日は企業によって異なります。 例えば、以下のようなスケジュールがあります。 15日締め/当月末日払い20日締め/当月末日払い末日締め/翌月15日払い末日締め/翌月25日払い 給与支払日までに給与計算を行う必要があるため、締め日から給与支払日までの期間を考慮して業務スケジュールを組むことが重要です。 締め日から給与支払日までの期間が短い場合、未打刻の確認や勤怠データの修正、給与計算などを短期間で行わなければなりません。 そのため、締め日になってからまとめて確認するのではなく、日々の勤怠データを確認し、できるだけ不備を早期に解消しておくことがポイントです。 勤怠締めのやり方・一般的な手順 一般的な勤怠締めは、主に以下の4ステップで進めます。 Step1. 勤怠データを回収・確認する まず、給与計算の対象期間における全従業員の勤怠記録を集めます。 紙のタイムカードや出勤簿、Excelなどで管理している場合は、各拠点・部署からデータや書類を回収して集約します。 この段階で、対象者の勤怠データがすべてそろっているかを確認します。 Step2. 残業・休暇などの申請と承認状況を確認する 次に、残業や休日勤務、有給休暇などの申請状況を確認します。 申請が提出されているかだけでなく、必要な承認が完了しているかも確認しましょう。 未申請・未承認のものが残っていると、勤怠データの修正や給与計算に影響する可能性があります。 Step3. 打刻漏れや入力ミスを修正する 勤怠データに不備がないか確認します。 例えば、以下のようなものがあります。 出勤・退勤の打刻漏れ二重打刻出退勤時刻の入力間違い休憩時間の入力漏れ深夜勤務などによる勤怠データの不整合申請内容と勤怠データの不一致 不備が見つかった場合は、本人や管理者に事実関係を確認し、必要に応じて修正します。 修正後は、正しい勤怠データになっているかを再確認します。 Step4. 勤怠データを集計し、給与計算へ反映する 最後に、勤怠データを集計し給与計算へ利用できる状態にします。 例えば、以下のような項目を確認・集計します。 総労働時間時間外労働時間深夜労働時間休日労働時間欠勤・遅刻・早退有給休暇取得状況 その後、給与計算ソフトへ手入力・転記したり、CSVなどを利用してデータを連携したりします。 給与計算までExcelで行っている場合は、勤怠データを給与計算用のExcelへ転記するケースもあります。 勤怠締めでよくあるミス・課題とトラブル事例 勤怠締めでは、さまざまな確認や修正が発生します。 特に紙やExcelで勤怠管理を行っている場合、次のような課題が起こりやすくなります。 タイムカードの回収遅れや集計漏れが発生する 複数の拠点や部署がある場合、紙のタイムカードや出勤簿を回収するだけでも時間がかかります。 締め日になっても書類が届かず、全社分の勤怠データを集計できないといったケースも考えられます。 また、回収した書類を一つずつ確認・集計する必要があるため、従業員数や拠点数が増えるほど担当者の負担も大きくなります。 紙の申請・承認が遅れ、締め日直前に業務が集中する 残業や有給休暇の申請を紙で行っていると、 「申請書が上長のもとで止まっている」 「上長が不在で承認できない」 「申請書の提出自体を忘れていた」 といったことが起こる可能性があります。 締め日直前に未承認の申請がまとめて届くと、勤怠担当者の確認・修正作業も集中します。 打刻漏れや不備の確認・催促に時間がかかる 紙のタイムカードやExcelでは、打刻漏れや入力ミスなどを目視で確認する必要があります。 不備が見つかるたびに本人や上長へ電話・メールなどで確認し、修正を依頼する必要があるため、担当者の負担が大きくなります。 さらに、本人が勤務日の状況をすぐに思い出せない場合などは、確認や修正に時間がかかることもあります。 手入力や転記による給与計算ミスが発生する 勤怠データを給与計算ソフトやExcelへ手入力・転記する場合、入力間違いや転記漏れなどのヒューマンエラーが発生する可能性があります。 また、Excelの関数やマクロが複雑になると、作成した担当者でなければ修正できないなど、業務の属人化につながることもあります。 安定した勤怠管理を行うためには、担当者の経験や勘に依存しすぎない仕組みを作ることも重要です。 勤怠締めを効率化する4つのポイント 勤怠締めの負担を減らすには、「締め日にまとめて処理する」運用から、「日々の勤怠管理の中で不備を解消していく」運用へ変えることがポイントです。 具体的には、以下のような方法があります。 1. 勤怠データをリアルタイムで集計する 勤怠管理システムを利用すると、従業員が打刻したデータをもとに労働時間などを自動で集計できます。 締め日に一から集計する必要がなくなるため、締め作業では最終確認に集中しやすくなります。 2. 打刻漏れや勤怠の不備を早めに把握する 打刻漏れや休憩時間の不足などをシステムで確認できるようにすると、締め日まで不備を放置することを防ぎやすくなります。 不備を見つけたタイミングで本人や管理者に確認してもらうことで、締め日直前の確認作業を減らせます。 3. 申請・承認をWeb化する 残業や休暇などの申請・承認をWeb上で行えるようにすると、紙の申請書を回収する必要がなくなります。 申請・承認状況を画面上で確認できれば、未申請・未承認のものも把握しやすくなります。 4. 給与計算とのデータ連携を行う 勤怠データを給与計算ソフトへ連携できるようにすると、集計した時間を給与計算用のデータへ手入力する作業を減らせます。 転記作業を減らすことで、入力ミスや確認作業の削減にもつながります。 クラウド型勤怠管理システムなら勤怠締めを効率化できる クラウド型勤怠管理システムでは、従業員の打刻データや申請内容がリアルタイムで反映されるため、締め日直前に大量のデータを回収・集計する必要がありません。 また、打刻漏れや申請漏れの確認、勤怠データの集計、給与計算ソフトへのデータ出力などを効率化できるため、担当者の負担軽減につながります。 レコルなら「自動集計」と「アラート」で確認作業を効率化 クラウド型勤怠管理システム「レコル」では、日々の打刻データをもとに勤務時間などを自動で集計できます。 また、打刻漏れや休憩時間の不足などの勤怠上の不備や、設定した時間を超えた残業などをアラートで確認できるため、締め日になってから一つずつ勤怠データを確認する負担を減らせます。 本人や管理者への通知にも対応しているため、不備を早い段階で確認・修正しやすくなります。 Web申請・承認で紙の回収や確認を効率化 レコルでは、残業や有給休暇などの申請・承認をWeb上で行えます。 申請内容が承認されると勤怠データにも反映されるため、紙の申請書を回収したり、申請内容をもとに手作業で勤怠データを修正したりする負担を軽減できます。 申請内容は自社の運用に合わせて設定できるため、紙からWeb申請への移行にも対応しやすくなっています。 また、シンプルな画面設計により、PC操作に慣れていない従業員や管理者でも利用しやすいこともレコルの特徴です。 月額100円/人から始められる レコルは、勤怠管理に必要な機能を月額100円/人から利用できます。 無料お試し期間中から利用できるメールサポートや予約制の電話サポート、自動応答チャットも用意されています。 休暇管理やワークフロー(申請・承認)、36協定管理なども追加料金なしで利用できるため、まずは勤怠管理から始め、必要に応じて利用範囲を広げることも可能です。 質とスピードに自信あり!レコルの「サポート力」(関連記事) 給与ソフト連携と「勤務表の確定機能」で締め後のデータを管理 レコルでは、給与計算オプションを利用することで、勤怠管理から給与計算まで一つのシステムで行えます。 また、主要な給与計算ソフトに対応したCSVデータを出力できるため、勤怠データを給与計算ソフトへ転記する作業を効率化できます。 さらに、レコルには「勤務表の確定機能」があります。 勤務表を確定すると、確定時点の勤怠データを保存でき、確定後に勤務設定を変更しても勤務表が再集計されない仕組みになっています。 締め後の勤怠データを管理することで、給与計算へ引き渡したデータと、その後に変更されたデータとの食い違いを防ぎやすくなります。 「勤怠の「確定」とは?締めとの違いとレコルで正しく運用すべき理由」(関連記事) まとめ|勤怠締めは「締め日にまとめて確認」しないことが効率化のポイント 勤怠締めとは、毎月の勤怠データを確認・集計し、給与計算などに利用できる状態にするための重要な業務です。 一般的には、 勤怠データを回収・確認する残業・休暇などの申請・承認状況を確認する打刻漏れや入力ミスを修正する勤怠データを集計し、給与計算へ反映するという流れで行います。 紙やExcelによる勤怠管理では、データの回収や打刻漏れの確認、申請・承認の催促、給与計算ソフトへの転記などに多くの手間がかかります。 勤怠締めを効率化するためには、締め日にまとめて作業するのではなく、日々の勤怠データをリアルタイムで確認し、不備を早い段階で解消できる仕組みを整えることが重要です。 クラウド型勤怠管理システム「レコル」なら、勤怠データの自動集計やアラート、Web申請・承認、給与計算ソフトとの連携などによって、毎月の勤怠締めにかかる確認・集計作業を効率化できます。 「毎月の勤怠締めに時間がかかっている」「紙やExcelによる勤怠管理から移行したい」という企業は、レコルの活用をご検討ください。 レコルを無料で試してみる

社会保険の扶養を外れる手続きは、事実発生から5日以内の届出が原則です。 対応が遅れると、従業員が誤って扶養のまま医療機関を受診してしまい、後日医療費の返還を求められるといったトラブルにつながるおそれがあります。 この記事では、社会保険の扶養を外れる場面と手続きの流れ、必要書類や提出期限に加え、従業員への影響、手続きが遅れた場合のリスクまで、人事担当者が押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。 社会保険の扶養を外れる場面とは 健康保険の被扶養者が扶養を外れる場面は、大きく分けて「従業員の家族本人が勤務先で社会保険の加入条件を満たしたとき」と「収入増加などにより扶養の条件を満たさなくなったとき」の2つです。 社会保険の扶養を外れる場面で確認が大切なのが、「いつの時点で扶養から外れるのか」という資格喪失日の考え方です。 資格喪失日を起点に届出期限や新しい保険への切り替え時期が決まるため、場面ごとにルールを理解しておきましょう。 従業員本人が社会保険加入条件を満たしたとき これまで専業主婦(主夫)や無職だった家族が就職した場合や、パート勤務先での労働条件が変わり社会保険の加入条件を満たした場合は、当人が勤務先の健康保険・厚生年金保険に加入するため、扶養から外れます。 この場合、扶養から外れる日は「就職先で被保険者資格を取得した日(入社日など)」です。 パート・アルバイトなどの短時間労働者は、正社員の4分の3以上働いていなくても、次の条件をすべて満たすと社会保険の加入対象となります。 週の所定労働時間が20時間以上であること 月額賃金が8.8万円以上であること(年収換算で約106万円。いわゆる「106万円の壁」) 2か月を超える雇用の見込みがあること 学生でないこと 従業員数51人以上の企業(特定適用事業所等)に勤務していること なお、2025年に成立した年金制度改正法により、このうち「月額賃金8.8万円以上」の賃金要件は2026年10月1日に撤廃される予定です。また、企業規模要件も2027年10月から段階的に縮小され、最終的には撤廃されることが決まっています。 短時間労働者の家族を扶養に入れている従業員が多い職場では、今後、扶養から外れるケースが増えることが見込まれるため、最新の適用条件を確認しておきましょう。 社会保険の加入条件の詳細は、以下の記事で解説しています。 関連記事:社会保険の加入条件とは?|レコルブログ 扶養条件を満たさなくなったとき 被扶養者と認定されるには、収入要件と、被保険者との続柄・生計維持関係(家族の範囲や同一世帯であることなど)の要件を満たす必要があります。これらを満たさなくなったときに扶養から外れます。 収入要件の基本は「年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)」で、かつ同居の場合は被保険者の収入の半分未満、別居の場合は被保険者からの仕送り額未満であることです。 ここでいう年間収入は、過去の収入ではなく、扶養認定日以降の1年間の収入見込みで判定します。パート収入の増加などで年間収入が基準額以上になると見込まれるようになった時点で、扶養の条件を満たさなくなります。 なお、2025年10月1日以降は、19歳以上23歳未満の被扶養者(被保険者の配偶者を除く)に限り、収入要件が「年間収入150万円未満」に緩和されています。大学生世代の子どもを扶養に入れている従業員には影響の大きい改正のため、あわせて周知しておくとよいでしょう。 このほか、離婚により配偶者が家族の範囲から外れた場合、別居により生計維持関係がなくなった場合、被扶養者が75歳に到達し後期高齢者医療制度へ移行した場合なども、扶養から外れます。 扶養の条件(収入要件・家族の範囲・同一世帯要件)の詳細は、以下の記事で解説しています。 関連記事:社会保険の扶養条件とは?扶養控除や年収の壁との関係を解説|レコルブログ 社会保険の扶養を外れる手続きの流れ 社会保険の扶養を外れる手続きは、従業員からの申し出を起点に、会社が届出を行う流れとなります。 ここでは、協会けんぽ加入企業を想定した基本的な流れを4つのステップで解説します。 健康保険組合に加入している場合は、提出先や添付書類が異なることがあるため、加入する組合の案内をあわせて確認してください。 【1】従業員から会社へ申し出る 最初のステップは、従業員から会社への申し出です。ただし、従業員は「どのような場合に申し出が必要か」を知らないことが多いため、会社側からの周知が欠かせません。 次のようなケースが発生したら、速やかに申告するよう、入社時の案内や社内掲示、年に一度の被扶養者状況の確認(被扶養者資格再確認)の機会などを通じて伝えておきましょう。 扶養している家族が就職した、または勤務先で社会保険に加入した 家族のパート収入が増え、年間収入が基準額以上になる見込みとなった 離婚した、家族と別居して仕送りをしなくなった 申し出の受付には、家族の異動内容を記載する社内様式(家族異動届・身上異動届など)を用意しておくと、必要な情報を漏れなく収集でき、後続の手続きがスムーズになります。 就職による削除であれば就職先の資格取得日、収入増加による削除であれば収入が基準額以上になった時期など、資格喪失日の判断に必要な情報を確認しておきましょう。 【2】会社が健康保険の扶養削除手続きを行う 従業員からの申し出を受けたら、会社は「健康保険被扶養者(異動)届」を作成し、扶養を外れる事実の発生から5日以内に提出します。扶養から外れる手続きは、被扶養者の「削除」の異動手続きとして行います。 提出先は、協会けんぽに加入している場合は日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)、健康保険組合に加入している場合は各組合です。 組合によっては独自様式や添付書類(就職先の資格情報がわかる書類の写しなど)を求められる場合があるため、事前に確認しておきましょう。電子申請(e-Gov等)による提出も可能です。 なお、扶養を外れるのが配偶者で、国民年金の第3号被保険者に該当していた場合は、健康保険の扶養削除にあわせて第3号被保険者の資格も失います。 就職して厚生年金保険に加入する場合は、第2号被保険者への切り替えが就職先経由で行われます。一方、収入増加などで扶養を外れて国民年金に加入する場合は、本人による手続きが必要です。従業員本人が14日以内に市区町村の窓口で、第1号被保険者への種別変更手続きを行うよう案内しましょう。 参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構 【3】健康保険証(資格確認書等)を返却する 被扶養者(異動)届の提出とあわせて、扶養から外れる家族に交付されていた資格確認書(従来の健康保険証に代わる書類)を回収し、返却します。高齢受給者証や限度額適用認定証などの交付を受けている場合は、それらも一緒に返却が必要です。 従来の健康保険証は新規発行が終了し、経過措置期間も満了しているため、手元に残っている場合は本人が破棄して差し支えありません(取り扱いは保険者の案内に従ってください)。 マイナ保険証を利用している場合は、カード返却は不要で、資格喪失の情報はオンライン資格確認のデータへ反映されます。ただし、データ反映までにはタイムラグがあり、資格喪失日以降に扶養の資格で受診すると医療費の返還問題が生じるため、受診の際に、どの資格になっているか窓口で確認するよう、本人に必ず伝えてもらいましょう。 【4】新しい健康保険へ加入する 扶養から外れた家族は、いずれかの健康保険に加入し直す必要があります。就職や労働条件の変更により勤務先の社会保険に加入する場合は、勤務先が資格取得手続きを行うため、本人の手続きは原則不要です。 一方、収入増加などで扶養を外れたものの勤務先の社会保険に加入しない場合は、本人が住所地の市区町村で国民健康保険の加入手続きを行います。 手続き期限は扶養を外れた日(資格喪失日)から14日以内で、加入していた健康保険の資格喪失を証明する書類(資格喪失証明書など)が必要となるのが一般的です。 国民健康保険の保険料は資格喪失日まで遡って発生するため、手続きが遅れても未加入期間の保険料負担がなくなるわけではない点も、あわせて案内しておきましょう。 社会保険の扶養を外れたとき・従業員への影響とは 扶養を外れる手続きを進めると、従業員から「保険料はいくらかかるのか」「何が変わるのか」と質問される機会が増えます。ここでは、扶養を外れた家族(および従業員の世帯)に生じる主な影響を3つの観点から整理します。 社会保険料の負担方法や金額が変わる 被扶養者である間は、健康保険料の負担はありませんが、扶養を外れると、加入する制度に応じて本人に保険料負担が発生し、世帯全体でみると手取りが減る場合があります。 負担の方法や金額は、勤務先の社会保険に加入するのか、国民健康保険に加入するのかで大きく異なります。 【社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する場合】 勤務先の社会保険に加入する場合、健康保険料と厚生年金保険料を会社と本人が折半で負担し、本人負担分は毎月の給与から天引きされます。保険料は給与額(標準報酬月額)に保険料率を乗じて計算します。 例えば、協会けんぽ加入企業で標準報酬月額20万円(40歳未満)の場合は以下のとおりです。 健康保険料:月額約9,850円(本人負担分) 子ども・子育て支援金:230円(同) 厚生年金保険料:月額18,300円(同) 合計:月額約28,380円 (令和8年度の保険料率・東京都の場合) 40歳以上65歳未満の場合は、これに介護保険料(1.62%・労使折半)が加わります。 保険料率は都道府県や年度によって異なるため、最新の保険料額表で確認しましょう。 もっとも、保険料負担は生じるものの、厚生年金保険への加入により将来の年金額が手厚くなるなどの給付面の変化もあるため(詳細は後述)、負担額とあわせて説明できるようにしておくと、従業員の理解を得やすくなります。 参考:令和8年度保険料額表|協会けんぽ 【国民健康保険に加入する場合】 国民健康保険に加入する場合、保険料(保険税)は市区町村ごとに定められ、前年の所得や世帯の加入人数などをもとに計算されます。 会社との折半負担はなく全額が自己負担となり、給与天引きではないため、市区町村から送付される納付書や口座振替により本人が納付します。 また、20歳以上60歳未満で国民年金の第3号被保険者だった配偶者は、第1号被保険者として国民年金保険料(令和8年度は月額17,920円)を自分で納付することになります。 納付を忘れると将来の年金額や障害年金・遺族年金の受給に影響するおそれがあるため、健康保険とセットで手続き・納付が必要であることを案内しましょう。 参考:国民年金保険料|日本年金機構 将来受け取る年金額や給付内容が変わる 扶養を外れて厚生年金保険に加入した場合、将来の年金は基礎年金に加えて報酬比例の厚生年金が上乗せされるため、受け取る年金額が増えます。 また、健康保険の被保険者本人となることで、病気やケガで働けない場合の傷病手当金や、出産のため仕事を休んだ場合の出産手当金など、被扶養者では対象とならなかった給付を受けられるようになります。障害・死亡時の保障も、障害厚生年金・遺族厚生年金の対象となり厚くなります。 一方、国民健康保険・国民年金(第1号被保険者)に加入する場合は、将来の年金は基礎年金が中心となり、傷病手当金や出産手当金に相当する給付は原則ありません。 同じ「扶養を外れる」場合でも、どの制度に加入するかで保障内容が異なるため、従業員から相談を受けた際は、保険料負担だけでなく給付面の違いも含めて情報提供できるようにしておきましょう。 家族の税負担額が変わる場合がある 扶養を外れる原因となった収入の増加は、税負担にも影響する場合があります。家族の収入が一定額を超えると、従業員本人が受けていた配偶者控除・配偶者特別控除や扶養控除の適用額が減少・消失し、従業員本人の所得税・住民税の負担が増えることがあります。 令和8年分の所得税では、扶養控除・配偶者控除の対象となる家族の収入ラインは、給与収入136万円以下(合計所得金額62万円以下)に引き上げられています。 なお、19歳以上23歳未満の子どもについては、令和7年分の所得税から特定親族特別控除が創設されており、令和8年分では、子どもの給与収入が136万円を超えても197万円以下までは段階的に控除を受けられます。 また、会社が家族手当(扶養手当)を支給している場合、支給基準を税法上または健康保険上の扶養と連動させているときは、扶養を外れることで手当の支給を停止する作業も必要です。 社会保険・税・社内手当のそれぞれで基準が異なることを従業員に説明できるよう、自社の賃金規程の支給基準もあわせて確認しておきましょう。 扶養を外れる手続きが遅れた場合のリスク 扶養を外れる手続きは、事実発生から5日以内の届出が原則です。従業員からの申し出が遅れたり、会社が届出を放置したりした場合のリスクは、会社よりも従業員側に大きく生じます。ここでは、双方への影響を整理します。 従業員にとってのリスク 扶養から外れる日(資格喪失日)は、届出をした日ではなく、就職日や収入が基準額以上になった日など、事実が発生した日に遡って認定されます。そのため、手続きが遅れても「届出までの間は扶養のまま」とはならず、資格喪失日に遡って資格を失います。 この間に扶養の資格確認書等を使って医療機関を受診していた場合、健康保険が負担した医療費(かかった医療費の7割等)を後から返還するよう求められます。返還後に国民健康保険等へ療養費の請求をやり直す手間も生じるため、金銭面・事務面の両方で本人の負担が大きくなります。 また、資格喪失日以降は本来加入すべき保険の資格取得手続きも遅れることになり、国民健康保険の保険料は資格喪失日まで遡って賦課されます。国民年金の種別変更が遅れれば、保険料の未納期間が生じ、将来の年金額や万一の際の障害年金・遺族年金の受給に影響するおそれもあります。 会社にとってのリスク 被扶養者(異動)届の提出義務を果たしていないことによる保険者からの照会対応や、遡及処理・訂正手続きなどの事務負担が発生します。 毎年の被扶養者資格再確認で削除漏れが発覚すれば、上記の医療費返還などのトラブル対応に巻き込まれ、従業員との信頼関係にも影響しかねません。 こうしたリスクを避けるには、扶養を外れる場面と申し出のルールを日頃から従業員に周知し、申し出があったら速やかに届出を行う体制を整えておくことが何より重要です。 まとめ 近時は、意識の変化により、プライベートの領域に関する情報を会社に伝えることに抵抗感を持つ従業員も増えていますが、報告が遅れると、さまざまな事務作業が発生します。 とくに社会保険の扶養を外れる手続きは、事実の発生から5日以内に届け出をする必要があるため、速やかに申し出てもらう必要があります。 どのような場面で申し出が必要かを従業員に周知しておくことが、滞りなく手続きを進める最大のポイントとなります。 扶養や社会保険の適用をめぐる制度は近年大きく変わりつつあります。人事担当者は最新の制度を正確に把握し、従業員への周知と迅速な手続きを両輪で進めることで、トラブルを未然に防ぎましょう。 ぜひ本記事を、自社の扶養手続きフローの点検にお役立てください。 プロフィール 長澤 千晴(特定社会保険労務士/産業カウンセラー/ライター) 長澤アンカー社会保険労務士事務所 代表HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 大学卒業後、大手旅行会社に入社し、団体旅行営業・添乗業務を担当。その後、出版業界に転身し、月刊誌・隔週刊誌・週刊誌及び書籍・ムックの編集に従事。 その後、管理部門への異動を機に社会保険労務士試験の勉強を開始。2011年、合格。2014年、特定付記。総務・人事の責任者として労務管理、採用、研修、法改正対応、就業規則改正、人事制度・賃金制度変更などを手掛ける。令和8年、社会保険労務士として独立 https://jinjiwriter.com/author/Chiharu

従業員から「家族を扶養に入れたい」「年収がいくらまでなら扶養内で働けるのか」といった相談を受ける機会は少なくありません。ただ、ひと口に「扶養」といっても、社会保険の扶養と税金の扶養は別制度で、条件も手続きも異なります。 さらに近時はいわゆる「年収の壁」に関わる法改正が相次ぎ、古い知識では誤った案内をするおそれもあります。 この記事では、社会保険の扶養の条件を中心に、扶養控除との違いや年収の壁、手続きまでを人事担当者向けに解説します。 社会保険の扶養とは 社会保険の扶養とは、健康保険に加入している従業員(被保険者)に生計を維持されている家族が、「被扶養者」として健康保険の給付を受けられる仕組みです。被扶養者は自身で保険料を負担することなく、健康保険の給付を受けられます(一部を除く)。 また、厚生年金保険に加入している従業員(国民年金の第2号被保険者)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者は、「国民年金第3号被保険者」となり、こちらも自身で国民年金保険料を納める必要がなく、その期間は保険料納付済期間として将来の年金額に反映されます。 このように扶養は、家族が自身で保険料を負担することなく、医療(健康保険)と年金(国民年金)の保障を受けられる制度です。 扶養控除・配偶者控除との違い 「扶養」は税制でも使われる言葉ですが、扶養控除・配偶者控除は所得税・住民税の制度であり、社会保険の扶養とは別物です。 税の扶養は納税者本人の所得から一定額を差し引く仕組みで、一方、社会保険の扶養は家族が保険料の負担なく健康保険や国民年金の適用を受けられるかを判断する仕組みで、目的も判定方法も異なります。 実務上とくに重要な違いは次の3点です。 項目 税(扶養控除・配偶者控除) 社会保険(健康保険の被扶養者) 判定期間 その年1~12月の実際の合計所得金額(合計所得金額62万円以下=給与収入136万円以下。令和8年分以降) 認定時点から将来に向かって見込まれる年間収入 判定時点 12月31日の現況で1年ごとに判定 認定後、状況が変わるまで継続 収入の範囲 非課税の通勤手当、失業給付、遺族年金・障害年金は含めない 非課税の通勤手当、失業給付、遺族年金・障害年金も含める 例えば年の途中で退職した配偶者は、その年の税の扶養には入れなくても、退職後すぐに社会保険の被扶養者になれる場合があります。判定時点が異なるためです。 なお、給与計算システムを導入している場合、表示される「扶養人数」は、原則として所得税を計算するための「税制上の扶養人数」です。原則16歳未満の子は含まれず、障害者・ひとり親・寡婦・勤労学生に該当すると加算されます。 実際の家族の人数とも社会保険の被扶養者数とも一致しないため、従業員からの問い合わせが多い点です。 従業員の質問には、どの扶養の話かを切り分けて回答しましょう。 参考:No.1180 扶養控除|国税庁 参考:No.1191 配偶者控除|国税庁 社会保険の扶養対象となる条件 社会保険の扶養のうち、条件を細かく判断する必要があるのは健康保険の被扶養者です。 認定されるには、「家族の範囲」「国内居住・生計維持」「年間収入」の各条件をすべて満たす必要があります。 一方、国民年金第3号被保険者は、健康保険の被扶養者に認定された配偶者のうち20歳以上60歳未満の方が対象です。届出も被扶養者(異動)届と一体の様式で行うため、健康保険の被扶養者として認定されれば、配偶者は連動して第3号被保険者となります。 したがって、本記事の「扶養対象となる家族の範囲」で解説している条件がそのまま両制度の判断の土台になります。 なお、「扶養対象となる家族の範囲」の章の内容は協会けんぽ・日本年金機構の基準をもとにした解説です。 健康保険組合では独自の細則を設けている場合があるため、組合加入の会社は自社の規約もあわせて確認してください。 扶養対象となる家族の範囲 被扶養者になれるのは、原則として被保険者の三親等内の親族です。 ただし、同居(同一世帯)が必要かどうかで、次の2つのグループに分かれます。 【同居していなくてもよい家族】 配偶者(内縁関係を含む)、子・孫、兄弟姉妹、父母・祖父母などの直系尊属 【同居が必要な家族】 上記以外の三親等内の親族(義父母、おじ・おば、甥・姪など)、内縁の配偶者の父母および連れ子 例えば別居している自分の父母は扶養に入れられますが、配偶者の父母(義父母)を扶養に入れるには同居が必要です。なお、75歳以上の方は後期高齢者医療制度に加入するため、年齢到達以降は被扶養者になれません。 国内居住・生計維持などの条件 2020年4月からは、原則として日本国内に住所(住民票)があることが被扶養者の要件となっています。外国籍かどうかは問いませんが、海外に居住している家族は、留学中の子や海外赴任に同行する家族など、一定の例外に該当しない限り認定されません。 また、「主として被保険者の収入により生計を維持されていること」が必要です。同居の場合は対象家族の年間収入が被保険者の年間収入の半分未満であること、別居の場合は対象家族の年間収入が被保険者からの仕送り額より少ないことが、生計維持の目安とされています。 共働きで夫婦双方に収入がある場合の子どもについては、原則として年間収入の多い方の扶養に入れる取り扱いです。 年間収入の条件 被扶養者の年間収入は、原則130万円未満であることが必要です。ただし、60歳以上の方と障害厚生年金を受けられる程度の障害者は180万円未満、19歳以上23歳未満の方(被保険者の配偶者を除く)は150万円未満に緩和されています。 19歳以上23歳未満の150万円基準は、2025年度税制改正(特定親族特別控除の創設)に対応して2025年10月1日から導入されたもので、年齢は扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定し、学生であるかどうかは問いません。 ここでいう年間収入は、過去1年間の実績ではなく、認定時点から将来に向かって見込まれる収入額です。給与(通勤手当・賞与を含む)のほか、公的年金、雇用保険の失業給付、傷病手当金・出産手当金、不動産収入なども含めて判定します。 非課税の収入も含める点が税制との大きな違いです。 扶養に関係する年収の壁 扶養内で働くパート・アルバイトの従業員からもっとも質問が多いのが、いわゆる「年収の壁」です。 社会保険の壁には「106万円の壁」と「130万円の壁」があり、これとは別に税法上の壁(136万円・178万円など)が存在します。 2025年から2026年にかけて、いずれも大きな制度変更があったため、最新の内容を整理しておきましょう(記事執筆時点、2026年8月の情報に基づいて解説しています)。 106万円の壁(2026年10月撤廃) 106万円の壁とは、短時間労働者が勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する基準です。従業員数51人以上の企業で、週の所定労働時間20時間以上、月額賃金8.8万円以上(年収換算で約106万円)などの要件をすべて満たすと勤務先で社会保険に加入し、家族の扶養からは外れます。 このうち月額賃金8.8万円の要件は、2025年6月成立の年金制度改正法(令和7年法律第33号)により2026年10月に撤廃されます。撤廃後は年収にかかわらず、週20時間以上などの要件を満たせば加入対象となり、企業規模要件も2027年10月以降、段階的に撤廃される予定です。 8.8万円の判定に通勤手当や割増賃金、賞与は含めません。130万円の壁とは収入の数え方が異なるため、注意が必要です。加入要件の詳細は、以下の記事をご覧ください。 関連記事:社会保険の加入条件とは?2026年法改正ポイントを解説|レコルブログ 130万円の壁 130万円の壁とは、前述した被扶養者認定の年間収入基準です。勤務先の加入要件にかかわらず、年間収入が130万円以上(60歳以上・障害者は180万円以上、19歳以上23歳未満は150万円以上)になる見込みとなった場合は扶養から外れ、自身で国民健康保険・国民年金に加入するか、勤務先の社会保険に加入します。この基準は、106万円の壁が撤廃される2026年10月以降も残ります。 計算では通勤手当を非課税分も含めて全額算入し、時間外手当や賞与も含めた総収入で判定します。税の計算方法と混同しないよう注意してください。 一方、2026年4月1日以降は、給与収入のみのパート等について、労働契約に記載された賃金から見込まれる年間収入で判定する運用に変わりました。繁忙期の残業などで一時的に超えても、直ちに扶養を外れることにはなりません。 なお、130万円未満でも、勤務先の社会保険の加入要件(週20時間以上等、または通常の労働者の4分の3以上)を満たせば被扶養者にはなれません。 扶養控除・配偶者控除に関係する年収の壁 税法上の年収の壁は、社会保険とは別の制度です。令和8年度税制改正で基礎控除・給与所得控除が引き上げられたことにより、令和8年分から金額の水準が大きく変わりました。 ●136万円: 扶養控除・配偶者控除の対象となる親族・配偶者の給与収入の上限(合計所得金額62万円以下)。令和7年分の123万円から引き上げられました。 ●159万円/197万円: 19歳以上23歳未満の子などに適用される「特定親族特別控除」の基準。子の給与収入159万円までは親が満額63万円の控除を受けられ、197万円まで段階的に縮小します。 ●178万円: 本人に所得税が課され始める給与収入の目安。配偶者特別控除を満額(38万円)受けられる配偶者の給与収入の上限は169万円です。 ※これらの金額には令和8・9年分の時限措置(給与所得控除の上乗せなど)が含まれており、令和10年分以後は見直される予定です。 税と社会保険の壁は別々に判定されるため、「130万円を超えて社会保険の扶養を外れたが、税の配偶者特別控除は受けられる」といったケースも生じます。 従業員から「〇〇万円を超えるとどうなるのか」と質問されたときは、税と社会保険のどちらの壁の話なのかを確認したうえで回答しましょう。 参考:「年収の壁」への対応|厚生労働省 参考:源泉所得税の改正のあらまし 令和8年4月|国税庁 社会保険の扶養に入るときの手続き 従業員の被扶養者を追加するときは、事実発生から5日以内に届け出ることが原則とされています。人事担当者は、次の3つのステップで速やかに手続きを進めましょう。 【1】従業員から申請を受ける 扶養の追加が必要となるのは、従業員の結婚、子どもの出生、配偶者や家族の退職・収入減少などの場面です。 従業員から申し出を受けたら、まず「いつ・どのような事実が発生したのか」を確認します。婚姻日や出生日、退職日が被扶養者の認定日に関わるためです。 届出が遅れると、認定日の取り扱いや資格確認書の交付に影響が出て、その間の医療費が一時的に全額自己負担になるなど従業員に不利益が生じかねません。 あわせて、必要書類は扶養に入れる家族との続柄や収入状況、会社が加入している健康保険(協会けんぽか健康保険組合か)によって異なることを従業員に伝え、早めの準備を促しましょう。 【2】必要書類を確認する 添付書類は、大きく「続柄」「収入」「生計維持(別居の場合)」の3つの観点で確認します。 ●続柄の確認書類 戸籍謄本(抄本)または住民票です。ただし、届書に被保険者と扶養対象者双方のマイナンバーを記載し、事業主が続柄を確認した旨を届書に記載すれば、添付を省略できます。 ●収入の確認書類 市区町村発行の課税(非課税)証明書などです。扶養対象者が所得税法上の控除対象配偶者・扶養親族であることを事業主が確認し、届書にその旨を記載した場合は省略できます。 ただし、障害年金・遺族年金や失業給付など非課税の収入がある場合は、受取金額のわかる通知書等の写しが必要です。 ●生計維持(別居の場合)の確認事項 別居の家族を扶養に入れる場合は、仕送りの事実と金額が確認できる書類(振込明細や現金書留の控えなど)を求められます。健康保険組合では、これらに加えて独自の「被扶養者状況届」などの提出が必要な場合があります。 【3】被扶養者(異動)届を提出する 書類が揃ったら、会社が「健康保険 被扶養者(異動)届」を作成して提出します。協会けんぽに加入している会社は、事実発生から5日以内に日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)へ提出します。電子申請(e-Gov)や電子媒体による提出も可能です。 配偶者を扶養に入れる場合、この届は「国民年金第3号被保険者関係届」を兼ねた様式となっているため、1枚で両方の手続きが完了します。 健康保険組合に加入している会社は、組合へ届出を行います。組合によって認定基準の細部や添付書類、提出期限が異なる場合があるため、事前に組合の規約や手引きを確認してください。 なお、配偶者の第3号被保険者関係届については、組合経由で日本年金機構へ届け出る流れとなります。認定されると資格確認書等が交付されるので、速やかに従業員へ渡しましょう。 参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構 社会保険の扶養から外れるケース 被扶養者が扶養から外れる主なケースには、以下のようなものがあります。 就職して勤務先の社会保険に加入した場合 年間収入が基準額(130万円・150万円・180万円)以上になる見込みとなった場合 雇用保険の基本手当(日額3,612円以上・60歳以上および障害者は5,000円以上)を受給し始めた場合 離婚した場合 75歳に到達して後期高齢者医療制度に加入する場合 扶養から外れるときも、被扶養者(異動)届による削除の手続きが必要です。手続きが遅れると、資格喪失後に受診した医療費の返還を求められるなど、従業員とのトラブルにつながりかねません。 扶養を外れる際の判断基準や手続きの流れは、以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事:社会保険の扶養を外れる手続きとは?|レコルブログ まとめ 社会保険の扶養は、健康保険の被扶養者と国民年金第3号被保険者で構成される制度で、税制上の扶養控除・配偶者控除とは判定基準も手続きも異なります。収入を「将来に向けた見込み額」で判定すること、通勤手当や失業給付など非課税の収入も含めること、家族の範囲や同居・国内居住の要件があることがポイントです。 また、2025年10月の19歳以上23歳未満の収入基準の緩和、2026年4月の労働契約ベースでの収入判定、2026年10月の106万円の壁の撤廃と、年収の壁をめぐる制度は大きく動いています。税制側でも令和8年分から136万円・178万円など新しい壁が生まれ、従業員が制度を混同するリスクは高まっています。 「税と社会保険の扶養は別物であること」「どの収入を含め、いつ時点で判定するのか」を正確に説明できるよう、本記事を日々の実務にお役立てください。 プロフィール 長澤 千晴(特定社会保険労務士/産業カウンセラー/ライター) 長澤アンカー社会保険労務士事務所 代表HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 大学卒業後、大手旅行会社に入社し、団体旅行営業・添乗業務を担当。その後、出版業界に転身し、月刊誌・隔週刊誌・週刊誌及び書籍・ムックの編集に従事。 その後、管理部門への異動を機に社会保険労務士試験の勉強を開始。2011年、合格。2014年、特定付記。総務・人事の責任者として労務管理、採用、研修、法改正対応、就業規則改正、人事制度・賃金制度変更などを手掛ける。令和8年、社会保険労務士として独立 https://jinjiwriter.com/author/Chiharu

従業員の給与を決めるうえで、「どのような基準で金額を設定するか」は重要なポイントです。 基準があいまいなままでは、昇給や昇格のたびに個別の検討が必要で、従業員から金額の理由を尋ねられたときにも、納得感のある説明が難しくなります。 そこで役立つのが、等級や役職などに応じた給与額を整理した「給与テーブル」です。 この記事では、給与テーブルの構成や種類・メリット・注意点から、具体的な作り方までを人事担当者向けに解説します。よくある課題と解決策も紹介しますので、これから整備を検討している企業はぜひ参考にしてください。 給与テーブルとは 給与テーブルとは、等級・役職・号俸といった区分に応じて、基本給などの金額や給与水準を整理した表です。賃金テーブル、賃金表と呼ばれることもあり、いずれもほぼ同じ意味で使われています。 なお、「テーブル」は、行と列で情報を整理した表を意味します。給与テーブルも、人事制度に応じてさまざまな形式がありますが、等級・号俸制では、縦軸に等級、横軸に号俸を配置し、その組み合わせから給与額を確認する形式が一般的です。以下は、その一例です。 等級\号俸 1号 2号 3号 4号 5号 1等級 200,000円 205,000円 210,000円 215,000円 220,000円 2等級 230,000円 236,000円 242,000円 248,000円 254,000円 3等級 270,000円 280,000円 290,000円 300,000円 310,000円 混同されやすい言葉に、給与レンジがあります。 給与レンジとは、等級ごとに定めた給与の下限額から上限額までの幅を指す言葉です。 一方、給与テーブルは、そのレンジや金額を等級・号俸ごとに一覧化した表そのものを意味します。 給与レンジは給与テーブルを構成する要素のひとつ、と捉えるとわかりやすいでしょう。 給与テーブルの構成 給与テーブルに含める項目は、法律で決まっているわけではありません。 自社の人事制度に合わせて任意に設計できます。しかしながらゼロから考えるのは負担が大きいため、まずは一般的な構成項目を押さえておきましょう。 等級・グレード:職務や能力、役割のレベルに応じた区分 号俸:同一等級内の細かい段階(1号あたりの昇給額は「ピッチ」と呼ぶ) 基本給:等級・号俸に対応する基準額 役職手当:部長や課長、主任など、職位に対して支給する額 給与レンジ:等級ごとの下限額と上限額の幅 給与レンジを設計するときは、上位等級との接続方法もあわせて決めます。 代表的なのは、下位等級の上限額と上位等級の下限額が一致する「接続型」です。 ほかに、上位等級の下限額のほうが高い「開差型」や、両者が一部重なる「重複型」もあります。 年功序列制度の企業が多い時代には「重複型」が一般的でしたが、成果主義が広まってからは「開差型」を選択するケースも増えています。昇格時にどの程度の昇給を実感してもらいたいかによって、選ぶ形は変わるでしょう。 給与テーブルの種類 給与テーブルにはいくつかの形式があり、どの形式を採用するかによって、給与額や昇給の決め方が異なります。 代表的なものとして、次の4つがあります。 【号俸表型(単純・段階)】 等級と号俸の組み合わせごとに給与額を定める形式です。単純号俸表型では、「毎年1号ずつ」のように一定の号数を昇給させます。一方、段階号俸表型では、「評価Aなら4号、評価Bなら2号」のように、評価結果に応じて昇給する号数を変えます。給与額と昇給の道筋を明確にしやすい点が特徴です。 【昇給表型】 等級や号俸ごとの給与額ではなく、評価結果に応じた「昇給額」を定める形式です。例えば、評価Aなら10,000円、評価Bなら5,000円というように、現在の基本給へ金額を加算します。現在の給与水準をベースに昇給額を決めたい場合に活用できます。 【複数賃率表型】 同じ号俸に複数の給与額を設け、評価結果などに応じて適用する金額を決める形式です。毎年の評価をその年の給与に反映する「洗い替え」の考え方を取り入れることで、過去の評価結果をそのまま積み上げず、直近の評価を処遇に反映しやすくなります。 【ゾーン型賃金表】 同じ等級のなかを給与水準によって複数のゾーンに分け、評価と現在の給与水準の組み合わせによって昇給額を決める形式です。例えば、同じ高評価でも給与レンジの下限に近い従業員は昇給額を大きくし、上限に近い従業員は昇給額を小さくするといった設計ができます。等級ごとの給与レンジを意識しながら昇給を管理できる点が特徴です。 そのほかにも、実際の設計では、職種ごとに異なる給与テーブルを用意したり、等級によって昇給する号数を変えたりすることもあります。どの形式が適しているかは、自社の等級制度や評価制度、給与をどのように決定したいかによって異なります。 給与テーブルを作るメリット 給与テーブルを作る意味は、単に給与額を一覧にして見やすくすることだけではありません。 給与を決定する際の基準を明確にし、一定のルールに沿って処遇を決められるようにする点にあります。 ここでは、給与テーブルを整備する主なメリットを3つ紹介します。 昇給・昇格時の給与決定に納得感を持たせやすい まず挙げられるメリットは、給与決定の根拠を明確にしやすいことです。基準が明確でなければ、昇給額や昇格後の給与が上司や担当者の裁量に左右されやすくなります。同じような評価や役割であるにもかかわらず、部署や上司によって処遇に差が生じれば、従業員の不信感につながりかねません。 給与テーブルがあれば、例えば「3等級・5号俸に該当するため、この金額になる」といった形で、給与額の根拠を説明できます。判断のばらつきを抑え、処遇の公平性を高めやすくなる点は大きなメリットです。給与がどのような基準で決まっているのかを従業員に説明しやすくなることで、処遇に対する納得感の向上にもつながるでしょう。 中途採用者の給与額を決めやすくなる 中途採用では、応募者の経験や能力をどのように給与額へ反映するかが悩みどころです。採用時の相場感や個別交渉だけで給与を決めると、既存の従業員との給与バランスが崩れることもあります。 給与テーブルがあれば、応募者の経験や能力、任せる役割などを自社の等級に当てはめ、給与額を検討する際の基準にできます。既存の従業員とのバランスを確認しながら、提示する給与額を決めやすくなるでしょう。 また、自社の給与水準を採用市場の相場と比較する際にも、等級ごとの水準が明確になるため、検証しやすくなります。 将来の人件費を予測しやすくなる 給与テーブルは、人件費計画を立てる際の土台にもなります。現在の従業員を等級や号俸などに当てはめることで、今後の昇給や昇格を想定した人件費のシミュレーションがしやすくなるためです。 例えば、段階号俸表型を採用している企業で「毎年平均2号ずつ昇給し、3年後に5名が昇格する」といった前提を置けば、将来の給与総額がどの程度増えるのかを試算できます。採用計画や賞与原資などを検討する際にも活用できるでしょう。 人件費は継続的に発生し、一度引き上げると簡単には下げられない費用です。給与テーブルをもとに将来の負担をあらかじめシミュレーションしておくことは、適切な人員・人件費計画を立てるうえでも重要です。 給与テーブルを作るときの注意点 給与テーブルは、一度作成すればそのまま運用できるものではありません。人事制度との整合性を確保するだけでなく、従業員への公開範囲や周知方法、日々の管理方法まで考えて設計する必要があります。ここでは、給与テーブルを作成・運用する際に押さえておきたい4つの注意点を解説します。 自社の人事制度・評価制度に合わせて設計する インターネット上には、給与テーブルのテンプレートが数多く公開されています。構成を参考にすることは有効ですが、そのまま自社に当てはめるのは避けたほうが良いでしょう。 給与テーブルは、等級制度や評価制度などと連動して運用するものです。例えば、どのような基準で等級を決めるのか、評価結果を昇給にどのように反映するのかが定まっていなければ、給与テーブルだけを作っても適切に運用できません。 まずは自社の等級や役割、評価区分、昇給ルールなどを整理し、それに合わせて給与水準や金額を設定していきましょう。 公開・非公開の運用ルールを決める 給与テーブルをどこまで従業員に公開するかは、制度設計の際に検討しておきたいポイントです。 労働基準法では、労働契約を締結する際に、賃金の決定・計算・支払方法や賃金の締切日・支払日、昇給に関する事項などの条件を明示することが求められています。また、常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則にも賃金の定めを記載し、従業員に周知しなければなりません。 もっとも、給与テーブルそのものを開示しなければならないという法令上の規定はありません。明示や周知が求められているのは、賃金がどう決まるかというルールの部分だからです。ただし、給与テーブルを賃金規程の別表とするなど、就業規則の一部として位置づけている場合には、周知の必要があるため注意してください。 なお、給与テーブルを公開するかどうかは、次の点を踏まえて判断しましょう。 公開する利点:従業員が昇給後の給与水準や、キャリアに応じた処遇をイメージしやすくなる 公開による懸念:他の従業員の給与を推測されやすくなる、上限が見えることで頭打ち感を持たれる 自社の人事制度や組織風土を踏まえ、公開・非公開の範囲を検討することが推奨されます。 制度改定を前提に見直しやすい設計にする 給与テーブルは、一度作れば終わりというものではありません。最低賃金は原則として毎年改定されるため、下位等級の給与額が最低賃金を下回っていないか、定期的に確認する必要があります。 また、人事制度の変更や賃上げなどに伴い、等級区分や給与水準そのものを見直すこともあります。等級数や号俸数を細かく設定しすぎると、制度改定のたびに修正する範囲が広がり、管理の負担が大きくなります。 将来の見直しも想定し、自社で無理なく管理・運用できる粒度で設計することが大切です。 Excelでの管理は更新漏れ・入力ミスに注意する 給与テーブルをExcelやGoogleスプレッドシートで管理している企業も少なくありません。手軽に始められる一方で、運用中に更新漏れや入力ミスが起こる可能性があります。 例えば、昇給や昇格後の金額を反映し忘れたり、行や列を追加した際に数式が崩れたりするケースです。また、ファイルの構造や更新方法を特定の担当者しか把握していないと、異動や退職の際に引き継ぎが難しくなることもあります。 給与額の誤りは、従業員への不足額の精算などの対応が必要になるだけでなく、給与制度そのものへの信頼にも影響します。給与テーブルを作成する段階から、表計算ソフトで管理し続けるのか、システムを活用するのかも含めて、管理方法を検討しておきましょう。 給与テーブルの作り方 給与テーブルの作り方は、採用している等級制度や評価制度、給与体系などによって異なりますが、基本的な流れは共通しています。ここでは、給与テーブルを作る基本的な手順を4つのステップに分けて解説します。 【1】等級や役職など、給与を分ける基準を決める 最初に、どのような基準で従業員の給与に差を設けるのかを決めましょう。職務内容や職務遂行能力、役割・責任の大きさなど、区分の軸は企業によって異なります。 例えば、「担当者」「リーダー」「管理職」といった役割をもとに大きく区分し、必要に応じて等級を細分化する方法があります。組織規模や役職構成に対して等級を細かくしすぎると運用が複雑になるため、自社の実態に合った区分にすることが大切です。 また、「どのような役割を担えば次の等級に上がるのか」が判断できるよう、各等級に求める役割や能力などを言語化しておくと、評価制度とも連動させやすくなります。 【2】基本給・役職手当など、給与テーブルに含める項目を決める 次に、給与テーブルで管理する給与項目を決めましょう。基本給のみを対象とするのか、役職手当や職務手当なども含めるのかによって、給与テーブルの形は変わります。 このとき、家族手当や通勤手当など、本人の状況や実費などに応じて支給額が決まる手当は、給与テーブルとは分けて考えると整理しやすくなります。どの給与項目を等級や役割と連動させるのかを明確にしたうえで、給与テーブルに含める範囲を決めましょう。 【3】等級ごとの給与レンジと昇給ルールを決める 続いて、等級ごとの給与水準を設定します。採用市場における給与相場や自社の支払能力、現在の従業員の給与分布などを確認しながら、各等級の下限額・上限額などを決めていきましょう。 号俸制を採用する場合は、号俸ごとの金額や昇給幅も設定します。例えば段階号俸表型であれば、「評価Aは4号昇給、評価Bは2号昇給」のように、評価結果と昇給号数を対応させる方法があります。 あわせて、昇格した際にどの金額へ移行するのかなど、等級をまたぐ場合のルールも決めておくことが重要です。給与テーブルだけでなく、「どのような場合に、どのように給与が変わるのか」までセットで設計しておきましょう。 【4】人件費を試算し、運用ルールを整える 給与テーブルの案ができたら、現在の従業員を実際に当てはめ、人件費への影響を試算します。制度導入後の給与総額だけでなく、数年後の昇給・昇格を想定した場合に、人件費がどの程度増加するかも確認しておくと良いでしょう。 新しい給与テーブルを適用すると、現在の給与が新制度上の水準を上回ったり、下回ったりする従業員が生じることがあります。既存の給与を引き下げる場合は労働条件の不利益変更となるため、新しい給与テーブルに合わせて一方的に減額することはできません。 個別の同意を得る方法のほか、就業規則による改定の場合は、変更内容の合理性や代償措置を設け、従業員へ周知するなどの対応が必要です。激変緩和措置として調整給を設けるなど、移行方法を慎重に検討しましょう。 最後に、昇給・昇格の時期や決定権者、給与テーブルを改定する際の承認フロー、データの管理方法などを定めます。給与テーブルは、金額表を作るだけでなく、実際に運用できるルールまで整えて、初めて機能する仕組みになります。 給与テーブル運用のよくある課題と解決策 給与テーブルの運用では、昇給・昇格の反映や給与計算との連携、制度変更に伴う見直しなど、さまざまな課題が生じます。ここでは、給与テーブルの運用で起こりやすい3つの課題と、その解決策を解説します。 昇給・昇格時の更新漏れが発生する 給与テーブルの運用で注意したいのが、昇給や昇格の決定後に、給与テーブルや給与計算システムへの反映が漏れてしまうケースです。更新漏れに気づかないまま給与計算を行えば、誤った金額を支給することにもなりかねません。 こうしたミスを防ぐには、次のような運用ルールをあらかじめ決めておくことが有効です。 更新する時期と担当者、承認者を明確にする ファイルの保存場所を一本化し、最新版を分かるようにする 昇給・昇格の決定から給与計算への反映までをチェックリストで管理する また、Excelで管理する場合は、セルやシートの保護機能を利用して数式の誤変更を防ぐほか、更新手順を文書化するなど、特定の担当者に運用が属人化しないようにすることも大切です。「誰が・いつ・どのデータを更新し、誰が確認するのか」まで決めておくことで、昇給・昇格時の反映漏れを防ぎやすくなります。 給与計算システムと連携性がなく二重管理になる 給与テーブルはExcel、給与計算は給与計算システム、従業員の等級や役職は人事システムというように、情報を複数の場所で管理している企業もあります。 このような状態では、昇給や昇格のたびに複数のデータを更新しなければなりません。手入力や転記の回数が増えるほど、更新漏れや入力ミスが発生する可能性も高まります。 対策としては、給与テーブルと給与計算システムを連携させるなど、同じ情報を何度も入力しなくても良い仕組みを整えることが有効です。例えば、従業員の等級や号俸を変更すると、それに応じた基本給が給与計算に反映される仕組みであれば、転記作業を減らせます。 システムを選ぶ際には、給与テーブルを登録できるかだけでなく、等級・役職の変更から給与計算までをどの程度連携できるかも確認しておくと良いでしょう。 給与テーブルの維持・更新に工数がかかる 給与テーブルは、昇給や昇格だけでなく、最低賃金の改定や賃上げ、人事制度の変更などに応じて見直す必要があります。従業員数や等級・号俸の数が増えるほど、Excelなどでの手作業による管理には負担が大きくなります。 前述したような更新漏れや二重管理を減らしたい場合は、給与テーブルを管理できるシステムを活用することも選択肢のひとつです。 勤怠管理システムの「レコル」は、給与計算オプションで給与テーブル機能に対応しています。基本給や役職手当などの支給金額を給与テーブルとして登録し、給与計算に利用できます。給与テーブルと給与計算を同じシステム上で管理できるため、Excelから給与計算システムへ金額を転記する手間もかかりません。 「レコル」は、勤怠管理が月額1人100円、給与計算オプションを含めても月額1人300円で利用できます。勤怠と給与を1つのシステムで扱えるため、勤怠データの転記作業も不要です。表計算ソフトで給与テーブルを管理することに課題を感じている方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。 レコルの給与計算オプションについてもっと知る まとめ 給与テーブルは、給与を決定する基準を明確にするための仕組みです。整備することで、昇給・昇格時の給与決定の根拠を説明しやすくなるほか、中途採用者の給与設定や将来の人件費の試算にも活用できます。 作成する際は、他社のテンプレートをそのまま当てはめるのではなく、自社の等級制度や評価制度、給与体系に合わせて設計することが大切です。また、従業員への公開範囲や周知方法、制度改定時の見直し方などもあわせて検討しておきましょう。 さらに重要なのが、作成後の運用です。昇給・昇格時の更新漏れや、Excelと給与計算システムの二重管理は、給与計算のミスにつながる可能性があります。誰がどのタイミングで更新するのかを明確にするとともに、必要に応じてシステムも活用しながら、無理なく継続できる管理方法を整えておきましょう。 プロフィール 内山 美央(特定社会保険労務士) 社会保険労務士法人MIO Partners 代表社員 HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 新卒3年目で社会保険労務士資格を取得。ITベンチャーでの勤怠管理システムの営業・導入コンサルティング経験を経て、大手事業会社の人事部にて労務管理や人事業務のDX推進に携わる。独立後は「労働時間管理のプロフェッショナル」として、HRテックの知見を強みに、人事システムの選定・導入支援から制度設計まで、働き方の改善を入り口に、会社に寄り添った長期視点での人事労務サポートを提供している。 https://mio-partners.jp/

出勤していない同僚の代わりに打刻する、いわゆる「代理打刻」。 本人が打刻したかどうかを確認できない方法では、こうしたなりすましを完全に防ぐのは難しいものです。 勤怠データの正確性にご不安がある企業様も多いのではないでしょうか。 今回は、顔認証による勤怠打刻で「なりすまし」や「代理打刻」を防止する方法をご紹介します。 レコルの打刻方法には顔認証で出退勤を打刻する専用のタイムレコーダー(PiT-23)がございます。 PiT-23は正面画像で99%以上の認証率を誇る高精度・高セキュリティな本人認証を実現し、なりすましによる不正打刻を防止します。 また、ICカードや社員証に依存しない運用が可能です。 PiT-23(顔認証のタイムレコーダー)について PiT-23の特長 顔認証によるスムーズな打刻と、なりすまし防止を実現 正面画像で99%以上の認証率を誇る高精度な本人認証 ICカードや社員証に依存しない運用が可能で、カード管理の手間やコストを軽減 FeliCa/MIFARE対応のICカード打刻や社員ID入力による打刻にも対応し、既存運用との併用が可能 スマホサイズのスリム設計で省スペース設置が可能(厚さ:12mm/重さ:約220g) 卓上・壁掛けクレードルに対応し、設置環境に柔軟に対応(PoE対応) 無線LAN/有線LAN(クレードル利用時)に対応 オフライン打刻にも対応 詳しくは「充実した打刻方法」ページの「顔認証打刻」をご覧ください 打刻のイメージ 顔認証での出退勤は、カメラで顔を撮影するだけで簡単にスムーズな打刻が可能です。 また、マスクを着用したままでも認証可能です。 打刻はリアルタイムに勤怠表に反映 PiT-23からの打刻はほかの打刻方法同様、リアルタイムに勤怠表に反映されますので、従業員やアルバイトの出退勤状況が一目で分かります。 なぜ顔認証は、なりすまし・代理打刻に強いのか 打刻方法によっては、本人が操作したかどうかまでは記録に残らないため、代理打刻を完全に見分けるのは簡単ではありません。 顔認証は、あらかじめ登録した本人の顔情報と照合して打刻します。 「顔」は貸し借りも置き忘れもできないため、本人以外による打刻を物理的に防ぐことができます。 カードの紛失・忘れによる打刻トラブルもなくなり、非接触でスムーズに打刻できる点も特長です。 最後に PiT-23はスマホサイズのスリム設計で省スペースに設置でき、顔認証によるスムーズな打刻となりすまし防止を両立できるため、手軽に運用を始めることができます。 アルバイトの不正打刻(なりすまし)などでお悩みの場合は、ぜひ勤怠管理システム「レコル」で顔認証打刻をご検討ください。 また、今回紹介した顔認証での打刻のご不明点やご質問がある場合は、お気軽にお問い合わせください。 お問い合わせ

賃金台帳は、労働基準法で作成・保存が義務付けられている帳簿で、労働者名簿・出勤簿と並ぶ「法定三帳簿」のひとつです。従業員を1人でも雇用していれば、会社の規模や業種を問わず作成しなければなりません。 この記事では、賃金台帳の基本ルールと法定の記載事項、保存期間を整理したうえで、無料フォーマットの入手先から効率的な作成方法まで、人事担当者が押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。 賃金台帳とは 賃金台帳とは、従業員ごとの賃金の支払状況を記録する帳簿です。労働基準法第108条により、使用者は事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金を支払うたびに、賃金計算の基礎となる事項や賃金の額などを遅滞なく記入しなければならないと定められています。 作成義務を負うのは、労働基準法上の「使用者」、実務的には会社などの事業主です。実務上は給与計算を担当する人事・労務部門が作成するのが一般的ですが、給与計算を社会保険労務士や給与計算代行会社に外部委託している場合でも、作成・保存の義務はあくまで事業主側にあります。 労働基準監督署の調査(臨検監督)では、法定三帳簿と呼ばれる「賃金台帳」「労働者名簿」「出勤簿」の提出を求められることが多く、日頃の整備状況がそのまま会社の労務管理の水準として評価されます。 給与明細や源泉徴収簿との違い 賃金台帳と混同されやすい書類に「給与支払明細書」(以下、給与明細)と「源泉徴収簿」があります。いずれも給与に関する書類ですが、目的も根拠となる法律も異なります。 給与明細は、所得税法などに基づいて従業員に交付する書類で、支給額や控除額を本人に通知することが目的です。交付義務はありますが、会社側に保存義務はありません。 一方、源泉徴収簿は、源泉所得税や年末調整の計算過程を記録するために国税庁が作成を推奨している帳簿で、法律上の作成義務はないものの、実務上は作成するのが一般的です。 3つの書類の違いは以下のとおりです。 書類名 主な目的 根拠となる法律 会社の義務 賃金台帳 賃金の支払状況を労働者ごとに記録する 労働基準法 作成・保存義務あり(違反には罰則あり) 給与明細 支給額・控除額を従業員本人に通知する 所得税法など 交付義務あり(会社側の保存義務はなし) 源泉徴収簿 源泉所得税・年末調整の計算過程を記録する 法令上の定めなし(国税庁が作成を推奨) 法律上の義務なし(実務上は作成が一般的) なお、給与明細に労働日数や労働時間数など法定の記載事項がすべて含まれていれば、給与明細(の控え)を賃金台帳として代用することも可能です。 ただし、一般的な給与明細には労働日数や性別などが記載されていないことも多いため、代用する場合は記載事項に漏れがないかを必ず確認しましょう。 年末調整の際に従業員へ交付する「源泉徴収票」については、以下の記事で詳しく解説しています。 参考:源泉徴収票の書き方を見本付きで解説!初めて作成するときの確認ポイントとは?|レコルブログ 賃金台帳の基本ルール 賃金台帳を作成する際は、「どの単位で」「誰について」作成し、「いつまで」保存するのかという基本ルールを押さえておく必要があります。順に確認していきましょう。 賃金台帳の対象事業場 賃金台帳は、企業単位でも部署単位でもなく、「事業場ごと」に作成します。事業場とは、本社・支店・工場・店舗など、場所的に独立して業務が行われている単位のことです。 例えば本社のほかに支店が2つある会社であれば、3つの事業場それぞれで賃金台帳を調製し、備え付けるのが原則です。 給与計算を本社で一括して行っている場合でも、各事業場で自分の事業場の従業員分の賃金台帳を確認・出力できる状態にしておく必要があります。 労働基準監督署の調査は事業場単位で行われるため、「台帳は本社にしかなく、その場で提示できない」という状態は避けましょう。 賃金台帳の対象者 賃金台帳は、雇用形態を問わず、すべての労働者について作成が必要です。様式は常用労働者用(様式第20号)と日雇労働者用(様式第21号)に分かれており、日々雇い入れられる労働者は常用労働者と分けて管理します。 なお、日雇労働者でも1か月超、継続して使用される場合は、常用労働者扱いとなります。 作成の要否を間違いやすいケースは以下のとおりです。 パート・アルバイト労働時間に関わりなく作成が必要です。 派遣労働者賃金を支払う派遣元の会社が作成します。派遣先での作成は不要です。 役員労働者ではないため、役員報酬のみを受け取っている場合は、法律上は作成義務はありません。ただし、役員報酬とは別に労働者としての賃金(給与)が支払われている使用人兼務役員については、その賃金部分について賃金台帳の作成が必要です。 もっとも、役員報酬も源泉所得税や社会保険料は控除対象となりますので、作成義務のない役員の台帳(役員報酬台帳)も、従業員と一括で管理すべく、同じ形式で作成・保存するのが一般的です。 個人事業主事業主本人の分は不要ですが、1人でも雇用すれば、その従業員の分は作成が必要です。 賃金台帳の保存期限|原則5年・当面3年 賃金台帳の保存期間は、労働基準法第109条により5年間と定められています。ただし、同法第143条の経過措置により「当分の間は3年間」とされており、2026年7月現在もこの経過措置は続いています。 保存期間の起算日は、「最後の記入をした日」です。ただし、最後の記入をした日よりも賃金の支払期日が後である場合は、支払期日が起算日となります。 例えば、3月末締め・4月25日支払いの賃金を4月10日に記入した場合、起算日は記入日の4月10日ではなく、支払期日の4月25日です。 保存期間が5年に延長された背景には、2020年4月の法改正で賃金請求権の消滅時効が5年(当分の間3年)に延長されたことがあります。未払残業代の請求など労務トラブルへの備えという観点からは、5年保存を前提とした運用にしておくと安心です。 なお、賃金台帳は電子データで保存することも認められています。法定の記載事項をすべて満たしたうえで、事業場ごとに、必要なときに直ちに画面へ表示し、印刷できる状態になっていれば紙で備え付ける必要はありません。 賃金台帳にまつわる罰則 賃金台帳を作成していない場合、法定の記載事項に漏れがある場合、虚偽の記載をした場合、保存期間内に廃棄・紛失してしまった場合は、30万円以下の罰金の対象となり得ます。(労働基準法第120条1号) 実務上、より現実的なリスクは労働基準監督署の調査対応です。臨検監督では法定三帳簿がほぼ必ず確認され、記載漏れや出勤簿・タイムカードとの不整合があれば是正勧告や指導の対象になります。 特に時間外・休日・深夜労働の時間数が記載されていないと、割増賃金が正しく計算されているかを監督官が確認できず、未払残業代を疑われる要因にもなります。 賃金台帳の整備は、罰則を避けるためだけでなく、調査の際に適正な労務管理を証明するためにも重要です。 賃金台帳の記載事項 賃金台帳に記載すべき事項は、労働基準法施行規則第54条で定められています。 以下で紹介する項目はすべて法定の必須項目であり、1つでも欠けていると賃金台帳として認められません。項目ごとに、書き方のポイントと記載漏れがあった場合のリスクを解説します。 従業員の氏名・性別 賃金を支払う従業員の氏名と性別を記載します。賃金計算そのものには影響しない項目ですが、法定の記載事項ですので漏れなく記載しましょう。同姓同名の従業員がいる場合に備えて、社員番号や所属を併記しておくと管理しやすくなります。 労働者名簿の記載内容と食い違いがないよう、氏名変更などの際は両方をあわせて更新することも大切です。 賃金計算期間 「4月1日から4月30日まで」のように、支払った賃金がどの期間の労働に対するものかを記載します。支払日や支払月だけを記録するのでは足りず、締め日に基づく計算期間そのものを明示する必要があります。 なお、雇用期間が1か月に満たない日雇労働者については、賃金計算期間の記載は不要です。 労働日数・労働時間 賃金計算期間内の労働日数と総労働時間数を記載します。労働日数は、就業規則上の所定労働日数をそのまま転記するのではなく、その期間に実際に出勤した日数を記入します。 ただし、年次有給休暇を取得した日は、通常の労働時間労働したものとみなして労働日数・労働時間数に含めて記入し、年休分であることがわかるよう括弧書きなどで区別しておきます。 出勤簿やタイムカードの記録と一致している必要があり、両者に食い違いがあると、労働基準監督署の調査で真っ先に指摘されるポイントです。 なお、労働時間規制が適用されない管理監督者については、労働時間数、時間外労働時間数、休日労働時間数の記載は不要です。 ただし、深夜労働の割増賃金は管理監督者にも適用されるため、深夜労働時間数は記載しなければなりません。 時間外労働・休日労働・深夜労働時間数 時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数は、それぞれ区分して記載します。 時間外労働は25%以上(月60時間を超えた部分は50%以上)、法定休日労働は35%以上、深夜労働は25%以上と割増率が異なるため、まとめて「残業〇時間」と記録しているだけでは、割増賃金を正しく計算した根拠を示せません。 割増率の区分ごとに時間数がわかる形で記載しましょう。 基本給・手当など 基本給、役職手当、通勤手当、時間外手当など、賃金の種類ごとにその金額を記載します。手当をまとめて1つの金額で記録するのではなく、種類ごとに分けて記載することがポイントです。 また、通貨以外のもの(現物給与)で支払った賃金がある場合は、その評価総額を記載します。 賃金から控除した項目・金額 社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)や雇用保険料、源泉所得税、住民税など、賃金から控除した項目とその金額を記載します。なお、社宅費や財形貯蓄など法定控除以外のものを賃金から控除するには、労使協定の締結が必要です(労働基準法第24条第1項ただし書)。 協定を結ばずに控除していると、賃金台帳の記載をきっかけに調査で指摘されることがあるため、控除項目の根拠もあわせて確認しておきましょう。 賃金台帳の作り方 賃金台帳には決まったフォーマットがなく、法定の記載事項を満たしていれば、どのような方法で作成しても構いません。ここでは、無料フォーマットの活用から効率的な作成方法まで、順を追って紹介します。 無料フォーマットを利用する 「まずは手軽に始めたい」という方には、厚生労働省が公開している無料フォーマットの利用がおすすめです。主要様式ダウンロードコーナーから、常用労働者用の様式第20号と日雇労働者用の様式第21号をダウンロードできます。 法定の記載事項がすべて網羅されているため、先に記載内容を確認したい方も、まずはこの様式に目を通しておくとよいでしょう。 出典:主要様式ダウンロードコーナー|厚生労働省 手書き・表計算ソフトで作成する 賃金台帳は、手書きやExcelなどの表計算ソフトで自作することもできます。厚生労働省の様式をベースに、自社の手当項目にあわせてカスタマイズすれば、費用をかけずに運用を始められます。 ただし、毎月、全従業員のタイムカードを手計算し、残業時間や深夜時間をExcelに手作業で入力するのは膨大な時間がかかります。さらに法改正で保険料率が変わるたびに計算式を直す必要があり、入力ミスや計算ミスのリスクが常に付きまといます。 従業員数が増えるほど作業負担とミスのリスクは大きくなり、賃金台帳の不備は前述のとおり罰則や労働基準監督署の指摘につながりかねません。 レコルで作成する 賃金台帳を作成し、管理する際の負担を解消したい場合は、「レコル」の活用が有効です。勤怠管理システム「レコル」なら、日々の打刻データから残業時間や深夜時間を分単位で自動集計でき、給与計算オプションを利用すれば賃金台帳の作成も可能です。 出力期間の指定や出力レイアウトのカスタマイズにも対応しているため、常用労働者用・日雇労働者用を分けて作成したり、自社に必要な情報を盛り込んだ賃金台帳を自由に出力したりできます。 保険料率などの法改正にもシステム側で対応するため、計算式のメンテナンスに追われる心配もありません。 日々の勤怠データがそのまま賃金台帳の根拠資料となるので、出勤簿との不整合も起こりにくく、調査対応の面でも安心です。 レコルの給与計算オプションについてもっと知る まとめ 賃金台帳は、従業員を雇用するすべての会社に作成・保存が義務付けられた法定三帳簿のひとつであり、法定の記載事項を漏れなく記録する必要があります。 記載漏れや出勤簿との不整合は、罰則の対象となるだけでなく、労働基準監督署の調査で未払残業代を疑われる要因にもなります。 人事担当者としては、「毎月の給与支払いの都度、正確に記録し、きちんと保存する」という基本を確実に回せる体制づくりが何より重要です。 手作業での管理に限界を感じたら、勤怠管理システムの活用も視野に入れ、正確で効率的な賃金台帳の運用を目指しましょう。 プロフィール 長澤 千晴(特定社会保険労務士/産業カウンセラー/ライター) 長澤アンカー社会保険労務士事務所 代表HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 大学卒業後、大手旅行会社に入社し、団体旅行営業・添乗業務を担当。その後、出版業界に転身し、月刊誌・隔週刊誌・週刊誌及び書籍・ムックの編集に従事。 その後、管理部門への異動を機に社会保険労務士試験の勉強を開始。2011年、合格。2014年、特定付記。総務・人事の責任者として労務管理、採用、研修、法改正対応、就業規則改正、人事制度・賃金制度変更などを手掛ける。令和8年、社会保険労務士として独立 https://jinjiwriter.com/author/Chiharu

従業員の昇給や降給、手当の変更などで給与額が変わったとき、「社会保険料はいつから変わるのか」と迷う人事担当者の方も多いのではないでしょうか。社会保険では報酬が大きく変動し、一定の要件を満たした場合に、随時改定として「月額変更届」の提出が必要です。 提出漏れや提出時期の誤りは、社会保険料の徴収や従業員への説明にも影響するため、制度を正しく理解しておくことが大切です。本記事では、月額変更届の対象となる要件から、記入例、提出期限、電子申請の方法までをわかりやすく解説します。 月額変更届(随時改定)とは? 月額変更届とは、昇給や降給などにより報酬が一定以上変動した場合に、社会保険の標準報酬月額を見直す「随時改定」のために提出する届出です。正式名称は「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届」ですが、実務では「月変(げっぺん)」と呼ばれることが多くあります。 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の保険料は、報酬を区分に当てはめた「標準報酬月額」をもとに計算されます。標準報酬月額が決定・改定される主なタイミングは、次の3つです。 資格取得時決定:入社時に、契約上の報酬などをもとに決定する 定時決定:毎年7月に「算定基礎届」を提出し、4~6月の報酬の平均をもとに年1回見直す(9月改定) 随時改定:報酬が一定以上変動し、要件を満たした場合に、「月額変更届」を提出して標準報酬月額を改定する 定時決定は年1回しか行われないため、年の途中で大幅な昇給や降給があると、実際の報酬と標準報酬月額に大きな差が生じることがあります。そこで設けられているのが、変動後の報酬を初めて受けた月から起算して4カ月目に標準報酬月額を改定する「随時改定」です。 月額変更届の対象者・要件 随時改定の対象で月額変更届が必要となるのは、次の3つの要件をすべて満たした従業員です。 昇給または降給により、固定的賃金に変動があった 変動月以後引き続く3カ月の報酬の平均額による標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた 変動月以後引き続く3カ月とも、報酬の支払基礎日数が17日以上である 1つでも満たさない要件があれば、月額変更届の提出は不要です。 ここからは、各要件のポイントと対象とならないケースをあわせて確認しましょう。 昇給・降給により固定的賃金に変動がある 固定的賃金とは、基本給や役職手当のように支給額があらかじめ決まっている賃金のことです。 固定的賃金の変動には、次のような例があります。 昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン) 給与体系の変更(日給から月給への変更など) 日給や時間給の基礎単価(日当、単価)の変更 請負給、歩合給などの単価や歩合率の変更 住宅手当、役職手当など固定的な手当の追加や支給額の変更 引っ越しによる通勤手当(定期代)の変更 一方、時間外手当や深夜勤務手当のように、勤務実績に応じて支給額が変わる賃金は「非固定的賃金」です。残業の増減で給与総額が大きく変わっても、固定的賃金に変動がなければ随時改定の対象にはなりません。 なお、休職中の従業員に通常の給与に代えて休職給が支払われる場合も、固定的賃金の変動には該当しないため随時改定の対象外です。 変動月以後3カ月の平均で2等級以上の差が生じる 変動月とは、変動後の固定的賃金にもとづく報酬が支払われた月のことです。 例えば、7月昇給分が7月支給の給与から反映される場合は、7〜9月に支払われた報酬の平均額から標準報酬月額を算出します。従前の標準報酬月額と比較して2等級以上の差があれば、10月に改定されます。 このとき3カ月の平均には、残業手当などの非固定的賃金や通勤手当も含めた報酬の総額を用いる点に注意が必要です。 また、さかのぼって昇給し昇給差額が支給された場合は、差額が支給された月が変動月となります。この場合は、差額分を除いた3カ月の平均額で2等級以上の差が生じるかを判定します。 月額変更届の対象とならないケース 次のように、固定的賃金の変動の方向と等級変動の方向が一致しない場合は、2等級以上の差が生じても随時改定の対象にならないため注意しましょう。 固定的賃金は上がったものの、残業手当などが減り、3カ月平均による標準報酬月額が従前より2等級以上下がった場合 固定的賃金は下がったものの、残業手当などが増え、3カ月平均による標準報酬月額が従前より2等級以上上がった場合 3カ月間の報酬支払基礎日数が17日以上 支払基礎日数とは、「賃金の支払対象となる日数」です。 月給制や週給制の場合は原則として暦日数、日給制や時給制の場合は出勤日数+有休日数で数えます。 随時改定では、3カ月のうち1カ月でも支払基礎日数が17日未満の月があると対象外となります。カウントの際に判断に迷いやすいパターンを整理すると、次のとおりです。 【支払基礎日数に含まれる例】 月給制・週給制で欠勤控除がない月の土日祝日などの公休日(暦日数で数えるため) 年次有給休暇・特別有給休暇の取得日 【支払基礎日数に含まれない例】 月給制・週給制で欠勤控除がある場合の欠勤日(所定労働日数から欠勤日数を差し引いた日数が支払基礎日数となる) 日給制や時給制における欠勤日・公休日(実際に出勤した日数のみ数える) なお、特定適用事業所(厚生年金保険の被保険者数が51人以上の事業所)に勤務する、週所定労働時間が20時間以上30時間未満(通常の労働者の4分の3未満)の「短時間労働者」は、17日ではなく11日以上の支払基礎日数が要件となります。 1等級差でも月変対象となる例外 標準報酬月額には上限と下限があります(健康保険は第1〜50等級、厚生年金保険は第1〜32等級)。上限や下限に近い等級では2等級以上の差が生じ得ないため、上限または下限にわたる等級変更の場合は1等級差でも随時改定の対象となります。 厚生年金保険の例は、次のとおりです。 出典:随時改定(月額変更届)|日本年金機構 健康保険についても同様に、50等級・1,390千円の上限や1等級・58千円の下限にわたる変更の場合は、1等級差でも対象となります。 月額変更届の作成手順は?記入例を解説 月額変更届は電子申請でも提出できますが、まずは基本となる、書類に記入して提出する流れをステップごとに確認しましょう。 月額変更届のダウンロード方法 月額変更届の様式は、日本年金機構のホームページからPDF形式またはExcel形式でダウンロードできます。 「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届」と「厚生年金保険 70歳以上被用者月額変更届」は1枚の共通様式で、70歳以上の従業員にも同じ用紙を使用します。年金事務所の窓口でも入手可能です。 様式・記入例のダウンロード先: 4-3:月額変更届(報酬額に大幅な変動があり、随時改定に該当するとき)|日本年金機構 月額変更届の書き方 月額変更届は、事業所情報を記入する欄と、対象者1人につき1段ずつ設けられた被保険者欄で構成されています。 項目ごとの書き方を順に見ていきましょう。ここでは、10月に支払う給与から昇給が反映され、翌年1月に改定されるケースを例に解説します。 具体的な記入イメージは、日本年金機構の記入例(PDF)もあわせて確認してください。 提出者記入欄(事業所情報) 届書の提出日と事業所整理記号のほか、事業所の所在地・名称・事業主の氏名・電話番号を記入します。社会保険労務士に手続きを委託している場合は、社会保険労務士記載欄への記入も必要です。 ①被保険者整理番号〜③生年月日 被保険者整理番号は、資格取得時に付与された番号を記入します。生年月日は元号を次の中から番号で選び、和暦で記載します。 【元号】1.明治 3.大正 5.昭和 7.平成 9.令和 【記入例】平成1年11月15日の場合→「7-011115」 ④改定年月 変動後の報酬を初めて支払った月から起算して、4カ月目の年月を記入します。令和7年10月支給分から昇給が反映された場合、改定年月は令和8年1月です。 ⑤従前の標準報酬月額・⑥従前改定月 ⑤欄には、現在の標準報酬月額を健康保険・厚生年金保険それぞれ千円単位で記入します。 ⑥欄には、現在の標準報酬月額が適用された年月を記入します。直近の定時決定で決まった場合は、直前の9月です。 ⑦昇(降)給・⑧遡及支払額 ⑦欄には、昇給または降給があった給与の支払月を記入し、昇給・降給の該当する区分を〇で囲みます。令和7年10月支給分から基本給が上がった場合、「10月」と記入し、昇給に〇を付けます。 また、さかのぼって昇給し差額が支給された場合は、⑧欄に差額の支払月と遡及支払額の記入も必要です。 ⑨支給月・⑩給与計算の基礎日数 ⑨欄には、変動後の賃金を支払った月から3カ月分の支給月を記入します。支給月は給与計算の対象月ではなく、実際に給与を支払った月です。令和7年10月支給分から昇給した場合、「10月」「11月」「12月」を記入します。 ⑩欄には各月の支払基礎日数を記入します。 ⑪通貨・⑫現物・⑬合計 ⑪欄に記入するのは、通貨で支払われた各月の報酬額です。残業手当などの非固定的賃金も含めて、社会保険の報酬対象となる総額を記入します。 また、食事や住宅、通勤定期券などの現物給与がある場合は、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」で金銭に換算して⑫欄に記入します。⑬欄は⑪と⑫の合計額です。 ⑭総計・⑮平均額・⑯修正平均額 ⑭欄には3カ月分の報酬の総計を、⑮欄には総計を3で割った平均額を1円未満切り捨てで記入します。 なお、遡及支払額が含まれる場合は、差額分を除いて計算した平均額を⑯修正平均額欄に記入します。 ⑰個人番号[基礎年金番号] 70歳以上被用者の場合のみ、⑰欄に個人番号または基礎年金番号の記入が必要です。 ⑱備考 該当する項目がある場合、それぞれの数字に〇を付けます。 70歳以上被用者月額変更:70歳以上の場合 二以上勤務:2ヵ所以上の企業で勤務している場合 短時間労働者:特定適用事業所に勤務する週所定労働時間が20時間以上30時間未満(通常の労働者の4分の3未満)の者である場合 昇給・降給の理由:基本給の変更・家族手当の支給など具体的な理由を記入 健康保険のみ月額変更:70歳到達時の契約変更などにより健康保険のみ月額変更対象となる場合 月額変更届の届出期限・届出先 月額変更届の提出時期や提出先は、次のとおりです。 提出時期:速やかに 提出先:管轄の事務センターまたは年金事務所(健康保険組合に加入している場合は健康保険組合にも提出) 提出方法:電子申請、郵送、窓口持参 添付書類:原則不要 提出期限は「●日以内」と日数で定められてはいませんが、提出が遅れるほど保険料をさかのぼって精算する負担が大きくなります。要件への該当が確定したら、改定月の初めに提出できるよう準備しておきましょう。 月額変更届の電子申請方法 月額変更届は、オンラインでの提出も可能です。電子申請には、主に次の3つの方法があります。 申請方法 特徴 向いているケース e-Gov 特別なソフトが不要で、ほぼすべての届書に対応。電子証明書またはGビズIDで申請可能。 少人数企業 届書作成プログラム 日本年金機構が無料で提供。主要な届書に対応し、届書を簡易に作成・申請できるプログラム。 コストをかけずに始めたい大人数企業 労務管理ソフト 市販の労務管理ソフトから申請データを直接送信。給与データから届書を自動作成できるものもある。 システムで効率化している大人数企業 いずれの方法でも書面の郵送や窓口への持参が不要になり、24時間いつでも申請できます。GビズIDを利用すれば電子証明書がなくても無料で始められるため、これから電子申請を導入する企業にはおすすめです。 参考:事業所向けオンラインサービス(申請、各種情報・通知書の受け取り)|日本年金機構 月額変更届のよくある質問 最後に、月額変更届に関するよくある質問にQ&A形式で回答します。 月額変更届の保険料はいつから反映される? 新しい標準報酬月額は、固定的賃金の変動月から起算して4カ月目の保険料から適用されます。社会保険料は当月分を翌月支給の給与から控除するのが原則のため、給与の天引き額が変わるのは改定月の翌月支給分からです。 例えば、2月支給の給与から昇給が反映された場合、標準報酬月額は5月に改定されます。翌月控除の会社であれば、6月支給の給与から控除される保険料が変わる計算です。 なお、随時改定された標準報酬月額は再度の随時改定がない限り、次の定時決定まで(1〜6月の随時改定ならその年の8月まで、7〜12月の改定なら翌年の8月まで)適用されます。 定時決定と随時改定が重なるときはどうする? 7月に随時改定が行われる従業員は月額変更届を優先し、算定基礎届の対象から除いて提出します。 8月または9月に随時改定が予定される従業員は、次のとおりあらかじめ申し出ることで算定基礎届の提出を省略できます。 【紙媒体による届出の場合】 報酬月額欄は記入せず、空欄とする 備考欄の「3.月額変更予定」に〇を付ける 出典:8月、9月の随時改定予定者にかかる算定基礎届の提出について|日本年金機構 【電子媒体および電子申請による届出の場合】 8月または9月の随時改定予定者を除いて、算定基礎届を作成し、提出します。提出がないことをもって、事業主からの申し出があったものとみなされます。 ただし、いずれの場合も、報酬の変動が見込みどおりにならず随時改定に該当しなかった場合は、あらためて算定基礎届の提出が必要ですので注意しましょう。 なお、定時決定・算定基礎届の書き方は、次の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。 関連記事:算定基礎届の書き方とは?対象者の確認から提出方法まで実務の流れを解説【令和8年度版】 月額変更届を出し忘れたら罰則はある? 健康保険法第208条および厚生年金保険法第102条では、正当な理由なく届出をしない事業主に対して、6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。 実際には、直ちに罰則が科されるケースは多くありません。しかし年金事務所の調査などで未提出が発覚すると、さかのぼって標準報酬月額が改定され、保険料の差額を精算することになります。昇給のケースでは不足分の保険料を従業員の給与から追加控除する必要があり、従業員への影響も小さくありません。出し忘れに気づいた場合は、放置せず速やかに提出しましょう。 レコルでは月額変更届の対象者を自動判定 随時改定の実務では、固定的賃金の変動の有無・等級差・支払基礎日数という3つの要件を毎月すべて確認する必要があります。従業員数が多いほど手作業での判定は負担が大きく、対象者の見落としも起こりがちです。 勤怠管理システム「レコル」の給与計算オプションでは、給与計算の結果から随時改定の対象者を自動で判定し、月額変更届を自動作成できます。作成した月額変更届はPDFのほか、日本年金機構向け・健康保険組合向けの電子申請用CSVデータでも出力可能です。改定後の標準報酬月額は給与計算に一括適用できるため、保険料の反映漏れも防げます。 また、月額変更届だけでなく、算定基礎届や賞与支払届の自動作成にも対応しています。 勤怠管理から給与計算、社会保険手続きの書類作成までを1つのシステムで完結できるサービスのため、社会保険手続きの負担を減らしたい企業の皆さまは、ぜひ一度お試しください。 レコルの給与計算オプションについてもっと知る まとめ 月額変更届は、「固定的賃金の変動」「3カ月平均で2等級以上の差」「すべての月で支払基礎日数17日以上」という3つの要件をすべて満たしたときに提出する届出です。標準報酬月額は変動月から4カ月目に改定され、給与から控除する保険料額もそれにあわせて変わります。 対象者の判定には、固定的賃金と非固定的賃金の区別や支払基礎日数の数え方など、細かな確認が欠かせません。提出が遅れると保険料の遡及精算が発生し、従業員にも負担をかけてしまいます。毎月の給与計算とあわせて確認する体制を整え、システムの自動判定機能も活用しながら、漏れのない社会保険手続きを実現しましょう。 プロフィール 内山 美央(特定社会保険労務士) 社会保険労務士法人MIO Partners 代表社員 HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 新卒3年目で社会保険労務士資格を取得。ITベンチャーでの勤怠管理システムの営業・導入コンサルティング経験を経て、大手事業会社の人事部にて労務管理や人事業務のDX推進に携わる。独立後は「労働時間管理のプロフェッショナル」として、HRテックの知見を強みに、人事システムの選定・導入支援から制度設計まで、働き方の改善を入り口に、会社に寄り添った長期視点での人事労務サポートを提供している。 https://mio-partners.jp/

アップデート情報

いつもレコルをご利用いただきありがとうございます。 2026年7月7日(火)にレコルをバージョンアップしました。 外部アカウント機能の追加 社労士や税理士など、従業員として管理する必要のない外部関係者向けに「外部アカウント」を新設しました。 勤怠や給与計算結果の確認などを目的としたアカウントとして利用でき、通常の利用者とは区別して管理できます。 なお、このアカウントは利用料金の請求対象外となります。 外部アカウントには勤怠および給与の機能利用可否を設定できる他、給与機能では年末調整とマイナンバー機能の利用可否を個別に設定可能です。 ※外部アカウントの登録上限は5人までとなります 【外部アカウントの編集画面】 ※こちらは勤怠管理+給与計算プランをご契約いただいている場合の画面となります 詳細な設定方法については、以下のオンラインマニュアルをご確認ください。 外部アカウントを設定する 給与計算オプション:給与テーブルに対応 給与テーブル管理機能を追加しました。 基本給や役職手当などの支給金額を給与テーブルとして管理することで、給与体系の設定・運用をより柔軟に行うことができます。 作成した給与テーブルを利用者に紐づけることで、給与計算へ反映されます。 【給与テーブルの編集画面】 詳細な設定方法については、以下のオンラインマニュアルをご確認ください。 給与テーブルを設定する 給与計算オプション:通勤手当の拡張 「駐車場代」項目を追加 令和8年度税制改正により、通勤手当の非課税限度額に駐車場等の料金相当額を加算する改正が行われました。 これに伴い、通勤手当設定の「交通用具(車・自転車)」に「駐車場代」項目を追加しました。 設定した駐車場代については、課税・非課税を自動判定し、所得税に反映します。 【通勤手当の設定画面】 通勤手当の非課税限度額の改正については、以下の国税庁のホームページをご確認ください。 通勤手当の非課税限度額の改正について|国税庁 支給条件の異なる通勤手当に対応 利用者毎に、支給条件の異なる通勤手当が設定できるようになりました。 これにより、「電車の定期代(6か月毎)とバスの定期代(1か月毎)」等、支給間隔の異なる通勤手当を管理できます。 【通勤手当の設定画面】 小改善 給与計算オプション:給与詳細・賞与詳細画面の利用者切り替えに対応 給与詳細画面・賞与詳細画面から利用者を切り替えられるようになりました。 これまでは給与一覧画面・賞与一覧画面に戻ってから利用者を選択し直す必要がありましたが、 詳細画面から直接利用者を切り替えることができます。 【給与詳細画面】 詳細画面の利用者アイコンをクリックするとサイドメニューが開き、表示する利用者を選択できます。 【給与詳細画面-利用者選択サイドメニュー】 給与計算オプション:給与明細・賞与明細の公開先オプションを追加 給与明細・賞与明細をスマートフォンアプリのみに公開できるようになりました。 公開先は環境設定の「給与明細・賞与明細の公開設定」から変更できます。 ※リリース時点で給与明細・賞与明細の公開設定を行っている場合は、従来通りホーム画面(Webブラウザ)とスマートフォンアプリの両方に公開されます 【環境設定画面】 最後に レコルは今後も新機能のリリースや機能改善を継続していきます!また、ご利用のお客様の声を積極的に取り入れてまいりますので、機能やUIの使い勝手などどんなことでもお気軽にサポートまでお伝えいただけますと幸いです。

労働保険の年度更新は、年に1回しか行わない手続きです。そのため、申告時期が近づくたびに「賃金総額はどう集計するのか」「保険料はどう計算するのか」と毎年確認しながら進めている人事総務担当者の方も多いのではないでしょうか。 この記事では、令和8年度の変更点を踏まえながら、年度更新に必要なデータの準備方法や労働保険料の計算方法、申告・納付までの流れをわかりやすく解説します。 なお、年度更新の基本的な仕組みや概要について詳しく知りたい方は、関連記事もあわせてご覧ください。 関連記事:労働保険の年度更新とは?計算方法とミスしやすいポイントを解説 労働保険の年度更新とは?令和8年度の期限や変更点を確認 労働保険の年度更新とは、前年度の確定保険料を精算し、新年度の概算保険料を申告・納付する手続きです。 労働保険は「労災保険」と「雇用保険」を総称した制度であり、労働者を1人でも雇用している企業では、年度更新を行わなければなりません。契約社員やパート・アルバイトなども対象です。 労働保険料は「毎年4月1日から翌年3月31日まで」を一保険年度として計算します。毎年度の開始時点では労働保険料が確定していないため、まず概算保険料を納付し、翌年度に実際の確定した賃金総額をもとに精算する仕組みとなっています。 申告・納付期間 「毎年6月1日から7月10日」が年度更新の申告・納付期間です。7月10日が土日となる場合は翌営業日までとなりますが、令和8年度は7月10日が金曜日のため、原則どおりとなります。期限を過ぎると追徴金が発生する可能性もあるため、余裕をもって準備を進めましょう。 申告書の封筒について 出典:HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」作成 5月下旬ごろを目安に、所轄の都道府県労働局から申告書が入った封筒が郵送されます。例年A4サイズの封筒が届きますが、令和8年度から変更点があります。 令和8年度の主な変更点 1. 雇用保険料率の引き下げ 出典:令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内|厚生労働省 2. 電子申請義務化対象事業場への紙申告書の送付廃止 電子申請が義務付けられている法人には、令和8年度の年度更新から紙の申告書が送付されなくなりました。従来のA4サイズの緑または青の封筒ではなく、労働保険番号やアクセスコードなど電子申請に必要な情報を記載した通知書が、定形郵便サイズの茶封筒で郵送されます。 出典:労働保険年度更新に係るお知らせ|厚生労働省 なお、電子申請が義務付けられている法人は次のとおりです。 資本金、出資金が1億円を超える法人 相互会社 投資法人 特定目的会社 対象の事業場は、e-Gov電子申請での手続きが必要です。義務化対象でない中小企業も電子申請を利用することは可能となっています。近年は電子申請の利用率も高まっており、控えの管理や過去データの確認がしやすい点もメリットです。 3. 労働保険相談チャットの終了 「労働保険相談チャット」は、2026年3月31日で提供が終了されました。2026年4月1日からは、「労働基準監督署チャットボット」に統合されています。 年度更新で必要なデータと賃金総額の考え方 年度更新では、前年度に支払った賃金総額を正しく集計することが重要です。しかし、労災保険と雇用保険では対象となる労働者の範囲が異なり、賃金に含める項目も確認しなければなりません。まずは必要なデータや賃金総額の考え方を整理しましょう。 労働保険の対象となる労働者とは 年度更新でまず確認したいのが、どの労働者の賃金を集計するのかという点です。労災保険と雇用保険で保険料の対象となる従業員が異なるため注意が必要です。 【労災保険】 雇用形態や勤務時間を問わず、労働の対償として賃金を受けるすべての労働者が対象です。正社員だけでなく、契約社員やパート・アルバイトなども含まれます。 【雇用保険】 雇用保険の被保険者となっている従業員が対象です。そのため、雇用保険に加入していない短時間勤務のパート・アルバイトなどは、労災保険料の対象にはなりますが、雇用保険料の対象にはなりません。 【その他】 役員ー原則として対象外ですが、労働者としての性格を有する兼務役員は例外的に対象となる場合があります。 同居の親族ー原則として対象外です。 派遣労働者ー派遣元事業場で適用されます。 在籍型出向者ー労災保険は実際に指揮命令を受けて働いている出向先事業場で、雇用保険は賃金を支払っている出向元事業場で適用されます。 労働保険料の計算に必要な書類や準備物とは 年度更新では、前年度(前年4月1日〜本年3月31日)に実際に支払った賃金総額を正しく集計することが最も重要な作業になります。以下の書類・データを事前に揃えておきましょう。 【労働局から送付されるもの】 労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金申告書または労働保険概算・増加概算・確定保険料申告 電子申請情報通知書 納付書(領収済通知書) 労災保険率決定通知書 労働保険年度更新申告書の書き方などリーフレット 【自社で準備するもの】 1年分の給与・賞与データ(賃金台帳や支給控除一覧表など) 労働者名簿 雇用保険加入状況がわかるデータ 前年度の年度更新控え なお、給与計算システムを利用している場合は、年度更新用の給与・賞与データが一括で出力できる機能を備えている場合もあります。システムを活用して、効率的に集計を進めましょう。 また、社会保険労務士へ依頼する場合は、必要資料の提出依頼が届きます。前年度の給与・賞与データや入退社・雇用保険加入情報を漏れなく共有できるよう、早めに準備しておくとスムーズです。 なお、雇用保険・労災保険の違いについては、関連記事も参考にしてください。 関連記事:労働保険とは?雇用保険・労災保険の違いを図解でわかりやすく解説 賃金総額に含めるもの・含めないものを確認 年度更新では、賃金総額に何を含めるかが非常に重要です。賃金総額とは、「労働の対償として支払われるすべてのもの」を指します。含めるものと含めないものをしっかり確認しておきましょう。 項目 取扱い 基本給 含める 各種手当(残業・住宅・家族・通勤手当等) 含める 賞与 含める 役員報酬 含めない 出張旅費・交通費(実費弁償) 含めない 慶弔見舞金 含めない 解雇予告手当 含めない なお、労働者としての性格を兼ねる「兼務役員」の場合でも、役員報酬は賃金総額に含みません。労働者としての職務に対応する賃金部分のみを含めます。 より詳しい労働保険対象賃金の範囲については、厚生労働省の労働保険年度更新申告書の書き方(P14)で確認できます。 年度更新で申告する労働保険料の計算方法 労働保険料は、労災保険料と雇用保険料をそれぞれ計算します。年度更新では「前年度の確定保険料」と「新年度の概算保険料」の2つを計算し、確定保険料と既納の概算保険料の差額を精算します。ここでは、具体的な計算方法を見ていきましょう。 労災保険料と雇用保険料の計算式 労働保険料は、賃金総額に保険料率を掛けて計算します。計算式は、以下のとおりです。 労災保険料=労災保険の対象となる賃金総額 × 労災保険料率 雇用保険料=雇用保険の対象となる賃金総額 × 雇用保険料率 労災保険率は事業の種類ごとに定められており、建設業や製造業など業種によって異なります。また、雇用保険料率も毎年度見直しが行われる可能性があります 具体的な自社の料率は、労働局から送付される申告書や通知書に記載されています。保険料率を誤ると保険料の過不足が発生するため、誤りのないよう計算することが重要です。 前年度の確定保険料を計算する 確定保険料とは、前年度(令和7年4月1日〜令和8年3月31日)に実際に支払った賃金総額をもとに算出する保険料です。前年度の賃金総額に前年度の保険料率を掛けて確定保険料を算出します。 前年度の初めに納付した概算保険料と比較し、 概算保険料より確定保険料が多い場合は不足額を納付 概算保険料より確定保険料が少ない場合は充当または還付 という形で精算を行います。 昇給や賞与増額、人員増加などにより賃金総額が大きく増えた企業では、不足額が発生するケースも少なくありません。 新年度の概算保険料を計算する 概算保険料とは、新年度(令和8年4月1日〜令和9年3月31日)に支払う予定の賃金総額をもとに算出する保険料です。概算保険料の計算には、新年度の保険料率を使用します。 見込額には、前年度の賃金総額をそのまま使用して概算保険料を計算するケースが一般的です。ただし、大幅な採用・人員整理の予定がある場合や賃金水準を大きく変更する場合には、見込額を別途算出して概算保険料とすることも可能です。 賃金総額が大きく変動する見込みがある場合は、実態に近い金額で申告することで翌年度の精算負担を軽減できます。 一般拠出金を計算する 年度更新では、労働保険料とあわせて一般拠出金の申告・納付も行います。一般拠出金は石綿(アスベスト)による健康被害者の救済費用に充てられるものです。計算式は、以下のとおりです。 一般拠出金=労災保険の対象となる賃金総額 × 一般拠出金率 一般拠出金は雇用保険ではなく労災保険の対象となる労働者の賃金総額を使って計算します。料率は1,000分の0.02で、令和8年度も変更ありません。 労働保険の年度更新の進め方 ここからは、実際に年度更新を進める際の流れを確認します。 令和8年度の申告・納付期間は、6月1日(月)から7月10日(金)までです。 期限間際は問い合わせや窓口が混雑するため、余裕を持って準備を進めましょう。 STEP1 賃金総額を集計する まずは、賃金台帳や給与データをもとに、前年度(令和7年4月1日〜令和8年3月31日)の賃金総額を集計します。 集計時は、次のポイントを確認しましょう。 労災保険対象者と雇用保険対象者を区分しているか 賞与を含めているか 通勤手当を含めているか 年度途中の入退社者を漏れなく集計しているか 雇用保険被保険者数を確認したか 集計結果は賃金集計表にまとめます。厚生労働省が提供する「年度更新申告書計算支援ツール」(Excelファイル)を活用すると、申告書作成や保険料計算を効率的に進めることができます。 出典:主要様式ダウンロードコーナー (労働保険適用・徴収関係主要様式)|厚生労働省 STEP2 労働保険料を計算して申告書を作成する 賃金総額の集計が完了したら、以下の3つの計算を行います。 前年度の確定保険料(令和7年度の保険料率を使用) 新年度の概算保険料(令和8年度の保険料率を使用) 一般拠出金 差引額(保険料の不足額または充当額) 差引額は、確定保険料と前年度の申告済概算保険料額を比較し、不足額または充当額を計算します。計算後は年度更新申告書へ転記し、記載内容に誤りがないか確認しましょう。 令和8年度は雇用保険料率が変わっているため、確定分と概算分で誤った料率を使わないよう注意が必要です。また、前年と比較して賃金総額や保険料が大幅に増減している場合は、集計漏れや入力ミスがないか再確認することをおすすめします。 STEP3 申告書を提出し、第1期分保険料を納付する 申告書の提出と保険料の納付は、以下の方法から選択できます。 【申告書の提出方法】 電子申請(e-Gov) 郵送(管轄の労働基準監督署または都道府県労働局) 窓口への持参(管轄の労働基準監督署または都道府県労働局) 【保険料の納付方法】 電子納付 金融機関・郵便局での納付 口座振替 口座振替を利用すると納付期限が延長され、事務負担の軽減につながるメリットがあり、推奨されています。 なお、概算保険料額が40万円以上(労災または雇用保険の一方のみ成立の場合は20万円以上)となる場合や労働保険事務組合に事務を委託している場合は、延納(分割納付)が可能です。申告時に延納の申請を行うことで、3回に分けて納付できます。 年度更新の提出前に確認したいチェックリスト 申告書を提出する前に、以下のチェックリストで最終確認を行いましょう。 確認項目 チェックポイント □ 労働者の集計範囲 労災保険と雇用保険で対象者を分けて集計しているか雇用保険未加入のパートの賃金を雇用保険分に含めていないか □ 賞与の計上 前年度(4月〜3月)に支給した賞与を集計に含めているか □ 通勤手当の計上 前年度(4月〜3月)に支給した通勤手当を集計に含めているか □ 入退社者の漏れ 年度途中に入社・退社した労働者の賃金が漏れていないか。 □ 出向者の取り扱い 出向元・出向先のどちらで集計するかを確認したか □ 役員報酬の除外 役員報酬を賃金総額に含めていないか兼務役員の場合は労働者分のみ計上しているか □ 保険料率の確認 前年度の確定保険料は旧料率(令和7年度)、新年度の概算保険料は新料率(令和8年度)を使用しているか □ 前年度との比較 前年度と比べて賃金総額や保険料に大きな変動がある場合、原因(採用増・賞与増減など)を把握しているか □ 充当・不足額 充当額や不足額の記載が正しいか □ 提出・納付方法 電子申請義務対象ではないか延納の希望は確認できているか □ 7月10日の期限 期限を過ぎていないか(追徴金が発生する可能性あり) チェックリストダウンロード:年度更新提出前チェックリスト.pdf 特にミスが多いのは「賞与や退職者賃金の集計漏れ」と「保険料率の誤り」です。令和8年度は雇用保険料率が変わっているため、確定保険料と概算保険料で使用する料率を必ず確認してください。 まとめ 労働保険の年度更新は、前年度の確定保険料と新年度の概算保険料を申告・納付する重要な手続きです。年に一度の手続きだからこそ、申告時期になってから慌てないよう、必要なデータや計算方法をあらかじめ確認して進めることが大切です。 特に、労災保険と雇用保険では対象となる労働者の範囲が異なるほか、通勤手当や賞与など賃金総額に含める項目にも注意が必要です。集計漏れや計算ミスを防ぐためにも、申告書作成後は前年実績との比較やチェックリストによる最終確認を行うことをおすすめします。 また、日頃から給与計算システムや労務管理システムを活用して賃金データを適切に管理しておくことで、年度更新の作業負担を軽減し、より正確かつスムーズに手続きを進めることができるでしょう。 プロフィール 内山 美央(特定社会保険労務士) 社会保険労務士法人MIO Partners 代表社員 HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 新卒3年目で社会保険労務士資格を取得。ITベンチャーでの勤怠管理システムの営業・導入コンサルティング経験を経て、大手事業会社の人事部にて労務管理や人事業務のDX推進に携わる。独立後は「労働時間管理のプロフェッショナル」として、HRテックの知見を強みに、人事システムの選定・導入支援から制度設計まで、働き方の改善を入り口に、会社に寄り添った長期視点での人事労務サポートを提供している。 https://mio-partners.jp/

算定基礎届は、原則として7月1日時点での被保険者全員を対象に、各人の標準報酬月額を決定する重要な作業です。年に1回の手続きであるため、初めて担当する方はもちろん、毎年対応している方でも進め方を改めて確認しておきたいところです。 この記事では、算定基礎届の概要と対象者の確認から、必要なデータの準備、書き方、提出方法までを、実務の流れに沿って解説します。記入漏れや誤りを防ぎ、スムーズに手続きを終えるための参考にしてください。 算定基礎届とは?提出期限や概要をおさらい 算定基礎届(正式名称「被保険者報酬月額算定基礎届」)は、4月・5月・6月に実際に支払った報酬をもとに、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額を毎年見直すための届出で、「定時決定」とも呼ばれます。 ここで決まった標準報酬月額は、原則として9月から翌年8月までの保険料計算に用いられます。提出期限は毎年7月10日で、令和8年度は2026年7月1日(水)から7月10日(金)までです。 届出用紙は6月中旬以降、日本年金機構から順次送付されます。提出方法は電子申請・郵送・窓口持参のいずれも選べます。 まずはこの全体像を押さえ、対象者の確認から準備を進めましょう。 算定基礎届の対象者と準備するデータ 出典:日本年金機構 算定基礎届を作成する前に、誰が対象になるのかと、手元に揃えておくべきデータを確認しておきましょう。 対象者の判定と報酬の集計は、後の書き方の正確さに直結する重要な準備です。 算定基礎届の対象者とは 対象となるのは、原則として7月1日時点で健康保険・厚生年金保険の被保険者である方と、70歳以上被用者です。 正社員・パート・アルバイトといった雇用形態で判断するのではなく、被保険者資格の有無で判断する点に注意してください。 育児休業中・介護休業中・私傷病で休職中の方も、被保険者資格があれば対象に含まれます。 一方、次に該当する方は対象外です。 【対象外】 6月1日以降に被保険者資格を取得した方(資格取得時に翌年8月までの標準報酬月額が決定済みのため) 6月30日以前に退職した方(7月1日時点で被保険者ではないため対象外) 7月改定の月額変更届(随時改定)を提出する方 8月または9月に随時改定が予定されている方(月額変更が優先されるため算定基礎届の提出を省略できます。ただし実際に該当しなかった場合は、その時点で算定基礎届の提出が必要です) 日本年金機構から届く用紙に対象者があらかじめ印字されていますが、印字されていない対象者を書き加えたり、対象外の方を記入したりしないよう、自社の被保険者一覧と突き合わせて確認しましょう。 算定基礎届の作成に必要な書類やデータとは 算定基礎届を作成するには、企業側で次の書類・データを準備します。 【事前に準備する書類・データ】 日本年金機構から届く「被保険者報酬月額算定基礎届」 4月・5月・6月に支払った給与データ 賃金台帳 出勤簿・勤怠データ(支払基礎日数の確認に使用) 被保険者一覧(対象者の確認に使用) 現物給与がある場合は、その内容が分かる資料 給与計算システムを利用している場合は、算定用のデータや届書を出力できるかを事前に確認しておくと作業がスムーズです。 なお、社会保険労務士やBPOに作成・提出を依頼する場合でも、対象者の確定や給与データの整理は企業側で行う必要があります。誰が・いつまでに・どのデータを用意するのかを早めに決めておきましょう。 報酬に含めるもの・含めないものを確認 標準報酬月額の基礎となる「報酬」には、労働の対償として受けるものが名称を問わず含まれ、現物で支給するものも対象です。集計漏れや含め誤りが起きやすいため、含めるもの・含めないものを整理しておきましょう。 【報酬に含めるものの例】 基本給 残業手当(時間外・休日・深夜手当) 通勤手当(非課税分も含む。定期券や回数券など現物で支給する場合はその額も報酬に含めます) 住宅手当・家族手当・役職手当などの諸手当 年4回以上支給される賞与(1か月あたりの額に換算して各月に算入) 食事や住宅などの現物給与(都道府県ごとに定められた価額で換算) 【原則として報酬に含めないものの例】 年3回以下の賞与(別途「賞与支払届」で届け出ます) 出張旅費・交際費などの実費弁償的なもの 結婚祝金・見舞金などの慶弔見舞金 退職金 役員報酬など判断に迷いやすい以下の項目は 役員報酬は、その役員が被保険者であれば報酬に含めます。企業型確定拠出年金(企業型DC)の事業主掛金は、選択制の場合も含めて報酬には含めません(被保険者の所得とならないため)。 一方、マッチング拠出の加入者掛金は、いったん給与として支給したうえで給与天引きするものであるため、報酬に含まれます。 労働保険の年度更新との違いに注意 あわせて、同時期に行う労働保険の年度更新で集計する「賃金総額」との違いにも注意が必要です。 年度更新の賃金総額には年3回以下の賞与も含めるのに対し、算定基礎届の報酬には年3回以下の賞与は含めません。 また、労働者性のない役員報酬は労働保険の賃金には含めませんが、社会保険では被保険者である役員の報酬は含めます。同じ給与データでも、社会保険と労働保険で集計対象が異なる点を押さえておきましょう。 算定基礎届の書き方 出典:日本年金機構 算定基礎届は、対象者ごとに4月・5月・6月の支払基礎日数と報酬月額を記載し、その平均額を算出して報酬月額を届け出ます。ここでは、つまずきやすい支払基礎日数と報酬月額の記入を中心に解説します。 支払基礎日数を確認する 支払基礎日数とは、給与計算の対象となった日数のことです。一般の被保険者は、4月・5月・6月のうち支払基礎日数が17日以上ある月を算定の対象とします。17日未満の月は報酬が通常より低くなりやすいため、対象から除きます。 たとえば5月だけ17日未満なら、4月と6月の2か月で平均を計算します。3か月とも17日未満の場合は、従前の標準報酬月額がそのまま適用されます(保険者算定)。 なお、パートタイマーなどの短時間就労者(正社員=通常の労働者より所定労働時間・日数は短いものの、その4分の3以上の方)は、3か月とも17日未満であっても15日以上の月があればその月で算定する特例があります。 3か月とも15日未満の場合は、従前の標準報酬月額が適用されます(保険者算定)。後述する短時間労働者とは基準が異なるため、混同しないよう注意してください。支払基礎日数の数え方は給与形態によって異なります。 月給制の場合 欠勤しても給与が控除されない完全月給制では、その月の暦日数を支払基礎日数とします(例:4月は30日、5月は31日、6月は30日)。 日給月給制 欠勤した日数分だけ給与を控除する日給月給制では、就業規則・給与規程で定めた所定労働日数から欠勤日数を差し引いた日数が支払基礎日数となります。 日給制・時給制 日給制・時給制では、給与支払いの基礎となった出勤日数を支払基礎日数とします。 短時間労働者の場合 特定適用事業所・任意特定適用事業所などに勤務し、社会保険の適用拡大によって被保険者となった短時間労働者は、支払基礎日数が11日以上の月で算定します。3か月とも11日未満の場合は従前の標準報酬月額が適用されます。 一般の被保険者と短時間労働者のどちらに該当するかは、資格取得時に届け出た被保険者区分で確認できますが、労働時間などの変更があれば区分も変わります。 算定対象月の途中で区分が変わった場合は、各月の給与計算期間の末日時点の区分に応じて、支払基礎日数を11日基準・17日基準のいずれで判定するかを決めます。 なお、特定適用事業所は現在「被保険者数51人以上」の企業等が対象で、今後段階的に拡大される予定です。届書では該当者の「短時間労働者」欄にチェックを付けます。 報酬月額と平均額を記入する 対象者ごとに、4月・5月・6月に「支払った」報酬を月単位で記入し、算定対象となる月(支払基礎日数を満たす月)の報酬月額の平均を求めます。 集計は締め日ではなく支払日を基準にする点が重要です。 たとえば3月分(3月締め)の給与を4月に支払う場合は4月の報酬として集計し、6月分の給与を7月に支払う場合は7月支払いとなるため算定の対象になりません。平均額に1円未満の端数が生じたときは切り捨てます。 遡及支給が行われた場合 3月以前にさかのぼった昇給差額分(遡及支給)が4月~6月に支払われた場合は、その差額分を除いて算定します。差額は届書の「遡及支払額」欄に記入し、差額を除いて算出した額を「修正平均額」欄に記入します。 また、通勤手当を3か月・6か月分の定期代としてまとめて支給している場合は、1か月あたりの額に按分して各月の報酬に算入します。 随時改定で対応するケースも 4月に昇給・降給など固定的賃金の変動があり、7月改定の月額変更届(随時改定)に該当する方は、算定基礎届ではなく月額変更届で届け出ることになるため、算定の対象から除きます。 記入にあたっては、日本年金機構が公表している記入例も参照すると確実です。 算定基礎届の提出方法と実務の進め方 ここからは、算定基礎届の作成から提出までを4つのステップに整理して解説します。 STEP1 4月・5月・6月の給与データを準備する まず、4月・5月・6月に支払った給与データを準備し、賃金台帳・勤怠データ・現物給与の有無などを確認します。 通勤手当や残業手当など、報酬に含める項目の集計漏れがないかをチェックしましょう。給与計算システムを利用している場合は、算定用データを出力できるかを確認します。 スケジュールの目安としては、4月・5月分の給与はすでに確定しているため、6月上旬のうちに賃金台帳と勤怠データを整理し、対象者の見込みを立てておくとスムーズです。 6月給与が確定する6月下旬~7月初旬に最終的な集計を行い、7月10日の期限までに余裕をもって提出できるよう逆算して準備を進めましょう。 STEP2 7月1日時点の対象者を確定する 7月1日時点の被保険者・70歳以上被用者を確定します。6月中の入退社や、7月改定の月額変更該当者、8月・9月の随時改定予定者などを反映し、届出用紙の印字内容と自社の被保険者一覧を突き合わせて、対象者の過不足がないかを確認します。 STEP3 算定基礎届を作成する 対象者ごとに、4月・5月・6月の支払基礎日数・報酬月額・平均額などを記入します。支払基礎日数が不足する月がある場合や、短時間就労者・短時間労働者の場合の取り扱いに注意しましょう。 給与計算システムからデータを出力する場合も、対象者や集計内容を必ず確認します。 算定基礎届を表計算ソフトや手書きで一から作成するのは手間がかかり、転記ミスも起こりがちです。 一部の給与計算システムには算定基礎届の自動作成機能や作成補助機能があり、こうしたクラウドシステムを活用すると効率化と正確性の両立がはかれます。 STEP4 期限までに算定基礎届を提出する 提出方法は3つの方法があります。 【提出方法】 電子申請(e-Gov) 郵送 管轄の年金事務所への持参 電子申請を利用する場合は、GビズID(プライム)またはe-Govアカウントでe-Govにログインし、届書作成プログラムで作成したCSVファイルを申請フォームに添付して、提出先の年金事務所を選択して送信します。 GビズIDプライムを使えば電子証明書(電子署名)は不要で、e-Govアカウントで申請する場合は電子証明書が必要になります。提出先の年金事務所を誤ると差し戻しになるため注意してください。 郵送の場合の提出先は、事務センターまたは管轄の年金事務所で、同封の返信用封筒を利用できます。健康保険組合に加入している事業所では、年金事務所への提出に加えて組合への提出が必要になる場合があるため、組合の案内も確認しましょう。 算定基礎届を提出する際の注意点 最後に、算定基礎届の提出にあたって押さえておきたいポイントを整理します。 算定基礎届の期限厳守で対応する 提出期限は7月10日です。7月10日が土日祝にあたる場合は翌開庁日が期限となりますが、令和8年度は7月10日が金曜日のため延長はありません。 提出を怠ったり虚偽の届出を行ったりした場合、健康保険法第208条・厚生年金保険法第102条に基づき、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。 期限を過ぎても提出自体は可能です。万が一遅れた場合は、期限後おおむね1~2か月で年金事務所から督促が届くことがあるため、放置せず速やかに管轄の年金事務所へ連絡して提出しましょう。 提出が確認できないまま放置すると、立入調査の対象となることもあります。 月額変更届(随時改定)の対象者もあわせて確認 算定基礎届と同じ時期に、月額変更届(随時改定)の手続きが必要になるケースもあります。4月に昇給があった社員などは、固定的賃金の変動から継続した3か月間の報酬の平均と現在の標準報酬月額とで2等級以上の差が生じると、7月改定の随時改定に該当します。 この場合は算定基礎届ではなく月額変更届で届け出るため、確認漏れがないようにしましょう。8月・9月に随時改定が予定されている方は、算定基礎届の提出を省略できます。 外部に依頼する場合も給与データの準備が必要 社会保険労務士やBPOに作成・提出を依頼する場合でも、対象者の確定や4月~6月の給与データの整理は企業側で行う必要があります。 給与計算をExcelで行っている場合は集計表や賃金台帳を、給与計算システムを利用している場合は算定用データの出力可否を、あらかじめ確認しておくと依頼がスムーズです。 いずれの場合も、提出期限の直前に慌てないよう、届出用紙が届いた段階から準備を始めることが大切です。 まとめ 算定基礎届は、対象者の正確な判定、報酬に含めるもの・含めないものの整理、支払基礎日数の確認という3つのポイントを丁寧に押さえることが、誤りのない届出につながります。 毎年発生する作業だからこそ、給与計算システムの活用による効率化が効果的です。 たとえば勤怠管理システム「レコル」の給与計算オプションでは、4月~6月支給の給与を確定すると算定基礎届を自動作成でき、PDFや電子申請用のCSVを出力できます。もちろん内容の修正や個別の作成にも対応しており、様式を一から手入力するよりも手間を大きく減らせます。 さらに、改定後の標準報酬月額を利用者情報に一括で反映できるため、9月以降の保険料計算もスムーズです。算定基礎届の負担を軽減したい人事担当者の方は、こうしたシステムの活用もぜひ検討してみてください。 参考:書類・帳票の自動作成機能をご紹介_算定基礎届(定時決定) プロフィール 長澤 千晴(特定社会保険労務士/産業カウンセラー/ライター) 長澤アンカー社会保険労務士事務所 代表HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 大学卒業後、大手旅行会社に入社し、団体旅行営業・添乗業務を担当。その後、出版業界に転身し、月刊誌・隔週刊誌・週刊誌及び書籍・ムックの編集に従事。 その後、管理部門への異動を機に社会保険労務士試験の勉強を開始。2011年、合格。2014年、特定付記。総務・人事の責任者として労務管理、採用、研修、法改正対応、就業規則改正、人事制度・賃金制度変更などを手掛ける。令和8年、社会保険労務士として独立 https://jinjiwriter.com/author/Chiharu

住民税の特別徴収は、毎月の給与計算に直結する重要な業務です。 しかし、「そもそも仕組みがよくわからないまま処理している」「退職者や休職者が出たときの対応に不安がある」という人事担当者の方も多いのではないでしょうか。 特に6月は、住民税の特別徴収税額決定通知書が届き、新しい税額への切り替え対応が発生する時期です。給与計算システムへの登録ミスや更新漏れが起こりやすく、注意が必要になります。 この記事では、住民税の特別徴収の基本から、6月の年度切り替え時に必要な対応、従業員の退職・転職・休職・引っ越しなどの対処まで、人事担当者の実務目線で分かりやすく解説します。 住民税の特別徴収とは 住民税の特別徴収とは、企業が従業員の給与から住民税を天引きし、本人に代わって市区町村へ納付する仕組みです。従業員自身が納付書を持って金融機関へ行く必要はなく、企業が毎月の給与計算から住民税を控除し、翌月10日までに納付します。 所得税との大きな違いは、「企業側で税額計算をしない」点です。 所得税は、毎月の給与支給額から税額表をもとに計算するため、支給額が変わるたびに計算が変わります。 一方で、住民税は自治体が確定させた金額をそのまま天引きするのみです。担当者が計算する必要がないという点で、慣れてしまえば所得税より扱いやすい面もあります。 なお、特別徴収の対象者は、原則として全従業員です。従業員それぞれが住む市区町村へ、自治体ごとに納付します。納付書を用いて1件ずつ納付することもできますが、多くの企業ではインターネットバンキングなどで一括で電子納付しています。 特別徴収と普通徴収の違い 住民税の納め方には、特別徴収のほかに普通徴収があります。普通徴収とは、従業員本人が市区町村から送られてくる納付書を使い、自分で住民税を納める方法です。年4回(6月・8月・10月・翌年1月)の分割払いが基本で、一括払いも選べます。 なお、原則として、給与所得者は特別徴収をすることが義務です。多くの自治体が特別徴収の徹底を進めており、「従業員本人が希望するから」という理由だけで普通徴収に切り替えることは認められません。 ただし、以下のようなケースでは例外的に普通徴収が認められています。 総従業員数が2人以下の場合 他の企業で特別徴収されている場合 給与が少なく、住民税額が給与から天引きできない場合 給与支払いが不定期な場合 退職・休職などで給与の支払いがない場合 事業専従者(個人事業主) 特別徴収は企業の義務であるため、原則として、例外事由に該当しない限りは特別徴収のまま対応する旨を説明できるよう、担当者として把握しておきましょう。 参考:普通徴収切替理由書(兼仕切書(紙)) 住民税の特別徴収はいつから始まる? 住民税の特別徴収は、原則として毎年6月から翌年5月までの12回に分けて給与から天引きします。 対象となるのは「前年1月から12月の所得」です。 ここで注意したいのが、「いつの給与を基準にするのか」です。住民税では、実際の支払日ベースで考えます。例えば、次の支払いタイミングとなる企業の場合、2026年1月支払分からが新しい年の所得になります。 2025年12月分給与を2026年1月支払 2026年1月分給与を2026年2月支払 「何月分の給与か」ではなく、「いつ支払ったか」が基準となるので注意しましょう。 また、新卒社員や前年の収入が少ない従業員は、6月から住民税が発生しないケースがあります。休職中で給与支給がなかった場合なども同様です。 6月に人事・給与担当者が対応すること 6月は住民税の年度切り替えのタイミングであり、人事担当者にとって年に一度の重要な処理月です。ここでは、具体的に何をするのかを確認しましょう。 特別徴収税額決定通知書を確認する 出典:特別徴収税額変更通知書|神戸市 毎年5月中旬〜下旬頃、各市区町村から企業宛てに「給与所得等に係る市民税・県民税 特別徴収税額決定通知書」が届きます。 この通知書には、以下の情報が記載されています。 特別徴収の対象になっている従業員の氏名・住所 従業員ごとの年間住民税額 6月〜翌年5月までの給与から天引きする住民税額 市区町村に収める納付額合計 人事担当者が確認すべきポイントは以下のとおりです。 対象従業員の確認(漏れがないか、退職者が含まれていないか) 氏名・住所の確認(誤りがないか) 6月分と7月以降の金額(6月分は端数調整により月額が異なるケースが多い) 通知書が届いたらすぐに確認し、不明点は速やかに市区町村に問い合わせましょう。 給与計算システムへ新しい税額を反映する 通知書の内容を確認したら、6月支給の給与から新しい住民税額を適用できるよう、給与計算システムへ登録します。 「6月分の給与処理を始める前」のタイミングで、給与システムへ登録が必要です。給与計算開始後に変更すると、旧税額のまま控除してしまい、後から再計算や遡及控除が必要になる可能性があります。 また、6月分のみ端数処理で住民税額が異なるケースも多いため、「6月分」と「7月〜翌年5月分」を分けて登録できるかも確認しておくと良いでしょう。 住民税の特別徴収の納期限 特別徴収した住民税は、徴収した月の翌月10日までに市区町村へ納付する必要があります。 例えば、6月給与で天引きした住民税は、7月10日が納期限です。 10日が土日祝日の場合は、翌営業日が納期限です。月によってカレンダーが異なるため、年間の各月の納期限をあらかじめ確認しておくと安心です。 納付方法は主に以下のとおりです。 窓口納付(金融機関や郵便局に納入書を用いて納付) 電子納付(eLTAXを利用したクレジットカード・インターネットバンキング・ATM・ダイレクト納付) 従業員の状況が変わったときの手続き 退職・転職・休職・引っ越しなど、従業員の状況が変わると住民税の処理も変わります。状況別に確認しましょう。 退職した場合 退職時は、残りの住民税をどう徴収するかの判断が必要です。主なパターンは以下の3つです。 最終給与や退職金から一括徴収する 普通徴収へ切り替える 転職先で特別徴収を継続する いずれの場合も、退職月の翌月10日までに「給与所得者異動届出書」を市区町村へ提出する必要があります。退職者が転職先で特別徴収を継続する場合は、「給与所得者異動届出書」に必要事項を記入し、転職先へ提出してもらう流れになります。 なお、退職日が1月1日〜4月30日の従業員は、一括徴収が原則です。 また、退職後に誤って住民税を控除した場合は、本人への返金や自治体の訂正対応が必要になるため注意しましょう。 入社・転職した場合 【新卒入社】 新卒で入社した従業員は、入社前年の収入がゼロ、または少額であることが多いため、入社1年目の6月から住民税の特別徴収が始まらないケースが大半です。そのため、入社直後は住民税の控除がなく、入社2年目の6月以降から通常どおり特別徴収が開始されます。 【中途入社】 年度途中で転職してきた従業員は、前職で住民税がいつまで特別徴収されているかを確認する必要があります。従業員が特別徴収継続を希望していて、前職から「給与所得者異動届出書」を受け取っている場合は、必要事項を追記し、自治体へ提出すれば特別徴収を引き継ぐことが可能です。 また、給与所得者異動届出書を受け取っていない場合でも、「普通徴収から特別徴収への切替申請書」を自治体へ提出することで、途中から特別徴収へ切り替えられます。 ただし、普通徴収の納期限を過ぎた税額については、特別徴収へ切り替えできない点に注意が必要です。従業員本人へ希望を確認したうえで、現在手元にある納付書の状況を提出してもらい、切り替え可能な時期を確認しながら対応しましょう。 新卒社員の社会保険はいつから加入?保険料と入社時の必要書類 休職した場合 休職により給与の支払いがなくなる、または著しく少なくなる場合は、特別徴収の継続が難しくなります。以下のいずれかの対処が必要です。 普通徴収へ切り替える 会社が立て替えて後日精算する 普通徴収へ切り替える場合、休職前に本人へ納付書が届くことを事前に説明しておかないと、トラブルになることがあります。 また、産休・育休中も住民税自体は免除されません。社会保険料と異なり免除はないため、復職後の徴収方法も含めて事前説明が重要です。 引っ越した場合 住民税は、その年の1月1日時点の住所地で課税されます。そのため、年の途中で引っ越しても、その年度の納付先自治体は変わりません。 例えば、2026年4月に引っ越した従業員でも、2026年6月から始まる住民税は2026年1月1日時点の住所地の自治体へ納付します。年末年始で引っ越しした場合は、1月1日時点で実際にどこに住民票があったかの確認が必要です。 住所変更を把握していないと、自治体から問い合わせが来ることもあります。住所変更の報告は適切に届け出るよう、従業員への周知を徹底しましょう。 住民税の特別徴収で注意すべきポイント 住民税は「通知された金額を引くだけ」と思われがちですが、ミスが発生しやすい業務です。給与計算システムへの税額登録漏れや退職者の過徴収・異動届未提出などはよくあるトラブルです。ここでは、注意すべきポイントを紹介します。 納付期限を守らないと延滞金が発生する 特別徴収した住民税を納付期限(翌月10日)までに納めなかった場合、延滞金が発生します。延滞金は日数に応じて加算されます。 また、自治体から督促が届くと、経理・人事双方で確認作業が発生します。納付スケジュールは、給与計算スケジュールとセットで管理することが重要です。 複数自治体へ納付する企業では、納付先管理も煩雑になりやすいため注意しましょう。 従業員が普通徴収を希望しても特別徴収が必須 原則として、給与所得者は特別徴収が義務です。従業員から「自分で払いたいので普通徴収にしてほしい」と言われても、例外事由に該当しない限り対応できない旨を丁寧に説明しましょう。 特別徴収が法的な義務であることとあわせて、「自分で納付しなくていい」「払い忘れがない」といったメリットも伝えると本人の理解が深まります。 退職・休職者への丁寧な説明でトラブルを防ぐ 退職後や休職中に普通徴収に切り替えた従業員には、「しばらく経ってから納付書が届く」と、事前に案内しておくことが大切です。 特に休職中の従業員は、給与が無く不安な中で自治体から高額な住民税の納付書が届き、驚いてしまうケースが少なくありません。「普通徴収の請求がくるので準備しておいてほしい」「おおよその金額はこのくらい」という情報を退職・休職手続き時に一言添えるだけで、トラブルを未然に防げます。 また、中途入社者に対しても、前職の住民税の処理状況を確認し、二重払いや未払いが生じないよう入社初期にフォローしておきましょう レコルの便利な給与計算機能 住民税の特別徴収に関する実務は、給与計算システムを活用することで大幅に効率化できます。レコルでは、税額の登録方法は2パターンから選べます。 年税額の設定:年税額を入力すると、6月を端数調整月として月額が自動計算される方法 月額の設定:月ごとに納付額を入力する方法 また、業務スケジュール設定画面では、「住民税登録」「労働保険年度更新」「最低賃金確認」などの年間業務をスケジュール登録し、ダッシュボード表示できる機能もあります。6月の住民税登録を忘れてしまい、給与明細に住民税が控除されていないまま配布してしまうといったミス防止にも有効です。 参考:年間の業務スケジュールを設定する(マニュアル) 給与計算業務では、6月の住民税切り替え対応を忘れない仕組みづくりも重要です。担当者の負担を大幅に軽減し、便利に使うことができるでしょう。 まとめ 住民税の特別徴収は、毎月発生する重要な給与計算業務のひとつです。 決定通知書の確認や新税額への更新、納期限管理、入退社時の異動手続きなど、人事・給与担当者が対応すべき実務は多岐にわたります。特に6月は年度切り替え対応でミスが発生しやすいため、給与計算システムを活用して業務を標準化することが重要です。 レコルは、住民税の税額登録から毎月の給与計算、さらに給与・賞与・住民税の振込用FBデータの出力にも対応しています。給与計算業務の効率化を検討中の方は、ぜひレコルをお試しください。 レコルの給与計算オプションについてもっと知る プロフィール 内山 美央(特定社会保険労務士) 社会保険労務士法人MIO Partners 代表社員 HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 新卒3年目で社会保険労務士資格を取得。ITベンチャーでの勤怠管理システムの営業・導入コンサルティング経験を経て、大手事業会社の人事部にて労務管理や人事業務のDX推進に携わる。独立後は「労働時間管理のプロフェッショナル」として、HRテックの知見を強みに、人事システムの選定・導入支援から制度設計まで、働き方の改善を入り口に、会社に寄り添った長期視点での人事労務サポートを提供している。 https://mio-partners.jp/

月例の給与計算作業と並行して行われることの多い賞与計算の実務。人事担当者にとっては間違いが許されない神経を使う日々が続きます。 賞与計算は月例給与とは異なる独自のルールが適用されるため、毎年「この処理で合っているか」と不安を覚える担当者も少なくないでしょう。 本記事では、人事担当者を対象に、賞与から控除する社会保険料と税金の種類・計算方法を体系的に解説します。 あわせて賞与計算の実務の流れや、ミスが起きやすい注意点についても詳しく取り上げます。 夏・冬の賞与計算前の確認資料としてお役立てください。 賞与から控除する社会保険料と税金の種類 賞与を支給する際に従業員の賞与額から控除するのは、健康保険料、介護保険料(40歳以上65歳未満に限る)、厚生年金保険料、雇用保険料、源泉所得税、そして2026年4月分の保険料から新たに加わった子ども・子育て支援金の6種類です。 月例給与と比較したときの大きな違いは、住民税の扱いです。住民税は原則として月例給与から毎月「特別徴収」されるため、賞与からは控除しません。この点を誤ると、控除過多や控除漏れの原因になるため注意しましょう。 社会保険料や税金控除の対象になる賞与とは 社会保険上の「賞与」とは、賞与(役員賞与を含む)、ボーナス、期末手当、年末手当、夏(冬)季手当、繁忙手当、年末一時金などを指します。名称を問わず、労働者が労務の対償として受けるもののうち、年3回以下の回数で支給されるものが賞与です。 一方、同じ性質で年4回以上、定期的・継続的に支給されるものは、社会保険上は「賞与」ではなく「報酬」として扱い、標準報酬月額の算定基礎に組み込まれます。 役員賞与についても、労務の対償と認められる場合は社会保険料の計算対象となり、賞与支払届の提出が必要です。 なお、結婚祝金・弔慰金など労務の対償でないものは賞与には該当せず、社会保険料の対象外となります。 ✅控除の対象となるもの ❌控除の対象にならないもの 夏(冬)季手当 ボーナス 期末手当 決算賞与 等 ※名称を問わず、労務の対償として年3回以下で支給されるもの 結婚祝金 弔慰金 見舞金 退職金 等 ※労務の対償でないもの、または年4回以上支給されるもの 社会保険の加入条件とは?2026年法改正ポイントを解説 パート・アルバイトの社会保険加入条件とは?106万円の壁や2026年法改正ポイントを解説 賞与にかかる社会保険料等と税金の計算式・計算方法 賞与の計算では、まず社会保険料と雇用保険料(合わせて社会保険料等)を計算し、その後に社会保険料等控除後の賞与額をもとに、源泉所得税を計算します。それぞれの計算方法を順に確認していきましょう。 社会保険料は標準賞与額で計算する 健康保険料・介護保険料(40歳以上65歳未満に限る)・厚生年金保険料は、「標準賞与額」をもとに計算します。 標準賞与額とは、税引き前の賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てた金額です。たとえば、賞与500,600円の場合、標準賞与額は500,000円となります。 賞与の社会保険料は、この標準賞与額に各保険料率を乗じて算出します。賞与の社会保険料は労使折半のため、事業主と従業員が2分の1ずつ負担します。 【従業員負担分の計算式】 保険の種類 計算式(従業員負担分) 健康保険料 標準賞与額×健康保険料率÷2 介護保険料 標準賞与額×介護保険料率÷2 厚生年金保険料 標準賞与額×18.3%÷2(=9.15%) 健康保険料率は都道府県別の協会けんぽや健康保険組合によって異なります(例:協会けんぽ・2026年度・東京都は9.85%)。 介護保険料率は協会けんぽは全国一律、健康保険組合は組合ごとに異なります(例:協会けんぽ・2026年度は1.62%)。 厚生年金保険料率は18.3%で固定されており、労使折半のため従業員負担は9.15%です。 なお、標準賞与額には上限があり、上限を超えた部分には保険料がかかりません。社会保険料の対象となる賞与額の上限は以下の通りです。 【標準賞与額の上限】 保険の種類 上限額 備考 健康保険・介護保険 573万円 年度(4月1日〜翌年3月31日)の累計額 厚生年金保険 150万円 1回の支給ごと(同月内に2回以上支給した場合は合算) 賞与にかかる社会保険料の計算例もあわせて参考にしてください。 【計算例】 賞与支給額:500,600円、東京都協会けんぽ加入、45歳の場合(2026年度料率) ・標準賞与額:500,000円(600円切り捨て) ・健康保険料(従業員負担分):500,000円×9.85%÷2=24,625円 ・介護保険料(従業員負担分):500,000円×1.62%÷2=4,050円 ・厚生年金保険料(従業員負担分):500,000円×18.3%÷2=45,750円 参考:賞与にかかる保険料はどのように計算するのですか。|日本年金機構 雇用保険料は賞与の総支給額で計算する 出典:令和8年度の雇用保険料率|厚生労働省 雇用保険料は、標準賞与額ではなく「賞与の総支給額(税引き前の額面金額)」に保険料率を乗じて計算します。健康保険料・厚生年金保険料等と異なり、1,000円未満の切り捨ては行いません。この点は実務でも混同しやすいため、特に注意が必要です。 【従業員負担分の計算式】 保険の種類 計算式(従業員負担分) 雇用保険料 賞与の総支給額×雇用保険料率(労働者負担分) 2026年度(令和8年度)の雇用保険料率は、一般の事業で労働者負担分が0.50%、事業主負担分が0.85%です(農林水産・清酒製造の事業は労働者負担分0.60%・事業主負担分0.95%、建設の事業は労働者負担分0.60%・事業主負担分1.05%)。 【計算例】 賞与支給額:500,600円の場合(2026年度料率) ・雇用保険料:500,600円×0.50%=2,503円 雇用保険料率は毎年見直されるため、年度切り替えのタイミングで最新の料率を確認しましょう。 子ども・子育て支援金も賞与から控除する(2026年4月分から) 2026年4月分の保険料から、子ども・子育て支援金が新たに徴収されています。毎月の給与だけでなく、賞与(標準賞与額)からも同様の料率で控除が必要です。給与計算システムの設定漏れがないよう、夏・冬の賞与計算前に必ず確認しましょう。 【従業員負担分の計算式】 保険の種類 計算式(従業員負担分) 子ども・子育て支援金 標準賞与額×0.23%÷2(=0.115%) 支援金率は2026年度は全国一律0.23%で、健康保険料と同様に労使折半です。産前産後休業・育児休業中で社会保険料が免除されている従業員については、支援金も免除(徴収なし)となります。 【計算例】 賞与支給額:500,600円、東京都協会けんぽ加入、45歳の場合(2026年度料率) ・標準賞与額:500,000円(600円切り捨て) ・子ども・子育て支援金(従業員負担分):500,000円×0.23%÷2=575円  なお、給与明細での表示方法は法令上の義務はないため、健康保険料に合算して表示するか、別項目として記載するかは会社の判断となります。ただし、こども家庭庁は内訳を明示して従業員に周知する取り組みへの理解・協力を求めています。 事前に従業員へ制度説明を行うことも、人事担当者の重要な対応となります。 参考:子ども・子育て支援金制度のQ&A|こども家庭庁 源泉所得税は社会保険料等控除後の賞与額で計算する 出典:賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和8年分)|国税庁 賞与の源泉所得税は、総支給額ではなく、「社会保険料等(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・新設の子ども・子育て支援金の従業員負担分)を控除した後の賞与額」に、所定の算出率を乗じて求めます。 【計算式(通常の場合)】 税金の種類 計算式(通常の場合) 源泉所得税額 社会保険料等控除後の賞与額×算出率 この算出率は、国税庁が公表する「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和8年分)」から確認します。 前月の給与から社会保険料等を控除した金額と、扶養控除等申告書に記載された扶養親族等の数に応じて税率が変わります。扶養親族の数が多いほど適用される税率が低くなる仕組みです。 算出率は、扶養控除等申告書(いわゆる「甲欄申告書」)の提出がある従業員に適用される甲欄と、提出がない従業員に適用される乙欄に分かれており、参照する表が異なります。前月給与のある通常の従業員は甲欄を参照します。 なお、2037年12月31日まで、所得税に加えて復興特別所得税(所得税額の2.1%相当)が課税されます。「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の税率には復興特別所得税が含まれているため、表から引いた算出率をそのまま使用すれば問題ありません。 賞与計算の実務の流れ 社会保険料と源泉所得税の計算方法を踏まえ、実際の賞与計算がどのような順番で進むのかを整理します。 賞与支給額・支給日・対象者を確認する まずは今回の賞与計算の前提となる情報を確認します。支給額・支給日・支給対象者の3点が主な確認事項です。 支給対象者の確認では、通常の従業員だけでなく、退職予定者・産休・育休中の従業員が含まれていないかも確認が必要です。これらの従業員への賞与支給は、社会保険料の控除・免除の有無や、賞与支払届の記載内容に影響します。 また、休職中の従業員に賞与を支給する場合は、社会保険料の免除制度は適用されないため、通常どおり控除が必要です。賞与計算前に必ず確認する習慣をつけましょう。 社会保険料と雇用保険料を計算する 対象者が確定したら、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料と子ども・子育て支援金を計算します。健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料と子ども・子育て支援金は標準賞与額(1,000円未満切り捨て)をもとに、雇用保険料は総支給額をもとに計算します。両者の計算ベースが異なる点に注意してください。 端数処理は銭単位(小数点以下)で50銭以上は切り上げ、50銭未満は切り捨てが原則ですが、労使間の取り決めにより異なる場合もあります。給与計算システムの設定を事前に確認しておきましょう。 源泉所得税の計算に必要な情報を確認する 社会保険料等の計算が終わったら、源泉所得税の計算に移ります。算出率を正しく引くために、以下3点を事前に確認します。 確認事項 (1) 社会保険料等控除後の賞与額 (2) 前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額(算出率の表で該当行を探す基準となる) (3) 扶養控除等申告書に記載された扶養親族等の数(令和8年分からは「源泉控除対象配偶者+源泉控除対象親族」の合計数。令和7年分以前とは算定方法が異なるため注意) 扶養控除等申告書の提出がある従業員(甲欄)と、提出がない従業員(乙欄)では参照する表が異なります。入社間もない従業員や副業をしている従業員は申告書未提出(乙欄)のケースがあるため、確認が必要です。 賞与の源泉所得税を計算する 確認した情報をもとに「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和8年分)」から算出率を引き、社会保険料等控除後の賞与額に乗じて源泉所得税額を求めます。算出率は復興特別所得税込みの数値となっています。 なお、計算の結果、1円未満の端数が生じた場合は切り捨てます。 差引支給額を確認する 各種保険料と源泉所得税を控除したら、従業員に実際に支払う差引支給額を算出します。 項目 計算式 差引支給額 賞与総支給額 − (社会保険料等従業員負担分合計 + 源泉所得税) 2026年4月分からは社会保険料等に子ども・子育て支援金が加わったため、控除項目の設定漏れがないか給与計算システムで確認しておきましょう。 賞与支払届を提出する 賞与を支給した後は、「被保険者賞与支払届」を所轄の年金事務所または事務センターに対して、賞与支給日から5日以内に提出する必要があります。 健康保険組合に加入している場合は、組合にも提出が必要です。提出はe-Govによる電子申請も可能です。 賞与支払届の対象者は、社会保険の被保険者(役員を含む)と70歳以上被用者です。70歳以上の従業員は厚生年金保険の被保険者ではないため厚生年金保険料の控除は不要ですが、在職老齢年金との調整のため賞与支払届の提出が必要です(75歳未満の場合は健康保険料の控除が必要)。 なお、令和3年4月1日以降、従来添付していた「被保険者賞与支払届総括表」は廃止されており、添付は不要です。 参考:従業員に賞与を支給したときの手続き|日本年金機構 賞与不支給の場合は賞与不支給報告書を提出する 日本年金機構に賞与支払予定月を登録している事業所が、その予定月に賞与を支給しなかった場合は、「賞与支払届」のかわりに「賞与不支給報告書」を提出します。 登録された賞与支払予定月の翌月までに届出が確認できない場合、日本年金機構より翌々月に催告状が送付されます。また、支給日から2年を経過すると時効により受け付けてもらえなくなるため、従業員の将来の年金受給額に影響する恐れがあります。 賞与にかかる社会保険料・税金計算に注意が必要なケース 賞与計算では、標準的な処理とは異なる対応が必要な特殊なケースがあります。事前に把握しておくことで、ミスや事後の修正対応を防ぐことができます。 退職月に賞与を支給する場合 退職月に賞与を支給する場合、社会保険料の控除有無が退職日によって変わります。 月末に退職する場合、被保険者資格の喪失日は翌月1日となるため、退職月は引き続き被保険者として在籍しており、社会保険料の控除が必要です。 一方、月の途中(末日以外)に退職する場合、資格喪失日は退職翌日となるため、退職月に支給した賞与から社会保険料を控除する必要はありません。 退職後に支給日が到来する賞与については社会保険料の控除対象外となりますが、源泉所得税の徴収は必要です。この場合、退職により扶養控除等申告書の効力が失われるため、乙欄を適用して計算します。 産休・育休中に賞与を支給する場合 産前産後休業(産休)または育児休業(育休)中の従業員に賞与を支給する場合、賞与支払月の末日を含む連続した1か月を超える休業を取得しているときに限り、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除されます。 免除の対象となる場合でも、支給した賞与の標準賞与額は年度累計(573万円)に算入されますので賞与支払届の提出は必要です。免除申請(健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書)の手続きも確認しておきましょう。 雇用保険料については、育児休業中の従業員に賞与を支給した場合も控除が必要です。 なお、子ども・子育て支援金は産休・育休中で社会保険料が免除されている期間は支援金も免除となります。 参考:育児休業等期間中の 社会保険料免除要件が見直されます。|厚生労働省 前月給与がない場合や賞与額が大きい場合 源泉所得税の通常の計算方法は「前月の給与から社会保険料等を控除した金額」を基準に算出率を引く仕組みです。 しかし、入社直後などで前月に給与の支払いがない場合や、社会保険料等控除後の賞与額が前月の社会保険料等控除後の給与の10倍を超える場合は、通常の算出率表では対応できず、別の計算方法が必要になります。 前月給与がない場合は、以下の順で計算します。 手順 計算内容 (1) (賞与支給額-社会保険料等)÷6(または÷12) (2) (1)の金額を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて税額を求める (3) (2)の税額×6(または×12)=賞与の源泉徴収税額 ※賞与の計算期間が6か月を超える場合には、上記計算式の「12」を使って計算します。 また、社会保険料等控除後の賞与額が前月給与(社会保険料等控除後)の10倍を超える高額賞与のケースでは、以下の順で計算します。 手順 計算内容 (1) (賞与支給額-社会保険料等)÷6(または÷12)+(前月給与-社会保険料等) (2) (1)の金額を月額表に当てはめて税額を求める (3) (2)の税額-前月給与に対する源泉徴収税額 (4) (3)の税額×6(または×12)=賞与の源泉徴収税額 ※賞与の計算期間が6か月を超える場合には、上記計算式の「12」を使って計算します。 参考:No.2523 賞与に対する源泉徴収|国税庁 レコルで賞与・給与計算をスムーズに 賞与計算は、社会保険料の算出・源泉所得税の計算・賞与支払届の作成など、複数の処理が重なる複雑な実務です。計算ルールの変更や特殊ケースへの対応も加わると、手作業では一定のリスクが伴います。 レコルの給与計算機能を活用することで、以下の業務を効率化できます。 支給額を入力すると、最新の扶養情報や前月給与と連動して社会保険料・源泉所得税などの控除額を自動計算 賞与振込依頼ファイル(FBデータ)の出力、賞与振込一覧表・賞与支払届などの書類作成・確認 給与と同様にWeb明細で賞与明細を電子化 なお、賞与の総支給額の計算式はシステム内では設定できないため、別途算出した支給額を手入力またはインポートして使用します。この点は他の給与計算ソフトでも同様の運用が一般的です。 賞与計算の効率化と正確性の向上をお考えであれば、レコルの給与計算機能をぜひご検討ください。 レコルの給与計算オプションについてもっと知る まとめ 賞与計算は、月例給与とは異なる固有のルールが適用されます。退職月・産休育休中・前月給与なし・高額賞与の場合など、通常と異なる処理が必要なケースも多くあります。 あらかじめスケジュールが決まっている月例給与の計算とは違い、会社の業績によって臨時に支給される決算賞与などは、支給の決定から支給までの準備期間が短くなりがち。 経理担当者や税理士とも連携しながら、本記事を手元に置いて一つひとつ丁寧に確認を進めていきましょう。 プロフィール 長澤 千晴(特定社会保険労務士/産業カウンセラー/ライター) 長澤アンカー社会保険労務士事務所代表HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 大学卒業後、大手旅行会社に入社し、団体旅行営業・添乗業務を担当。その後、出版業界に転身し、月刊誌・隔週刊誌・週刊誌及び書籍・ムックの編集に従事。 その後、管理部門への異動を機に社会保険労務士試験の勉強を開始。2011年、合格。2014年、特定付記。総務・人事の責任者として労務管理、採用、研修、法改正対応、就業規則改正、人事制度・賃金制度変更などを手掛ける。令和8年、社会保険労務士として独立 https://jinjiwriter.com/author/Chiharu

社会保険は、従業員の医療・老後・介護を支える公的保険制度です。会社は適切な手続きをとる必要があり、加入漏れがあれば遡及徴収や行政指導のリスクを負います。 また、2025年6月に年金制度改正法が成立し、短時間労働者に対する適用拡大が大幅に広がることが決まりました。2026年10月には「106万円の壁」として知られた賃金要件が撤廃される予定で、2027年以降は企業規模要件も段階的に縮小されます。 制度変更のたびに、対象者の洗い出しや手続き対応が必要となるため、人事担当者には最新の加入条件を正しく把握しておくことが求められます。 本記事では、社会保険の加入条件の基本と、2026年以降に人事担当者が押さえるべき法改正のポイントを解説します。 社会保険の加入条件とは 本記事で解説する社会保険は、「狭義の社会保険」と呼ばれる健康保険・厚生年金保険・介護保険の3つを指します。これに雇用保険と労災保険(この2つを労働保険と呼びます)を合わせたものが「広義の社会保険」で、区別して整理する必要があります。 まずは、社会保険の事業所の加入条件を解説したのち、従業員の加入条件とパート・アルバイトの加入条件のポイントを解説します。 労働保険については、以下の関連記事をご覧ください。 労働保険とは?雇用保険・労災保険の違いを図解でわかりやすく解説 事業所の社会保険加入条件 社会保険が適用される事業所は、「強制適用事業所」と「任意適用事業所」の2種類に分けられます。 強制適用事業所は、法律によって社会保険への加入が義務づけられた事業所です。 すべての法人(株式会社・合同会社など法人格を持つ事業所)は、事業の種類や従業員数にかかわらず強制適用事業所となります。 個人事業所は、常時5人以上の従業員を使用する事業所のうち、法定17業種(鉱業、建設業、製造業、電気ガス事業、情報通信業、運輸業、卸売業、金融業、不動産、学術研究、教育、医療、複合サービス事業、士業など)が対象です。 任意適用事業所は、強制適用の対象外となる事業所(5人未満の個人事業所や、法定17業種以外の個人事業所)が、従業員の2分の1以上の同意を得て厚生労働大臣に申請することで、社会保険に任意加入できる制度です。 なお、個人事業所については2029年10月以降、17業種以外の全業種(飲食・サービス業など)も適用対象に拡大される予定です(ただし、2029年10月時点で既に存在する事業所は当分の間対象外)。この点は後述の法改正セクションで詳しく解説します。 出典:社会保険の加入対象の拡大について|厚生労働省 従業員の社会保険加入条件 強制適用事業所に使用される従業員は、原則として社会保険に加入する義務があります。ただし、年齢によって加入条件が変わります。また、次章で述べる「4分の3基準」や短時間労働者の要件で判断する点に注意が必要です。 一方、労働保険(雇用保険・労災保険)は年齢制限がなく、加入可否は労働時間や雇用形態で判断します。 実務では「75歳で健保喪失」「70歳で厚年喪失」のタイミングが特に手続きミスの起きやすい箇所であり、誕生日に達した月の翌月処理を忘れずに確認したいところです。 パート・アルバイトの社会保険加入条件 パート・アルバイトの社会保険加入は、次の「4分の3基準」と「短時間労働者の加入要件」の2段階で判断します。 【4分の3基準】 週の所定労働時間および月の所定労働日数が、正社員のおおむね4分の3以上であれば、企業規模に関わらず加入対象となります。 【短時間労働者の加入要件(特定適用事業所の場合)】 4分の3基準を満たさない場合でも、特定適用事業所(現在は従業員数51人以上)に勤務し、以下の4つの要件をすべて満たす場合は加入対象です。 週の所定労働時間が20時間以上 月額賃金が88,000円以上(賃金要件。2026年10月に撤廃予定) 雇用期間が2か月を超える見込みがあること 学生でないこと なお、「週20時間以上」の判定は雇用契約上の所定労働時間で行います。残業等で一時的に20時間を超えた場合は直ちに加入対象とはなりませんが、2か月を超えて継続する場合は加入対象となることがあります。 パート・アルバイトの加入条件については、以下の記事で詳しく解説しています。 パート・アルバイトの社会保険加入条件とは?106万円の壁や2026年法改正ポイントを解説 社会保険に加入義務がないもの 例外的に、社会保険の加入義務が発生しない働き方がいくつか存在し、以下に該当する者は、社会保険の適用除外となります。日雇いや季節的雇用のケースは実務でも問い合わせを受けることがあるため、概要を押さえておきましょう。 【日雇い労働者】 日々雇い入れられる者(1カ月を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となります)。 【2か月以内の期間を定めて使用される者】 期間が明確に区切られている場合。ただし、所定の期間を超えて引き続き使用される場合は、その翌日から被保険者となります。また、当初から「2か月を超えることが見込まれる場合」は当初から加入対象です。 【季節的業務(4か月以内)に使用される者】 継続して4か月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となります。 【所在地が一定しない事業所に使用される者】 いかなる場合も被保険者になりません。 ただし上記の適用除外に該当しても、実際の就労実態が当初と異なり、継続的な雇用となった場合は遡って加入手続きが必要になることがあります。契約当初の条件と実態に乖離が生じないよう、日頃から雇用管理を適切に行うことが重要です。 参考:適用事業所と被保険者|日本年金機構 社会保険の加入条件はどう変わる?法改正のポイント 2025年6月13日、年金制度改正法が成立しました。 これにより、社会保険の適用拡大が今後10年にわたって段階的に進みます。人事担当者が特に注目すべき3つのポイントを解説します。 特定適用事業所51人要件が撤廃 2026年4月現在、パート・アルバイトが社会保険に加入するための企業規模要件(特定適用事業所)は「従業員数51人以上」です。 従業員数は、正社員および正社員のおおむね4分の3以上の労働時間で働く従業員の数(厚生年金保険の被保険者数)で判断します。また、法人は法人番号が同一の全企業を合計し、個人事業所は個々の事業所ごとにカウントします。 今回の改正で、この要件が2027年から2035年にかけて段階的に縮小・撤廃されます。 企業規模要件の段階的撤廃スケジュール 2027年10月以降:従業員数36人~50人の企業が対象 2029年10月以降:従業員数21人~35人の企業が対象 2032年10月以降:従業員数11人~20人の企業が対象 2035年10月以降:従業員10人以下の企業が対象 これにより、中小・小規模事業者でも週20時間以上勤務するパート・アルバイトが社会保険の加入対象となり、企業は保険料の労使折半負担が増加します。 一方、従業員にとっては将来の年金受給額の増加や傷病手当金・出産手当金の給付が充実するメリットがあります。 企業への主な影響は次のとおりです。 ・法定福利費(社会保険料の事業主負担)の増加 ・給与計算・社会保険手続きの事務負担増大 ・「扶養の範囲で働きたい」という従業員との就労条件の調整 そして場合によっては採用・定着戦略の見直しが必要になります。 参考:「社会保険加入対象者の範囲が拡大されるのをご存じですか?」(厚生労働省) 月88,000円の要件|106万円の壁がなくなる 現行の短時間労働者の加入要件の一つである「月額賃金88,000円以上(年収106万円相当)」が、2026年10月をめどに撤廃されます。 撤廃の背景にあるのは最低賃金の引き上げです。 2025年度の地域別最低賃金改定により、全都道府県で時給が1,016円を超え、全国加重平均は1,118円となりました。時給1,016円以上の地域では、週20時間勤務するだけで月額88,000円を超えてしまうため、賃金要件の実効性が失われたと判断されたものです。 撤廃後は、「週20時間以上」「2か月超の雇用見込み」「学生でないこと」の要件を満たす短時間労働者であれば、賃金額にかかわらず社会保険の加入対象となります(特定適用事業所に勤務している場合)。 ただし、「130万円の壁」(社会保険の被扶養者認定基準)は残ります。106万円の壁と130万円の壁は別々の制度であり、それぞれに影響が生じる点に注意が必要です。 さらに、税金の壁(2026年分からは年収178万円超で所得税が発生)は社会保険の壁とは別物です。 136万円は所得税が発生するラインではなく、配偶者控除・扶養控除が満額受けられる年収の目安(2026年・2027年の時限措置を含む)であり、混同に注意が必要です。 年収の壁が複数存在することを踏まえ、人事担当者は最新の法令動向を継続的にキャッチアップしていく必要があります。 参考:「年収の壁」への対応|厚生労働省 社会保険の扶養認定基準が明確になる 2026年4月1日より、健康保険の被扶養者認定における年間収入の判定方法が変わりました。 これまで「130万円未満」かどうかは、認定対象者の過去の収入・現時点の収入・将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入を総合的に判断する方式でした。 そのため、繁忙期の残業代が増えた月の収入だけを見て扶養から外れてしまうケースや、保険者(協会けんぽ・健康保険組合)によって判断基準にばらつきがあるといった問題が指摘されていました。 2026年4月以降は、給与収入のみの場合に限り、労働条件通知書(雇用契約書)に記載された時給・所定労働時間・勤務日数などから算出した年間収入見込みが判定基準となる特例ルールが追加されました。 労働契約に明確な規定がなく、労働契約段階では見込むことが難しい時間外労働(残業)に対する賃金は原則として年間収入に含めません。よって、一時的な残業で実際の収入が130万円を超えても、契約上の年収が130万円未満であれば扶養にとどまれるようになります。 なお、年金収入・事業収入など給与以外の収入がある場合は、従来どおりの判定方式が継続されます。また、新ルールの適用には、認定対象者本人が「給与収入のみである」旨の申立てを行う必要があります。 参考:労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定 における年間収入の取扱いに係るQ&Aについて (厚生労働省) 社会保険の法改正前に人事が準備することは? 段階的な法改正に備え、人事担当者は以下のような準備を早めに進めておくことが重要です。 現状の把握 対象者の洗い出しと就業意向の確認 自社のパート・アルバイトの就業実態(週の所定労働時間・月額賃金・雇用期間)を一覧化し、現状の加入要件と照らし合わせます。また、「今後どのくらい働きたいか」をアンケートなどで把握し、法改正後に社会保険加入対象となりそうな従業員を事前に特定しておきましょう。 コストシミュレーション 新たに社会保険に加入する従業員が生じた場合、事業主負担の社会保険料がどの程度増えるかを試算します。中小企業では年間数十万円規模の負担増となることもあるため、財務的な影響を早期に把握し、予算計画に反映させておくことが重要です。 従業員への丁寧な説明と相談対応の準備 社会保険に加入すると手取りが減ることへの不満や、「扶養を外れたくないので退職・減時間したい」「逆に正社員を希望したい」といった相談が増えることが予想されます。 加入のメリット(将来の年金増加・傷病手当金・出産手当金など)と負担増加(保険料控除)の両面を分かりやすく説明できる資料を整備しておきましょう。 なお、配偶者の勤務先から家族手当(配偶者手当)が支給されている従業員については、社会保険に加入することで家族手当の支給対象から外れる場合があります。手当の支給基準は各企業の就業規則によって異なるため、従業員が配偶者の勤務先に確認するよう促すとともに、説明資料にもこの点を盛り込んでおくことを推奨します。 労働条件通知書・雇用契約書の整備 2026年4月からの扶養認定新ルールでは、労働条件通知書の記載内容が扶養判定の根拠となります。 企業側への実務的な影響として、労働条件通知書の記載内容が扶養認定の直接的な根拠となるため、これまで以上に書類の正確な整備が求められます。 既存の雇用契約書の書式を見直し、時給・所定労働時間・所定労働日数・通勤手当・時間外労働の有無を明確に記載できる書式に更新しておくことを推奨します。 特に、時給・所定労働時間・労働日数・通勤手当・時間外労働の有無を明確に記載することが重要です。昇給や勤務時間変更など労働条件の変化があった際には、変更内容に基づき保険者への確認が必要となります。 なお、契約上の年収が130万円以上と読み取れる場合は、実際の収入が130万円未満であっても扶養に入れない可能性があります。また、意図的に労働条件通知書の賃金を低く記載した場合は、認定取消しの対象となります。 社会保険の加入手続き 社会保険の加入手続きの仕方を、事業所と従業員にわけて解説します。 事業所の新規適用届 社会保険の強制適用事業所に該当することとなった事業所は、「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を提出する必要があります。 【提出先】 事務センターまたは管轄の年金事務所。郵送の場合は事務センター、窓口持参の場合は管轄の年金事務所となります。電子申請も利用可能です。 【提出期限】 事実発生(法人設立・適用要件を満たした日)から5日以内 【主な添付書類】 法人の場合は法人(商業)登記簿謄本など、個人事業所の場合は事業主の世帯全員の住民票など。なお、これらの書類は提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものが必要です。 なお、すでに社会保険に加入している事業所で、法改正により新たに「特定適用事業所」に該当することとなった場合(パート等の短時間労働者の加入要件を満たす事業所)は、特定適用事業所該当届の提出が必要です。 この場合、日本年金機構において直近11か月のうち5か月、厚生年金保険の被保険者数が50人を超えたことが確認された場合は、対象の適用事業所に「特定適用事業所に関する重要なお知らせ」が送付されます。 法人事業所の場合は、同一の法人番号を有するすべての適用事業所を代表する本店または主たる事業所からまとめて届出を行います。 個人事業所の場合は、各適用事業所がそれぞれ届出を行います。また、特定適用事業所への該当に伴い、新たに被保険者資格を取得する短時間労働者がいる場合は、各適用事業所が「被保険者資格取得届」を併せて提出する必要があります。 参考:新規適用の手続き|日本年金機構 参考:特定適用事業所該当・不該当の手続き|日本年金機構 従業員の資格取得届 新たに社会保険の被保険者となる従業員が生じた場合、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を提出します。 【提出先】 事務センターまたは管轄の年金事務所。郵送の場合は事務センター、窓口持参の場合は管轄の年金事務所となります。電子申請も利用可能です。なお、健康保険組合に加入している事業所は、厚生年金保険分を年金事務所(事務センター)へ、健康保険分を健康保険組合へそれぞれ提出する必要があります。 【提出期限】 資格取得の事実発生から5日以内 【添付書類】 原則不要。ただし、60歳以上の方を退職後1日の間もなく再雇用した場合や、国民健康保険組合に引き続き加入する場合などは、それぞれ所定の添付書類が必要となります。 資格取得届が必要となるのは、入社時だけではありません。在職中に「4分の3基準」を満たすようになった場合や、短時間労働者が特定適用事業所において所定の要件(「週20時間以上」「所定内賃金が月額88,000円以上」(2026年10月に撤廃予定)「2か月超の雇用見込み」「学生でないこと」)をすべて満たすようになった場合も、その時点で資格取得の手続きが必要です。 反対に、退職・死亡・70歳到達(厚生年金)・75歳到達(健康保険)・労働条件の変更による4分の3基準の非該当など、被保険者資格の喪失が生じる際には「資格喪失届」の提出が必要となります。 なお、退職等により資格を喪失した後に家族の扶養に入る場合は、被保険者側の事業所から資格喪失届が提出されたうえで、扶養者の勤務先を通じて「健康保険被扶養者(異動)届」を提出する手続きが別途必要となります。 新卒社員の社会保険加入のタイミングや入社時に必要なさまざまな書類について、次の記事で解説しています。 新卒社員の社会保険はいつから加入?保険料と入社時の必要書類 まとめ 社会保険の加入条件は、事業所の規模・種類と従業員の就労実態の両面から判断します。 強制適用事業所では従業員を原則全員加入させる義務があり、パート・アルバイトについては「4分の3基準」または短時間労働者の4要件で判断します。 2025年6月の法改正により、今後10年で社会保険の適用拡大が段階的に進みます。 2026年10月には106万円の壁(賃金要件)が撤廃され、2027年以降は企業規模要件も縮小が始まります。また2026年4月には扶養認定の判定方法が労働契約ベースに変わり、労働条件通知書の整備が一層重要になりました。 これらの制度変更は、採用・労働条件・コスト管理にも直結します。「いつ」「どんな従業員が」加入対象となるかを事前に把握し、従業員への説明体制や書類管理の仕組みを早めに整えておくことが、スムーズな法改正対応の鍵となります。 プロフィール 長澤 千晴(特定社会保険労務士/産業カウンセラー/ライター) HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 大学卒業後、大手旅行会社に入社し、団体旅行営業・添乗業務を担当。その後、出版業界に転身し、月刊誌・隔週刊誌・週刊誌及び書籍・ムックの編集に従事。 その後、管理部門への異動を機に社会保険労務士試験の勉強を開始。2011年、合格。2014年、特定付記。総務・人事の責任者として労務管理、採用、研修、法改正対応、就業規則改正、人事制度・賃金制度変更などを手掛ける。令和8年、社会保険労務士として独立 https://jinjiwriter.com/author/Chiharu

従業員が遅刻・早退・欠勤をしたとき、給与計算でどう対応すればよいか迷う担当者は多いでしょう。 「1分の遅刻でも控除できるのか」「3回遅刻で欠勤1日分にして良いか」「電車遅延のときの扱いは?」など、計算方法や法的な考え方を正しく理解していないと、思わぬトラブルにつながることもあります。 この記事では、欠勤控除と遅刻早退控除の仕組みをまとめて解説します。それぞれの意味と注意点を押さえることで、ミスのない給与計算ができるようになるでしょう。 欠勤控除と遅刻早退控除の意味 欠勤控除とは、従業員が所定労働日に出勤せず、有給休暇などの正当な休暇理由もない場合に、その日分の賃金を差し引く処理のことです。 遅刻早退控除とは、始業時刻に遅れたり、終業前に早退した場合に、実際に働かなかった不足時間分を賃金から差し引く処理をいいます。 両者の違いは「単位」にあります。 欠勤控除は1日単位での不就労に対して適用され、遅刻早退控除は時間単位での不就労に対して適用されます。 例えば、月給30万円の従業員が1日無断欠勤した場合は欠勤控除、1時間遅刻した場合は遅刻早退控除の対象となります。 いずれも「働いていない時間・日数に応じて給与を減じる」という点では共通していますが、両者の違いを正しくおさえておきましょう。 ノーワーク・ノーペイの原則 欠勤控除と遅刻早退控除の法的根拠となるのが「ノーワーク・ノーペイの原則」です。 これは「働いていない時間に対しては賃金を支払わなくてよい」という考え方で、民法第624条の趣旨とも一致します。 民法第624条(報酬の支払時期) 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。 引用:民法|e-Gov 法令検索 「3回遅刻したら1日欠勤扱いにできるか」という疑問を見かけることがありますが、これは原則として認められません。遅刻3回分の不就労時間の合計が1日分の所定労働時間に満たないにもかかわらず、1日分の賃金を控除することは、ノーワーク・ノーペイの原則に反するためです。 遅刻や早退は、あくまで実際に働かなかった時間分のみを控除するのが正しい扱いです。 減給の制裁との違い 欠勤控除や遅刻早退控除は、あくまで「労働の提供がなかった部分の賃金を支払わない」処理であり、制裁とは別物です。 労働基準法第91条が定める減給の制裁は、問題行動があった従業員に対して懲戒処分として賃金を減額するもので、1回の額や総額に上限が設けられています。 労働基準法第91条(制裁規定の制限) 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。 引用:労働基準法|e-Gov 法令検索 欠勤控除や遅刻早退控除は制裁ではないため上限規制の対象外ですが、両者を混同すると、違法な賃金控除につながるリスクがあります。例えば、遅刻に対して実際の時間以上に控除する場合、それは減給制裁とみなされる可能性があります。「控除」と「制裁」の区別を明確に理解しておきましょう。 日給月給制/月給日給制と完全月給制の違い 欠勤控除が適用されるかどうかは、賃金制度によって異なります。代表的な制度の違いを整理しておきましょう。 制度 内容 欠勤・遅刻早退控除 日給月給制 月単位で給与を定めるが、欠勤・遅刻があれば不就労分を控除する 控除あり 月給日給制 日給月給制と同義で使われることが多い 控除あり 完全月給制 欠勤や遅刻があっても満額支給する 控除なし 日本の多くの会社では、一般社員に対しては日給月給制が採用されており、欠勤控除の前提となっています。 制度の違いを理解せずに運用すると、自社の就業規則や従業員の認識との齟齬が生じやすいため、自社の賃金体系を明確にしておくことが大切です。 欠勤控除の対象になるケース 仕事を休んだからといって、すべてが欠勤控除の対象になるわけではありません。正当な理由のある休暇や、一定の条件を満たす場合は欠勤扱いにならないことがあります。 まずは、欠勤控除の対象となる主なケースを確認しておきましょう。 欠勤をして有給取得ができないとき 従業員が所定労働日に休んだ場合、年次有給休暇を取得すれば、その日は出勤したものとみなされ、賃金も支払われます。しかし、入社間もなく有給休暇が付与されていない、またはすでに有給休暇を使い切っている場合は、欠勤控除の対象となります。 「有休残日数を超えている」「本人が申請方法を把握していない」などの理由で欠勤扱いになるケースも少なくありません。こうしたミスを防ぐためには、勤怠管理システムを活用し、従業員本人がリアルタイムで残日数を確認できる環境を整えることが有効です。合わせて、有給休暇の申請がない場合は欠勤控除となる旨を、あらかじめ社内に周知しておくことが重要です。 自然災害で出勤できないとき 台風や大雨、地震などの自然災害により出勤が困難な場合、原則としてノーワーク・ノーペイの考え方が適用されるため、欠勤控除の対象となります。 ただし、大規模な自然災害の場合、会社判断で特別休暇扱いとするケースもあります。 その日の取り扱いは会社の就業規則や災害の規模によって異なります。どの程度の災害で適用するかは会社の裁量に委ねられるため、就業規則や運用ルールで基準を定めておくと、現場の混乱を防ぐことができるでしょう。 公の職務の執行で休むとき 裁判員制度への参加や選挙立会人など、法律に基づく公の職務を執行するために休む場合も、欠勤控除の対象として差し支えありません。 労働基準法第7条では、従業員が勤務時間中に、選挙権を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合、会社がこれを拒否してはならないとされています。ただし、賃金を有給とするか欠勤扱いとするかは会社が自由に決められます。 社会的配慮から有給扱いとする会社も多いため、自社の方針を明確にしておくことが求められます。欠勤控除とする場合も、就業規則にその旨を明記しておきましょう。 法定休暇を有給と定めていないとき 子の看護等休暇(育児・介護休業法第16条の2)や介護休暇(同法第16条の5)、生理休暇(労働基準法第68条)、通院休暇(男女雇用機会均等法第12条)は、いずれも法律上取得が認められた休暇ですが、賃金の支払いは義務づけられていません。会社が有給と定めていない限り、取得した日・時間分は欠勤控除の対象となります。 就業規則や賃金規程に有給とする旨の記載がなければ無給扱いが原則です。 従業員から「休む権利があるのになぜ引かれるのか」という疑問が出やすい部分なので、規程への明記と事前の説明が特に重要です。 遅刻・早退をしたとき 遅刻や早退により、実際に働かなかった時間は、遅刻早退控除の対象となります。 電車遅延など公共交通機関の影響で遅刻した場合も、ノーワーク・ノーペイの原則からは、控除の対象となります。 ただし、遅延証明書の提出により控除しない運用をしている会社も多くあり、ここも就業規則の定めが重要になります。現場ごとの判断に任せず、ルール化しておくことがポイントです。 欠勤控除の対象にならないケース 欠勤控除の対象とならないのは、賃金支払い義務がある場合です。代表的なものが年次有給休暇の取得です。有給休暇を取得した日は出勤扱いとなり、給与は減額されません。また、慶弔休暇や特別休暇など会社独自の有給休暇制度も同様です。 さらに、会社都合による休業(経営判断や設備トラブル、業務縮小など)の場合は、労働基準法第26条に基づき平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があります。この場合は欠勤控除ではなく、別途休業手当の支給が必要です。 欠勤控除や遅刻早退控除の給与計算方法 では、実際に欠勤控除や遅刻早退控除を行う際の、計算方法を確認していきましょう。 欠勤控除の給与計算方法 欠勤控除の基本的な計算式は以下のとおりです。 欠勤控除額=月給÷月の所定労働日数×欠勤日数 【計算例】 月給30万円、月の所定労働日数20日の従業員が2日間欠勤した場合 欠勤控除額=300,000円÷20日×2日=30,000円 なお、「月の所定労働日数」を使用する方法以外にも、暦日数を用いる方法や、「年間所定労働日数÷12ヶ月」で得られる年平均所定労働日数を用いる方法もあります。また、欠勤控除の対象とする「月給」を基本給のみとするのか、役職手当などの手当も含むのかも自由です。 どのような計算式を使うのかは、法令上の決まりはないため、会社が就業規則や賃金規程に定めておく必要があります。計算方法によって控除額が変わるため、ルールを明確に周知しましょう。 遅刻早退控除の給与計算方法 遅刻早退控除の基本計算式は以下のとおりです。 遅刻早退控除額=月給÷月の所定労働時間数×遅刻早退時間数 【計算例】 月給30万円、月の所定労働時間160時間の従業員が30分遅刻した場合 遅刻早退控除額=300,000円÷160時間×0.5時間=937円(1円未満切り捨て) 遅刻・早退時間の計算は1分単位が原則です。「30分未満は切り捨て」「15分単位で切り上げ」などの処理は、従業員に不利になる場合は認められません。一方で、従業員に有利となる処理は問題ありません。 欠勤控除・遅刻早退控除の注意点 最後に、欠勤控除・遅刻早退控除に関する、給与計算でよく出る注意点を解説します。 税金・社会保険料の計算や端数処理ルールを押さえる 税金や社会保険料は、欠勤控除後の実際に支給した賃金額をもとに計算します。控除前の金額で計算してしまうと、差引支給額に誤りが生じるため注意が必要です。 また、1円未満の端数については、労働者に不利益とならないよう、原則として切り捨てで処理しましょう。四捨五入や切り上げの場合、実際の不就労時間を超えて賃金を控除することとなり、ノーワーク・ノーペイの原則に反する可能性があるため、避けるのを推奨します。 就業規則の記載と周知を行う 欠勤控除・遅刻早退控除を行うためには、就業規則や賃金規程に定め、従業員へ周知しておくことが前提です。根拠なく控除を行うと賃金未払いとみなされるリスクがあります。 また、基本給だけでなく、役職手当・職務手当・資格手当などの各種手当を控除の対象とするかどうかも、規程に明確に記載しておく必要があります。対象手当の範囲があいまいであると、従業員トラブルの原因になるため注意しましょう。 最低賃金を下回らない 欠勤控除を行った結果、実際に支払う1時間あたりの賃金が最低賃金を下回る場合は、違法となります。特に注意が必要なのは、月給が最低賃金水準に近いケースです。 最低賃金は「実際の賃金額÷実労働時間」で判断される一方、欠勤控除を「月給÷月の所定労働日数」で計算している会社の場合、控除額が相対的に大きくなり、時間単価が下がってしまうことがあります。 【具体例】 東京都(最低賃金1,226円)で月平均所定労働時間160時間の会社の場合 最低賃金ベースの月給目安=1,226円×160時間=「196,160円」 月給が196,160円の従業員が、平均所定労働日数21日の月に1日(8時間)欠勤すると ● 欠勤控除額=196,160円÷21日×1日=9,340円 ● 支給額=196,160円-9,340円=186,820円 ⇒時間当たり賃金は、186,820円÷160時間=約1,167円となり、最低賃金を下回ってしまいます。 このように、意図せず最低賃金割れが発生することがあります。月給水準が最低賃金付近の従業員がいる場合は、計算方法を含めて慎重に設計・確認することが重要です。 遅刻早退控除と残業代は相殺できない 遅刻した日に長く働いたとしても、遅刻控除と残業代を相殺することはできません。 【具体例】 所定労働時間:9:00~18:00(休憩1時間、実働8時間)の従業員が1時間遅刻し、10:00~20:00まで働いた場合、次のように整理されます。 ● 9:00~10:00 → 1時間遅刻により不就労のため遅刻早退控除 ● 10:00~18:00 → 定時内の労働(休憩1時間、実働7時間) ● 18:00~19:00 → 法定労働時間(1日8時間)以内の残業(割増賃金不要) ● 19:00~20:00 → 法定労働時間を超える残業(割増賃金25%以上が必要) このように、遅刻早退控除と残業の取扱いはそれぞれ別に考える必要があります。遅刻した時間分を、残業した時間で相殺することはできませんので注意しましょう。 まとめ 欠勤控除や遅刻早退控除は、ノーワーク・ノーペイの原則に基づく正当な仕組みですが、運用を誤ると法令違反やトラブルの原因になります。就業規則や賃金規程を整備し、計算方法を明確にしておくことが重要です。 給与計算の正確性を高めるためには、勤怠管理を適切に行い、そのデータを漏れなく給与計算に反映させることが不可欠です。 業務効率化の観点からも、勤怠管理から給与計算、Web明細、さらには年末調整までを一元管理できるレコルの活用を検討してみてください。勤怠データと連携した給与計算の自動化により、計算ミスや確認作業の負担を大幅に削減できるでしょう。 レコルの給与計算オプションについてもっと知る プロフィール 内山 美央(特定社会保険労務士) 社会保険労務士法人MIO Partners 代表社員 HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 新卒3年目で社会保険労務士資格を取得。ITベンチャーでの勤怠管理システムの営業・導入コンサルティング経験を経て、大手事業会社の人事部にて労務管理や人事業務のDX推進に携わる。独立後は「労働時間管理のプロフェッショナル」として、HRテックの知見を強みに、人事システムの選定・導入支援から制度設計まで、働き方の改善を入り口に、会社に寄り添った長期視点での人事労務サポートを提供している。 https://mio-partners.jp/

「タイムカードの集計が大変…」 「直行直帰やテレワークの勤怠管理がうまくできない…」 働き方が多様化した今、こうした課題は多くの企業で共通の悩みとなっています。 従来のタイムカードや手入力中心の勤怠管理では、どうしても「後からまとめて処理する」運用になりがちで、現場の実態とのズレが生まれやすくなります。 そこで注目されているのが、スマートフォンを活用した勤怠管理です。 本記事では、「スマホ打刻」を導入することで何が変わるのか、そしてレコルのスマホアプリでできることや実際の業務イメージを具体的に解説します。 なぜ今、スマホ打刻が選ばれているのか 勤怠管理において重要なのは、 「正確で、日々無理なく記録されること」です。 しかし従来のタイムカード運用では次のような課題がつきまといます。 「虫食い」状態のタイムカード: 外出や直行直帰が多いと、記録が空欄だらけになり、月末に思い出しながら埋める作業が発生する。 不透明な実労働時間: 自己申告では、実際にどこで何時まで働いていたかの客観的な証拠が残らない。 管理者の「確認待ち」ストレス: 従業員が拠点に戻るまで勤務表の回収や確認ができず、集計がストップしてしまう。 スマホ打刻は、こうした「記録の空白」と「管理のタイムラグ」を解消する手段として導入が進んでいます。 スマホ打刻で勤怠管理はどう変わるのか スマホで打刻できる勤怠管理システムを利用することで、 勤怠管理は「後から集計するもの」から「その場で記録するもの」へと変わります。 ここでは、具体的な変化を見ていきます。 その場で打刻でき、リアルタイムで記録が残る 外出先や移動中でも、その場で打刻できるため、正確な勤怠データを残せます。 営業職やドライバーなど外出が多い職種はもちろん、テレワーク中の従業員も、勤務場所からそのまま打刻が可能です。 また、業務の流れの中で自然に打刻できるため、打刻が習慣化しやすくなります。 万が一打刻漏れがあっても、その場で修正や申請ができるため、わざわざ帰社する必要もありません。 「どこで働いたか」も含めて記録できる スマホアプリでは、GPSの位置情報を打刻とあわせて取得できるため、 「誰が」「いつ」に加えて、「どこで」働いていたかも記録できます。 これにより、 直行直帰や外出先での勤務の可視化 代理打刻などの不正防止 といった効果が期待できます。 生体認証打刻などの専用機器を導入しなくても、スマートフォンだけで客観的な記録を残せる点は大きなメリットです。 集計・確認の負担を大幅に軽減できる タイムカード運用では、打刻データの回収、転記や計算、不備の確認といった手作業が発生し、特に月末に負担が集中しがちです。 一方、勤怠管理システムを導入すると、打刻データは自動で集計されるため、ミスのリスクや確認作業の手間を大幅に減らすことができます。 さらにスマホアプリを活用すれば、従業員自身がその場で勤務状況を確認し、修正や申請まで行えるため、 「管理者だけが対応する運用」から「現場で完結する運用」へと変化します。 結果として、月末に作業が集中することもなくなり、バックオフィスの負担軽減につながります。 レコルのスマホアプリでできること レコルのスマホアプリは、各社員が無料の専用アプリをインストールして打刻します。(Android/iOS共に対応)スマホアプリは以下の機能があり、日々の勤怠管理をスマホで完結できます。 打刻ボタンのカスタマイズや、利用機能の制限設定ができるため、企業ごとの運用に合わせた柔軟な使い方が可能です。それぞれの機能について詳細をご紹介します。 スムーズな打刻(GPS対応) アプリを開いてボタンをタップするだけで打刻が完了します。さらに、打刻時の位置情報(GPS)も取得できます。 また、出勤・退勤だけでなく、 「休憩」「外出」など、運用に合わせた打刻ボタンの追加やカスタマイズも可能です。 打刻時にメモを残すことで、現場の状況もあわせて記録でき、後からの確認や、やり取りの手間削減につながります。 操作がシンプルなため、現場でも定着しやすい設計です。 ▼打刻の動画イメージはこちら リアルタイムな勤務状況の見える化 スマホで打刻した情報は、即座にクラウド上の勤務表へ反映されます。 打刻漏れや時間外などのアラートが発生した場合、本人のスマホアプリにプッシュ通知を出すことも可能です。 従業員側のメリット 今月の勤務時間・残業時間をいつでも確認できる 働きすぎの防止や自己管理につながる 管理側のメリット 離れた場所からでも勤務状況を把握できる 遅刻や未打刻などの状況にもすぐ気づける 日々の勤務状況が見えることで、早めの対応がしやすくなります。 また、自身の勤務表の締め(確定)作業もスマホアプリで可能です。 打刻修正や各種申請にも対応 打刻修正などの勤務表編集や各種申請もスマホから行えます。 ※編集には編集権限付与が必要です。 勤務修正・各種申請が可能 管理者による承認もスマホアプリから可能 プッシュ通知で対応漏れを防止 外出の多いマネージャー層でも、移動中に承認業務を完結でき、後回しになりがちな対応をその場で処理できます。 給与明細の確認もスムーズに 給与計算オプションを利用すれば、給与明細、賞与明細、源泉徴収票もスマホアプリから確認できます。 従業員側のメリット 勤怠と同じアプリで確認でき、複数アプリを使い分ける必要がない 過去分の明細をいつでも確認でき、紛失リスクも低減する プッシュ通知で明細の公開に気づきやすい 管理側のメリット 勤怠と同じアプリのため、操作説明の手間が増えない レコルなら自身の勤務表閲覧、申請、給与明細の閲覧用にスマホアプリを利用し、スマホアプリからの打刻はできないようにする、といった運用も可能です。 例えばPCを支給していない企業で「打刻は社内の共用PCに限定したいが、給与明細は個人のスマホで見せたい」といった企業にも選ばれています。 レコルのスマホアプリを使った業務イメージ(営業職の例) 日常業務の流れの中で自然に使えることが、レコルのスマホアプリの特長です。 朝:直行時の打刻 出社せずにそのまま現場へ向かう場合でも、スマホから打刻できます。 ワンタップで出勤打刻 位置情報も自動で記録 ⇒「打刻のために出社する」というムダがなくなります 日中:外出先での業務 訪問や移動の合間に、その場で情報を記録できます。 外出・休憩の打刻 交通費を申請 ⇒後からまとめて入力する必要がなくなります 夕方:直帰時の打刻 業務終了後、その場で退勤打刻が可能です。 移動中や訪問先から退勤打刻 勤務時間がリアルタイムで確定 ⇒打刻のために会社へ戻る必要がありません 随時:勤務状況の確認 スマホから自分の勤務状況をいつでも確認できます。 残業時間の確認 打刻漏れのチェック ⇒自己管理の意識向上にもつながります 必要に応じて:申請・修正 その場で申請・修正まで完結できます。 打刻修正・各種申請 承認対応(管理者) ⇒対応の滞留を防ぎ、業務がスムーズに進みます まとめ スマホを活用した勤怠管理は、日々の記録を正確にし、管理のスピードを向上させます。 レコルならスマホアプリと他の打刻方法を組み合わせることも可能なので、多様な働き方に対応しながら、勤怠情報の集計の工数削減や、不正打刻対策や法令遵守につながるなどのメリットがあります。 「現場で本当に使い続けられるか」を確認するには、実際の運用に近い形で試してみるのが一番です。 レコルでは全機能を全て無料で30日間お試しいただけます。 ぜひ無料でお試しいただき、お客様のペースで検証を進めてみてください。 レコルを無料で試してみる

パート・アルバイトの社会保険は、「加入対象になるのか」「扶養内で働けるのか」といった疑問が多いテーマです。特に近年は、短時間労働者への社会保険適用拡大が進み、「106万円の壁」や企業規模要件の見直しが注目されています。 この記事では、現行の加入条件を整理したうえで、2026年に向けた制度改正のポイントや実務上の注意点をわかりやすく解説します。 パート社員も社会保険加入の対象になる パートやアルバイトは社会保険に加入しなくてもよい、というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、現在法改正によって加入が必要となるケースが増えています。パート・アルバイトであっても、一定の条件を満たせば社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象となります。 従来は、社会保険は正規雇用者を中心とした制度でしたが、非正規労働者の増加や高齢化社会への対応から、現在は短時間労働者への適用拡大が段階的に進められています。まずは現行の加入条件を正しく把握し、そのうえで今後の法改正が何を変えるのかを整理していきましょう。 パート社員の社会保険加入条件とは パート社員が社会保険に加入するためには、「従業員数51人以上の企業」において、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。 週の勤務時間が20時間以上 給与が月額88,000円以上 2ヵ月を超えて働く予定がある 学生ではない 出典:社会保険適用拡大特設サイト|厚生労働省 これらの条件は、いずれか1つでも該当しない場合は加入対象外となります。 ただし、週30時間以上働くパート社員の場合は、「従業員数50人以下」の企業であっても加入対象となる点に注意が必要です。 ここでは2026年3月時点の社会保険加入条件を解説します。加入条件のうち「従業員数51人以上」の基準は法改正予定となっているため、現行制度とあわせて将来の動向も理解しておくことが重要です。 それでは、それぞれの条件について詳しく見ていきましょう。 従業員数51人以上の企業 現行制度では、従業員数51人以上の企業が社会保険適用拡大の対象となっています。ここでいう従業員数とは、「社会保険の被保険者数」を指します。 従業員数50人以内の企業では、以下の4つの条件をすべて満たす従業員であっても、原則として社会保険の加入対象とはなりません。 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満 所定内賃金が月額8.8万円以上 2ヵ月を超える雇用見込みがある 学生ではない ただし、週の所定労働時間が30時間以上など、正社員の4分の3以上の労働時間・日数を満たす場合は、従業員数50人以内の企業であっても加入対象となるため注意が必要です。 なお、この「企業規模要件」は今後の法改正で見直される予定です。段階的に縮小・撤廃される方向で議論が進んでおり、最終的にはすべての企業が対象となる見込みです。 週の所定労働時間が20時間以上 まずは、週の所定労働時間に関する条件です。フルタイム従業員の週所定労働時間が40時間の企業では、「週20時間以上」が社会保険加入の基準の1つとなります。 この「週20時間」は、実際の労働時間ではなく、雇用契約書に定められた所定労働時間で判断するのが原則です。 実務で判断に迷いやすいのは、次のようなケースです。 雇用契約上は20時間未満だが、繁忙期などで一時的に超えた場合:原則として加入義務は生じません。単発・臨時的な超過であれば、所定労働時間の変更とはみなされないためです。 雇用契約上は20時間未満だが、数ヵ月継続して20時間を超えている場合:実労働時間が2ヵ月連続で週20時間以上となり、今後も継続する見込みがある場合は、3ヵ月目から加入対象となります。 雇用契約上は20時間以上だが、実態は20時間未満が多い場合:契約上の所定労働時間が基準となるため、原則として加入対象となります。ただし、契約と実態が大きく乖離している場合は、雇用契約の見直しを行い、資格喪失の手続きが必要です。 なお、週の所定労働時間が30時間以上など、正規雇用者の4分の3以上の労働時間・日数を満たすパート社員に関しては、他の条件にかかわらず社会保険の加入対象となるので注意しましょう。 また、雇用保険にも週20時間以上の加入要件がありますが、ここで説明しているのは社会保険の基準となります。 所定内賃金が月額8.8万円以上 次に、賃金に関する条件です。所定内賃金が月額8.8万円以上であることが要件であり、いわゆる「106万円の壁」に関係しています。年収換算で約106万円(8.8万円×12ヵ月)となることから、このように呼ばれています。 所定内賃金とは、雇用契約書に記載される基本給と各種手当の合計額を指します。残業代や賞与、通勤手当、臨時的に支払われる賃金などは含まれません。 繁忙期などで、一時的に月額8.8万円を超える月があった場合でも、直ちに社会保険の加入対象となるわけではありません。週の所定労働時間の条件と同様に、実際に支払われた賃金が2ヵ月連続で8.8万円以上となり、今後も継続する見込みがある場合は、3ヵ月目から加入対象となります。 継続的に基準を上回る場合は加入対象となるため、パート社員では年収106万円を超えないようにシフト調整を行うケースも少なくありません。現行制度では就業調整が発生しやすい点が課題とされており、こうした背景から、今後の法改正では賃金要件の撤廃が予定されています。 2ヵ月を超える雇用見込みがある 雇用期間が2ヵ月以内の短期雇用の場合は、社会保険の加入対象外となります。ただし、状況が変わり契約更新を行うこととなった場合は、「雇用契約の更新が見込まれるに至った日(労使双方の合意があった日)」から加入対象となります。 また、2ヵ月以内の雇用契約であったとしても、雇用契約書などに「契約更新の可能性あり」と明示している場合は、雇用見込みがあるとみなされ、加入対象となります。短期契約を繰り返すことで加入を回避しようとするケースは、行政の調査対象になることもあるため注意が必要です。 学生ではない 原則として、在学中の学生は社会保険の加入対象外です。ただし、休学中の学生や定時制・通信制の学生、社会人大学院生などは加入対象となります。また、卒業した後も引き続き雇用されることが決まっている内定者アルバイトも対象です。 学生証や在学証明書の確認など、採用時に就学状況をきちんと把握しておくことが重要です。特に長時間勤務する学生アルバイトについては、誤った判断をしないよう注意しましょう。 「社会保険適用拡大」が与えるパート社員への影響 社会保険の適用拡大は、パート社員の働き方に大きな影響を与えます。従来は扶養内で働くことを前提にしていた人も、今後は加入対象となる可能性が高いです。企業にとっても、人員配置や人件費への影響が避けられません。 ここでは、主な改正ポイントを整理し、どのような変化が想定されるのかを解説します。 企業規模要件を縮小・撤廃 企業規模要件は、2016年に従業員数501人以上の企業へ拡大されたことをのを皮切りに、2022年には101人以上、2024年10月からは51人以上の企業へと対象が広がっています。 出典:社会保険適用拡大特設サイト|厚生労働省 今後もさらに拡大を見込んでおり、企業規模要件は2035年まで10年かけて縮小されていき、最終的には撤廃される方向で検討されています。これまで対象外だった中小企業でも今後はパート社員の多くが加入対象となる可能性があります。 出典:社会保険の加入対象の拡大について|厚生労働省 企業としては、人件費だけでなく、労務管理全体への影響を踏まえた対応が求められるでしょう。 賃金要件(106万円の壁)が撤廃予定 「106万円の壁」として知られる月額8.8万円以上の賃金要件も、2025年度の年金制度改正により撤廃の方針が示されています。撤廃時期は、全国の最低賃金が1,016円以上となる状況を踏まえて判断され、現時点では2026年10月頃が見込まれています。 出典:社会保険の加入対象の拡大について|厚生労働省 これまで「社会保険料の負担を避けたい」という理由から、年収106万円を超えないようシフトを調整する就業調整が広く行われてきました。しかし企業にとっては、人材を確保できているにもかかわらず労働時間を増やせないというジレンマがあり、人手不足の一因ともなっていました。賃金要件の撤廃は、こうした構造的な問題の解消を目的としています。 なお、106万円の壁が撤廃された場合でも、「130万円の壁」には引き続き注意が必要です。これは、配偶者や親の扶養に入れるかどうかを判断する基準であり、年収130万円を超えると扶養から外れ、本人が社会保険料を負担する必要が生じます。 個人事業所の適用対象を拡大 現在、個人事業所では、常時5人以上の従業員を使用する事業所のうち、社会保険の加入対象となるのは「法定17業種(※)」に限られていました。2029年10月からは、常時5人以上の者を使用する全業種の事業所を適用対象とするよう拡大されます。 ただし、2029年10月時点で既に存在している事業所は当分の間、対象外とされています。 ※法定17業種 ①物の製造、②土木・建設、③鉱物採掘、④電気、⑤運送、⑥貨物積卸、⑦焼却・清掃、⑧物の販売、⑨金融・保険、⑩保管・賃貸、⑪媒介周旋、⑫集金、⑬教育・研究、⑭医療、⑮通信・報道、⑯社会福祉、⑰弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業 パート社員の社会保険加入に関する疑問を解消! パート社員の社会保険については、制度そのものだけでなく、現場での対応に関する疑問も多く寄せられます。「加入したくない」「扶養内で働きたい」といった声に対して、企業はどのように対応すべきでしょうか。 ここでは、実務でよくある疑問について整理し、人事担当者が適切に説明できるポイントを解説します。 パート社員から社会保険に加入したくないと言われたら? 社会保険は、要件を満たせば原則として加入が必要であり、本人の希望だけで外すことはできません。そのため、「加入したくない」という申し出があった場合でも、制度上は加入が必要であることを丁寧に説明しなければなりません。 一方で、保険料負担が発生するため、従業員が不安を感じるケースも少なくありません。加入の可否だけでなく、メリット・デメリットを正しく伝え、納得感を持ってもらうことが重要です。 社会保険に加入する主なメリットとしては、次のような点が挙げられます。 病気やケガで働けない際に、傷病手当金として給与の約3分の2が支給される 出産のため会社を休んだ際に、出産手当金として給与の約3分の2が支給される 将来受け取れる年金額が増える 出典:社会保険加入のメリット|厚生労働省 一方、デメリットとしては、毎月の社会保険料が給与から天引きされることで手取り収入が減る点があります。特に配偶者の扶養に入っていた場合は、扶養から外れることで世帯全体の負担が増える可能性があります。 ただし、社会保険は医療や老後の生活を支える重要な制度であり、将来に備える側面もあります。目先の手取り額だけでなく、長期的なメリットも含めて説明することが大切です。人事担当者としては、従業員の誤解や不安を解消しながら、制度の正しい理解を促していくことが求められます。 パート社員が扶養内で働き続ける場合は月いくらまで? 「扶養内で働くには月いくらまでか」という質問には、まず「税の扶養(160万円)」か「社会保険の扶養(130万円)」かを切り分けて説明することが重要です。加えて、企業規模や勤務条件によっては106万円で社会保険加入となる点や、この基準が将来的に撤廃予定であることも伝えましょう。 実務では、時給と希望シフトから年収見込みを試算し、手取りが逆転しないかを確認する対応が有効です。単純に上限額を伝えるのではなく、複数の働き方を比較して提示すると納得感につながります。 社会保険に加入しない前提で働く場合は、雇用契約書で週の所定労働時間を20時間未満とするなどの調整が必要になります。ただし、実態が上回れば加入対象となるため、運用との整合性も重要です。 一方で、あえて労働時間を増やし、社会保険に加入したうえで手取りを伸ばす働き方も選択肢です。制度と改正動向を踏まえ、最適な働き方を提案することが人事担当者に求められます。 ダブルワークのパート社員は社会保険に加入する? ダブルワークの場合、社会保険の加入判定はそれぞれの勤務先ごとに独立して行われます。例えば、A社とB社の両方でパートとして働いており、どちらも週20時間以上・月8.8万円以上などの要件を満たす場合、原則として両方の事業所で社会保険の被保険者となります。 この場合、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所に提出し、主たる事業所を選択して保険料を按分計算する仕組みになっています。 実務上は、従業員が自身でダブルワークの状況を申告しないケースも多いため、採用時に副業・兼業の有無を確認し、制度について説明しておくことをおすすめします。 まとめ パート・アルバイトの社会保険は、条件を満たせば加入が必要であり、適用範囲は年々拡大しています。特に106万円の壁や企業規模要件の見直しは、働き方や人件費に大きな影響を与えるため、今後は制度変更を前提とした対応が不可欠です。 現行ルールと改正動向の両方を押さえ、従業員への適切な説明と運用体制の整備を進めていきましょう。 プロフィール 内山 美央(特定社会保険労務士) 社会保険労務士法人MIO Partners 代表社員 HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 新卒3年目で社会保険労務士資格を取得。ITベンチャーでの勤怠管理システムの営業・導入コンサルティング経験を経て、大手事業会社の人事部にて労務管理や人事業務のDX推進に携わる。独立後は「労働時間管理のプロフェッショナル」として、HRテックの知見を強みに、人事システムの選定・導入支援から制度設計まで、働き方の改善を入り口に、会社に寄り添った長期視点での人事労務サポートを提供している。 https://mio-partners.jp/

毎年3月から4月にかけて、新卒社員を受け入れる人事担当者は、入社手続きに追われます。 名刺の作成、労働条件の通知と労働契約の締結、就業規則の説明、福利厚生の案内など、やるべきことは多岐にわたりますが、なかでも注意を要するのが、雇用保険・社会保険の手続きです。 本記事では、新卒社員の入社時に人事担当者が対応すべき社会保険の手続きを、必要書類の収集から資格取得届の提出、マイナ保険証への対応まで、実務に沿って順序よく解説します。 社会保険料の発生タイミングや計算方法についても整理していますので、給与計算との連携確認にもお役立てください。 新卒社員の入社手続きの全体像 新卒社員を受け入れる際の入社手続きは、大きく「行政手続き」と「入社書類の回収」の2つに分けられます。 行政手続きとは、社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険・労災保険(労働保険)への加入手続きを指します。 これらは法令で定められた期限内に届出が必要であり、遅延すると資格の認定が遅れ、新入社員が医療機関を受診できない・給付が受けられないといったトラブルにつながります。 入社書類の回収とは、給与振込口座の届出、扶養控除等申告書の提出、マイナンバーの提供など、会社が業務を開始するうえで必要な書類を従業員から受け取ることです。 これらの書類に不備や漏れがあると、給与計算や年末調整に支障が生じるため、入社前に準備リストを送付して事前に案内しておくことが重要です。 なお、本記事は「社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続き」と「入社書類」に焦点を絞って解説します。雇用保険・労災保険(労働保険)の手続きについては別記事をご参照ください。 <関連記事> 労働保険とは?雇用保険・労災保険の違いを図解でわかりやすく解説 新卒社員の入社時に必要な書類一覧 入社時に提出を求める書類には、社会保険・税務手続きのために法令上必要なものと、会社が任意で求めるものの2種類があります。 特に新卒社員の場合、初めての就職であるため書類の意味を理解していないことも多く、「何のための書類か」を一言添えて案内すると、漏れや記載ミスの防止につながります。 社会保険・税務手続きに必要な書類 社会保険や税務の手続きに必要な書類は次のとおりです。 書類名 主な用途・注意点 マイナンバーを確認できる書類 マイナンバーカード、通知カード、住民票の写し(マイナンバー記載)のいずれか。社会保険、雇用保険、税金関係の手続きに必要(被扶養者がいる場合には被扶養者分も必要) 基礎年金番号通知書(年金手帳) 厚生年金の加入手続きに必要。マイナンバーで代替可 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 源泉所得税額の計算のために必要。扶養家族がいる場合は記載が必要 源泉徴収票 入社年にアルバイト等で収入があった場合は提出が必要 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 健康保険、厚生年金の加入手続きに必要 健康保険被扶養者(異動)届 被扶養者(配偶者・子など)を社会保険の扶養に入れる場合に提出。資格取得届と同時に提出する 国民年金第3号被保険者関係届 扶養している20歳以上60歳未満の配偶者がいる場合に必要。被扶養者(異動)届と同時に手続きする 内定者アルバイトや内定者インターンシップに取り組んでいた場合、その期間中に給与の支払いがあったときは、源泉徴収票の提出を求める必要があります。入社後の年末調整でその期間分の所得を通算するためです。 内定段階からインターンや就労を行っているケースが増えていることを踏まえ、収入があったかどうかを入社書類の案内時に確認しておくとよいでしょう。 任意で回収をする書類 法令上の義務ではありませんが、多くの企業が入社時に収集している書類も確認しておきましょう。 書類名 収集する主な理由 給与振込依頼書 給与・賞与の振込先を登録するために必要。通帳のコピーを受け取る会社も多い 住民票の写しまたは住民票記載事項証明書 氏名・住所・生年月日の確認用。マイナンバーが記載されているものを使うケースもある 卒業証明書 採用条件として学歴確認が必要な企業が求める。内定時の説明と一致しているかの確認にも使用する 身元保証書 身元の確実性と万が一の損害発生時の補填を担保するための書類。保証人には親や配偶者など親族を指定することが一般的で、署名・捺印して提出してもらう 健康診断書 採用時の健康状態の確認。法令上は入社後に健康診断を実施することが義務だが、入社前に提出を求める企業もある 入社誓約書 「入社にあたり、以下を守ります」 という形式で、秘密保持や会社規程の遵守等を記載し、署名してもらう 新卒社員の社会保険手続きの流れ 正社員として入社した新卒社員は、原則として入社日から健康保険および厚生年金保険の被保険者となります。社会保険の加入は従業員の希望や同意を必要とするものではなく、加入要件を満たした時点で自動的に適用されます。 一般的な正規雇用の新卒社員であれば加入要件を満たすことがほとんどですが、念のため加入条件を確認しておきましょう。 社会保険の加入条件の詳細は別記事をあわせてご参照ください。 社会保険の加入条件とは?2026年法改正ポイントを解説 社会保険の加入条件・対象者を確認する 健康保険・厚生年金保険の適用事業所に常時使用される従業員は、原則として社会保険に加入します。通常の新卒正社員は入社日を資格取得日として届け出ます。 ただし、内定者アルバイトや内定者インターンシップとして入社前から就労していた場合は注意が必要です。 【内定者アルバイトの場合】 内定者がアルバイトとして雇用契約を締結し、週の所定労働時間が通常の従業員の4分の3以上(または一定の要件)を満たす場合、正式入社前からすでに社会保険の被保険者となる可能性があります。加入状況を確認し、正式入社時には改めて資格を切り替える処理が必要になることがあります。 【内定者インターンシップの場合】 インターンシップで実際に業務指示を受け、給与が支払われていた場合は、労働者性があると判断されることがあります。この場合も社会保険の加入義務が生じる可能性があるため、指揮命令関係の有無や報酬の性質を慎重に確認してください。 社会保険の加入手続き「資格取得届」を提出する 対象者の確認ができたら、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出します。 項目 内容 様式 日本年金機構ホームページからPDF・Excelでダウンロード可。被扶養者がいる場合は「健康保険被扶養者(異動)届」も同時に提出する。 提出期限 資格取得日(入社日)から5日以内 提出先 協会けんぽ加入の場合:所轄の年金事務所(持参)または事務センター(郵送)、もしくはe-Gov等による電子申請健康保険組合加入の場合:加入している健康保険組合 主な記載事項 事業所整理番号、事業所番号、被保険者の氏名・生年月日・性別・住所(住所はマイナンバーを記入した場合は原則として記入不要)、マイナンバーまたは基礎年金番号、取得(該当)年月日、標準報酬月額の見込み額など 2024年12月2日以降の追加事項 資格取得届に「資格確認書発行要否」欄が追加されている。マイナ保険証を利用しない新入社員については「発行が必要」にチェックを入れて提出する 4月に新卒社員が一斉入社する場合、複数名分の資格取得届をまとめて提出することになります。入社直前までに書類の準備を整え、入社日当日または翌日には提出できるよう段取りを組んでおきましょう。 なお、提出が5日の期限を過ぎてしまった場合でも、協会けんぽへの届出では遡及認定が可能です。ただし健康保険組合は各規約によって対応が異なるため、加入する健康保険組合に確認しておきましょう。 参考:就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き|日本年金機構 資格情報を新入社員に案内する 資格取得届が受理されると、新入社員は健康保険・厚生年金保険の被保険者として登録されます。2024年12月2日から従来の健康保険証の新規発行が終了したため、入社後に配付するものは「健康保険証」ではなく、次のいずれかとなります。 手段 内容 マイナ保険証 マイナンバーカードを健康保険証として利用登録(紐づけ)したもの。利用登録は従業員本人がマイナポータルや医療機関・薬局の窓口に設置されている顔認証付きカードリーダー等で行う。入社時にマイナンバーを届け出ていないとマイナ保険証として利用できない点に注意 資格確認書 マイナンバーカードを取得していない、またはマイナ保険証の利用登録をしていない従業員が医療機関で受診する際に使用する書類。資格取得届提出時に「資格確認書発行要否」欄にチェックを入れることで、会社経由で交付される。有効期限は最長5年(保険者による) 資格情報のお知らせ マイナンバーと健康保険資格の紐づけが完了した場合に交付される書類。マイナ保険証とセットで医療機関のカードリーダーが使えない場合などに利用する。これ単体では受診不可 通常、日本年金機構での資格取得登録完了から「5営業日」ほどでマイナ保険証が使用できる状態になりますが、4月1日入社はとくに届出件数が集中する繁忙期ですので、「5〜10営業日」と少し余裕を持った案内をするのが現実的です。 また資格確認書は、通常1週間ほどで発行され、事業主宛に発送されますが、入社が集中する4月は、2週間から1か月近くかかることもあります。資格確認書が届く前でも、マイナ保険証の利用登録が完了していれば受診は可能です。 新入社員にとって、マイナ保険証が使えず、資格確認書も交付されていない=健康保険証がないことは、入社直後の不安につながりやすいポイントです。 資格取得手続き完了前に医療機関を受信する場合 もしその間に、早急に医療機関で受診する必要がある場合には、事業主または被保険者が「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」を事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出することにより、窓口で「健康保険被保険者資格証明書」が交付されますので、それを利用することで3割負担で受診が可能となります(全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合)。健康保険組合の場合は、各健康保険組合にご確認ください。 マイナ保険証、資格確認書、資格証明書もない場合は一旦、医療機関の窓口で10割負担で受診し、後日、加入している健康保険(協会けんぽ等の保険者)に療養費支給申請を行い、本来の自己負担分を超えた金額を払い戻してもらいます。ただし、同じ月内であれば医療機関が返金してくれる場合もあるため、まず医療機関に確認するのが最短ルートです。 参考:従業員に健康保険被保険者資格証明書を交付するときの手続き|日本年金機構 新卒社員の社会保険料はいつから発生する? 新入社員の社会保険料をいつから差し引くのかは、給与計算実務において特にミスが起きやすいポイントです。 「入社した月から引くのか、翌月から引くのか」という疑問が生じやすく、給与支払いのタイミング(当月払いか翌月払いか)によっても対応が変わります。 【原則】社会保険料は翌月徴収 健康保険法および厚生年金保険法では、社会保険料は「その月の末日に被保険者の資格を有する者」について、「翌月」に徴収することが原則とされています(健康保険法第167条、厚生年金保険法第84条)。 具体的には、「○月分の社会保険料は翌月に控除する」というルールです。たとえば4月1日入社であれば、4月分の保険料は5月に支払われる給与から差し引かれます。 「翌月徴収」とは、毎月の給与支払い日が何月何日かに関わらず、「何月分の保険料か」という月を基準に考えます。ここを混同するとミスの原因になるため注意が必要です。 4月入社・給与が当月払いの場合 4月分の給与を4月末日に支払う会社(当月払い)の場合、社会保険料の控除タイミングは次のようになります。 給与支払い 社会保険料の控除内容 4月末払い(4月分給与) 控除なし(4月分保険料は5月払い給与から控除) 5月末払い(5月分給与) 4月分の社会保険料を控除(初回控除) 4月末に支払われる初任給から社会保険料は差し引かれないため、初任給は「手取りが多い」ように見えます。この点について新入社員から疑問が出ることがあるため、入社時のオリエンテーションなどで事前に説明しておくとよいでしょう。 4月入社・給与が翌月払いの場合 4月分の給与を5月末日に支払う会社(翌月払い)の場合、社会保険料の控除タイミングは次のようになります。 給与支払い 社会保険料の控除内容 5月末払い(4月分給与) 4月分の社会保険料を控除(初回控除) 6月末払い(5月分給与) 5月分の社会保険料を控除 翌月払いの場合、4月に入社して5月末に初めて給与が支払われる際に、4月分の社会保険料も同時に差し引かれます。 初任給の手取り額が少なく感じられる場合があるため、こちらも事前に案内しておくと従業員の誤解を防げます。 新入社員の社会保険料はいくら?計算方法を解説 社会保険料の計算は、「標準報酬月額」を基礎として行います。 標準報酬月額とは、実際の報酬月額を一定の等級表に当てはめて決定した金額のことです。毎月支払われる基本給・各種手当・交通費など、定期的・継続的に支払われる報酬が対象となります(賞与・実費弁償的なものなどは除く)。 入社時(資格取得時)は、「資格取得時決定」として、入社日前後に把握できる報酬月額の見込み額をもとに標準報酬月額を決定します。 以下では、新卒初任給の目安として報酬月額22万円の場合を例に、健康保険料と厚生年金保険料のそれぞれの計算方法を解説します(令和8年度の保険料率を使用。なお保険料率は都道府県・年度によって異なります)。 健康保険の保険料と計算式 健康保険の保険料は、標準報酬月額に健康保険料率を乗じて計算します。保険料は会社と従業員が折半して負担します。 【計算式】 健康保険料(月額)= 標準報酬月額 × 健康保険料率 ÷ 2(本人負担分) 【計算例(報酬月額22万円の場合)】 報酬月額22万円 → 標準報酬月額220,000円(22万円の等級) 例)東京都・令和8年度の協会けんぽの保険料率:9.85%(介護保険料率は別途、40歳未満のため非該当) 健康保険料(全額)= 220,000円 × 9.85% = 21,670円 従業員負担分(折半)= 21,670円 ÷ 2 = 10,835円 ※健康保険料率は都道府県および加入する健康保険(協会けんぽ・健保組合)によって異なります。 最新の保険料率は協会けんぽの各支部ホームページ、または加入している健康保険組合でご確認ください。 参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)保険料率 参考:協会けんぽ(東京)令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表 厚生年金の保険料と計算式 厚生年金保険の保険料は、標準報酬月額に厚生年金保険料率を乗じて計算します。 こちらも会社と従業員が折半して負担します。厚生年金保険の保険料率は、令和29年9月以降、18.3%で固定されています(令和8年度も同率)。 【計算式】 厚生年金保険料(月額)= 標準報酬月額 × 18.3% ÷ 2(本人負担分) 【計算例(報酬月額22万円の場合)】 標準報酬月額:220,000円 厚生年金保険料(全額)= 220,000円 × 18.3% = 40,260円 従業員負担分(折半)= 40,260円 ÷ 2 = 20,130円 ※実際の徴収額は、端数処理(50銭以下切捨て・50銭超切上げ)の方法によって前後する場合があります。 参考:厚生年金保険料率(日本年金機構) なお、健康保険、厚生年金保険に加えて40歳以上の場合は介護保険料(全国一律・毎年度改定)の徴収が必要となります。新卒採用では40歳未満が多いため省略しますが、介護保険料についても社内の給与システムで年齢管理と料率の確認を行ってください。 まとめ 新卒社員の社会保険手続きは、入社日を資格取得日として「5日以内に被保険者資格取得届を提出する」ことが基本です。2024年12月2日以降は健康保険証の新規発行がなくなり、マイナ保険証を持たない新入社員には資格確認書を交付する対応が必要になっています。手続き漏れや案内不足が新入社員の不安につながらないよう、入社前からの準備と丁寧な案内が欠かせません。 また、社会保険料は「翌月徴収」が原則であり、給与の支払い方式(当月払い・翌月払い)によって初回控除のタイミングが変わります。給与計算との連携を事前に確認し、新入社員への説明もセットで行いましょう。本記事が4月の入社シーズンに向けた実務準備の参考になれば幸いです。 プロフィール 長澤 千晴(特定社会保険労務士/産業カウンセラー/ライター) HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 大学卒業後、大手旅行会社に入社し、団体旅行営業・添乗業務を担当。その後、出版業界に転身し、月刊誌・隔週刊誌・週刊誌及び書籍・ムックの編集に従事。 週刊誌在籍時代は、事件記事、ビジネス記事、実用記事、エンタメ記事、スポーツ記事などを幅広く担当。 その後、管理部門への異動を機に社会保険労務士試験の勉強を開始。2011年、合格。2014年、特定付記。総務・人事の責任者として労務管理、採用、研修、法改正対応、就業規則改正、人事制度・賃金制度変更などを手掛ける。令和8年、社会保険労務士として独立 https://jinjiwriter.com/author/Chiharu

アップデート情報

いつもレコルをご利用いただきありがとうございます。 2026年3月16日(月)にレコルをバージョンアップしました。 (勤怠管理機能のバージョンアップはこちら) 子ども・子育て支援金制度に対応 保険料率に「子ども・子育て支援金率」を追加 事業所設定 > 社会保険 > 健康保険に「子ども・子育て支援金率」を追加しました。 ※協会けんぽの場合、支援金率は自動で反映されます ※組合健保の場合、2026年4月の適用年月を追加する必要があります 【事業所の編集画面】 控除項目に「子ども・子育て支援金」を追加 給与/賞与の控除項目に「子ども・子育て支援金」を追加しました。 令和8年4月分の保険料より「子ども・子育て支援金」が自動計算され、従業員に公開する給与明細/賞与明細にも表示されます。 【給与詳細画面】 ※ リリース直後から「子ども・子育て支援金」の項目が詳細画面上に表示されますが、 0円の時は表示しない初期設定になっているため、3月の給与/賞与明細には出力されません。 【控除項目の編集画面】 ※「子ども・子育て支援金」の健康保険料への合算について 控除項目「子ども・子育て支援金」の編集画面にて有効のチェックを外した場合、 子ども・子育て支援金を健康保険料に含むかたちで金額が計算されます。 支援金を健康保険料に含める場合はご利用ください。 詳細につきましては「子ども・子育て支援金について」をご参照ください。 「子ども・子育て支援金」の事業主負担項目を追加 下記の画面および出力するファイルに「子ども・子育て支援金」の事業主負担項目を追加しました。 ・給与/賞与の詳細画面 ・支給控除一覧 ・賃金台帳 小改善 非居住者の所得税の自動計算に対応 利用者情報において居住者区分を「非居住者」に設定した場合に 所得税の計算方法として「税率(20.42%)で計算/計算しない」を選択できるようになりました。 これにより、非居住者の所得税を税率(20.42%)で自動計算できるようになりました。 【利用者情報-所得税区分編集画面】 また、これに伴い所得税徴収高計算書の集計対象者に関する仕様を変更します。 【変更前】確定済みの給与/賞与の「課税支給額」が1円以上の利用者を対象にする 【変更後】確定済みの給与/賞与の「課税支給額」が1円以上の非居住者を除いた利用者を対象にする 最後に レコルは今後も新機能のリリースや機能改善を継続していきます!また、ご利用のお客様の声を積極的に取り入れてまいりますので、機能やUIの使い勝手などどんなことでもお気軽にサポートまでお伝えいただけますと幸いです。

アップデート情報

いつもレコルをご利用いただきありがとうございます。 2026年3月16日(月)にレコルをバージョンアップしました。 (給与計算機能のバージョンアップはこちら) 集計項目の拡張 曜日/祝日、期間の集計オプションを追加 集計項目設定で日付形式(出勤日/所定休日/法定休日)での集計に加え、曜日/祝日および特定期間での集計ができるようになりました。 ・土日/祝日の勤務時間を集計する ・年末年始期間など特定期間の勤務時間を集計する 【集計項目の設定画面】 計算式項目の新設 集計項目に計算式項目を設定できるようになりました。 これにより、任意の計算式で時間や数値の集計ができるようになりました。 ・休日出勤回数に応じた手当支給額を計算する ・労働時間と休憩時間を合算した拘束時間(在社時間)を計算する 【計算式項目の設定画面】 【計算式設定画面】 集計項目の詳細な設定手順はオンラインマニュアル「勤務表の集計項目を設定する」をご参照ください。 申請ルートの一括設定/ファイル出力に対応 申請ルート設定の現在登録されている設定情報をファイル出力できるようになりました。 また、出力したファイルを編集して取り込むことで一括で登録/更新/削除することができるようになりました。 これにより、出力したファイルをバックアップとして保存したり、複数の申請ルートをまとめて登録することができます。 【申請ルート設定画面】 【申請ルートの一括設定画面】 詳細な手順につきましてはオンラインマニュアル「申請ルートをインポートで一括設定する」をご参照ください。 打刻ボタン設定の拡張 打刻ボタンの設定で「勤務設定」を指定できるようになりました。 これにより、打刻時にあらかじめ設定した「勤務設定」に更新することができます。 ・「早番」ボタンで出勤打刻時に勤務設定を「早番勤務」に変更する ・「○○店」ボタンで出勤打刻時に勤務設定を「○○店勤務」に変更する 【打刻ボタンの編集画面】 有給休暇の取得状況・取得率のファイル出力に対応 勤務分析の有給休暇タブにて有給休暇の取得状況・取得率をファイル出力できるようになりました。 出力したファイルは、集計用データとして利用できるほか、一覧としても確認できます。 【勤務分析の有給休暇画面】 仕様変更 有給休暇の消化順に関する仕様変更 レコルの有給休暇の消化順(有休残り日数の集計)について、以下の仕様変更を行いました。 これにより、就業規則の変更等で有給休暇の消化順が変更となった場合でも、確定済みの勤務表においては有休残り日数に影響を与えることなく消化順オプション(※)を変更することができます。 (※)環境設定「有休の付与日を新しい方から消化する」オプション 【変更前】消化順オプションを変更した場合、勤務表の確定に関係なく変更後の設定で有休残り日数を再集計 【変更後】消化順オプションを変更した場合、勤務表の確定時点の設定で有休残り日数を再集計 ※なお、本仕様変更によりご利用中の皆さま(有休残り日数など)への影響はございません 小改善 システム管理者による代理承認に対応 承認者が退職や休職等の理由により承認できなくなった申請をシステム管理者が代理で承認できるようになりました。 システム管理者が代理承認を行う場合は、[環境設定]の[全般]タブにて「システム管理者の代理承認を許可する」オプションを有効にしてください。 【環境設定画面】 【申請の承認画面】 作業場所の初期表示に対応 [管理者機能]の[個人設定の管理]にて「作業場所」を設定できるようになりました。 これにより、あらかじめ設定しておいた作業場所を出勤日に初期表示することができます。 【個人設定の管理画面】 申請区分設定 > 申請ルートの設定のUI改善 [申請区分設定]の[申請ルートの設定]画面のUIを改善し、 キーワード検索/ページ切り替え/チェックボックスの一括選択ができるようになりました。 【申請ルートの設定画面】 最後に レコルは今後も新機能のリリースや機能改善を継続していきます!また、ご利用のお客様の声を積極的に取り入れてまいりますので、機能やUIの使い勝手などどんなことでもお気軽にサポートまでお伝えいただけますと幸いです。