製品資料ダウンロード

ご相談・お問い合わせ

無料お試し登録

MENU

知ってますか? 所定労働時間と法定労働時間の違い

所定労働時間と法定労働時間

社員A

この前、2時間残業したのに、割増賃金が1時間分しか支払われて無いんだけど…間違っていませんか?

担当者B

当社の『所定労働時間』は7時間なので、最初の1時間は割増賃金の支払いはしていません。しかしながら、『法定労働時間』を超えた分については25%の割増賃金を支払っています。

社員A

同じ日に残業しているのに支払われる賃金が違うのはどうしてなんだろうか??

会話の中に出てきた『所定労働時間』と『法定労働時間』は似て非なるものです。この2つの違いが分からないとAさんの疑問は解決しません。

『所定労働時間』とは、労働者が働くこととなっている時間のことです。就業規則や雇用契約書に記載されている始業時間から終業時間までの時間から休憩時間を引いた時間のことをいいます。例えば、始業時間が9:00、終業時間が18:00、休憩時間が1時間であれば、所定労働時間は「8時間」となります。

『法定労働時間』とは、労働基準法第32条に規定されている労働時間の限度のことです。

労働基準法第32条
第1項 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時を超えて労働させてはならない。
第2項 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日ついて8時間を超えて、労働させてはならない。

とそれぞれ規定されています。この1週間または1日の労働時間の上限である『1週間40時間』、『1日8時間』のことを法定労働時間と言います。

労働基準法は、最低限度の基準を定めている法律ですから,『法定労働時間』を超える労働時間を『所定労働時間』として定めることは許されません。つまり,「所定労働時間」を1日9時間や1週50時間と定めることは許されないということです。仮に、法定労働時間を超える所定労働時間を定めていたとしても,法定労働時間を超える部分は無効となります。上記の例でいうと、1日「9時間」と定めていたとしても法定労働時間である「8時間」が優先されるということになります。
なお、業種・規模によって1週間の法定労働時間が例外的に「44時間」が適用されるケースや「変形労働時間制」による例外もあります。

 

「所定労働時間」≠「法定労働時間」の場合は注意が必要

「所定労働時間」と「法定労働時間」が違うものだということは、当然ですが両者が一致するとは限らないということになります。所定労働時間と同じ時間の法定労働時間が定められることもあれば,所定労働時間とは異なる時間の法定労働時間が定められることもあります。
先の会話に出てくるX社では、所定労働時間は「7時間」、法定労働時間は「8時間」ということで「所定労働時間」とは異なる時間の「法定労働時間」が定められています。

この「所定労働時間」≠「法定労働時間」場合に、Aさんの疑問が生じることがあるのです。

一般的に『残業』とは、労働者が働くことを決められている時間=『所定労働時間』を超えて働くことをいいます。
しかしながら、労働基準法において、割増賃金の支払いが義務付けられているのは『法定労働時間』を超えた場合となっています。
この割増賃金の支払いが義務付けられていない残業を「法定内時間外労働」といい、割増賃金の支払いが義務付けられている残業を「法定外時間外労働」といいます。
ちなみに、「法定外時間外労働」の際に支払う割増賃金の割増率は、「25%以上50%以下の範囲」とされています。

これらを踏まえた上で、Aさんの疑問を解消するために、先の会話を解説します。

X社は、1日の『所定労働時間』が「7時間」となっているところ、Aさんは、「2時間残業」したとのことです。つまりその日は「9時間」働いたということになります。
残業を始めて最初の「1時間」は、「法定内時間外労働」となりますので割増賃金を支払う必要がありません。しかしながら、『法定労働時間』である8時間を超えてからは「法定外時間外労働」となりますので、9時間までの「1時間分」については、25%以上50%以下の範囲の割増賃金を支払わなければならないのです。
これを図で示すと以下の通りとなります。

所定労働時間

 

なお、X社は、法律通りの運用をしており、「法定内時間外労働」に対しては割増賃金の支払いをしていません。もちろん、「法定内時間外労働」に対して割増賃金を支払うことは、法律の定めを上回ることになりますので、問題ありません。いずれにしろ、割増賃金を支払うのか、支払わないのかは就業規則等に規定しておかなければなりません。X社の場合はこんな感じに就業規則に定めることとなります。

就業規則記載例)法定外時間外労働に対してのみ割増賃金を支払う場合
時間外勤務手当は、法定労働時間を超えて勤務した時間数に対して、次の算式により計算して支給します。なお、所定労働時間を超えて法定労働時間までの勤務に対しては、「1.25」を「1.00」に読み替えて計算します。

時間外

また、所定労働時間を超えた時間に対して割増賃金を支給する場合は次のように就業規則に定めることとなります。

就業規則記載例)所定労働時間を超えた時間に対して割増賃金を支払う場合
時間外勤務手当は、所定労働時間を超えて勤務した時間数に対して、次の算式により計算して支給します。

時間外

 

所定労働時間は明確にしておくこと

所定労働時間の基となる「始業時刻」「終業時刻」「休憩時間」については、採用時に書面などで明示しなければならない『労働条件』となっています。なお、「所定労働時間」≠「法定労働時間」の場合の割増賃金の計算方法についても書面等による明示が義務付けられている事項となっています。
明示の方法としては、「労働条件通知書」として労働者に書面を交付する方法があります。しかしながら、後のトラブルを避けるために労働者、使用者双方が内容を確認した上で、捺印をして締結する「雇用契約書」による方法をお勧めします。

労働基準法第15条
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

 

※明示しなければならない労働条件

(1) 労働契約の期間
(2) 就業の場所・従事する業務の内容
(3) 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換(交替期日あるいは交替順序等)に関する事項
(4) 賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締切り・支払の時期に関する事項
(5) 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

所定労働時間が日によって異なる働き方をしているケースもあるでしょう。この場合の記載方法をいくつか挙げておきます。

例1)曜日ごとに決められているケース
月、水、金曜日は9:00から18:00 休憩時間1時間
火、木曜日は10:00から18:00 休憩時間1時間

例2)シフト表で定めるケース
1日の所定労働時間は8時間以内とし、各日の始業、終業の時刻は前月末日までにシフト表によって定め、労働者に通知する。
なお、休憩時間は各日とも1時間とする。

昨今、働き方改革ということで所定労働時間を短縮する等の多様な働き方があります。この場合に、採用時の所定労働時間を変更することも考えられます。所定労働時間を変更する場合には、双方で明確にできるよう「書面」によって労働者に通知しておくべきです。もちろん、所定労働時間と法定労働時間が異なる場合には、割増賃金の対象となる時間も明確にしておきます。

 

勤怠管理レコル

 

プロフィール

飯野正明

特定社会保険労務士 明治大学大学院経営学修士

1969年生まれ。社会人生活は、社会保険労務士一筋「27年」。2010年に東京都中央区日本橋に、いいの経営労務管理事務所を設立。現在は、Be Ambitious社会保険労務士法人代表として、職員9名(うち特定社会保険労務士2名)ともに、大手企業から中小零細企業まで多くの企業の労務相談の円満解決に力を入れている。“相談者の頼れる用心棒”としてたのしめる職場づくりを目指している。 主な著書に『労働法の知識と実務Ⅱ』(共著、東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会編) 、『職場トラブル解決のヒント』(ギャラクシーブックス発行)などがある。

勤怠管理についてお困りのことはありませんか?

レコルは勤怠管理システムを開発・運用して10年の中央システム株式会社が運用する勤怠管理システムです。月100円で企業の勤怠管理に関するお悩みを劇的に改善致します。