年末調整後に修正が必要になったら?時期別の対処方法(年末調整のやり直し・確定申告)を解説

年末調整は、給与所得者について、1年間に源泉徴収された所得税額と、本来納めるべき年税額との差額を精算する手続きです。
給与支払者である会社が従業員に代わって行うもので、源泉徴収制度の一部として位置づけられています。
年末調整終了後、一定の期限内であればやり直し(年末調整の再調整)が可能で、一般に「再年調」と呼ばれることもあります。
この記事では、年末調整のやり直しが必要なケースや、確定申告で対応すべきケースを分かりやすく解説します。
目次
年末調整はやり直しできるのか

年末調整は、賃金台帳と照らし合わせながら、従業員の提出書類に基づいて控除適用の可否を判断する作業です。
提出書類に誤記載や記載漏れが判明した場合は、年末調整のやり直しが必要となります。
人事担当者のミスが発覚した場合も同様です。
また年末調整は、その年の最後の給与等の支払時に行うことになっています。
一方、さまざまな控除の適用可否の判定は、その年の12月31日の状況で行うため、年末調整作業の終了後、12月31日までに状況が変化した場合は、やはり年末調整のやり直しをすることになります。
ただし、いずれの場合も、やり直しができる期限は決まっており、従業員に対してその年の「給与所得の源泉徴収票」を発行する前、かつ翌1月31日までとなるため、ご注意ください。
2月以降に年末調整のやり直しが発覚した場合
年末調整のやり直しができるのは前述したように翌1月31日までです。
2月1日以降に修正すべき事実が発覚した場合は、社内では対応ができません。
該当の従業員にその旨を説明し、自ら確定申告をするように案内しましょう。

修正申告や更生の請求との違いは?
「年末調整の再調整」と似た用語に「修正申告」や「更生の請求」があります。
「修正申告」「更生の請求」は確定申告に関連する用語で、従業員本人が納税地を所轄する税務署(通常は住所地の税務署)に対して確定申告を行ったのち、修正すべき点があった場合に行うものです。
「修正申告」は確定申告後に、税額を少なく申告していたことが判明したときに、従業員本人が行う手続きです。
例えば、年末調整で控除を過大に受けていた場合や、本来申告すべき所得があった場合、修正申告書を提出することで、正しい額に訂正を行います。
2月1日以降は年末調整の修正ができないため、確定申告期限内に従業員本人が確定申告を行います。
その申告内容の誤りに気づいた際に実施するのが、修正申告となります。
「更生の請求」は確定申告後に、例えば医療費控除を申告し忘れたなどで、税額を多く申告していた(還付を受けられる)ことが判明したときに行う手続きです。確定申告をしていなかった場合でも「還付申告」をすることができます。

年末調整を修正する2つのケース
年末調整完了後に、やむを得ず、年末調整のやり直しをしなければいけないケースがあります。
その主なケースをご説明します。
申告内容に誤りや漏れ、計算ミスがあった場合
人事担当者や、申告した従業員の単純な誤記載や計算ミスがあった場合は、年末調整のやり直しが必要です。
例えば、従業員から俗に住宅ローン控除と呼ばれる「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除」の申告をし忘れていたため「追加で申告したい」との申し出があった場合などが挙げられます。
他にも、生命保険料控除等について、翌年1月31日までにその証明書類を提出することを条件として年末調整を行ったものの、その証明書類が期日までに提出されなかった場合は、書類がない分を除いて再計算するかたちで、年末調整のやり直しを行います。
年末調整後、状況に変化があった場合
年末調整が終わったのち、12月末日までに次の状況が発生した場合は、翌1月31日までに年末調整のやり直しを行います。
- 給与の追加払いがある場合
- 扶養親族等が減ったり増えたりした場合
- 配偶者た特定親族の合計所得金額の見積額に差異が生じた場合
- 新たに保険料を支払った場合
それぞれのケースを具体的に見ていきましょう。
(1)給与の追加払いがある場合
12月末日までに本年分の給与を追加して支払うこととなった場合には、この追加支給額を、先の年末調整の対象となった給与総額に加えて年末調整のやり直しを行います。
しかし、翌年になってから給与の改定が行われ、本年にまで遡って支給されることになった場合の新旧給与の差額は、その給与改定が行われた年分の所得となるため、本年分の年末調整をやり直す必要はありません。
(2)扶養親族等が減ったり増えたりした場合
「年内に結婚した」「子どもが生まれた」「年内に再婚した相手に子どもがいた」「子どもが結婚するなど家族構成に変化が生じた」などのケースでは、扶養控除や配偶者控除に影響する可能性があります。
従業員からこれらの異動事項の申告を受けた場合はの異動後の控除対象扶養親族の数などを基にして年末調整のやり直しを行います。
(3)配偶者や特定親族の合計所得金額の見積額に差額が生じた場合
配偶者控除または、配偶者特別控除の適用を受けた配偶者や従業員本人の合計所得金額の見積額と、確定した合計所得金額に差額が生じたことにより、配偶者控除額や配偶者特別控除額が変動する場合には、異動後の状況により、年末調整のやり直しを行います。
(4)新たに保険料を支払った場合
12月31日までに、新たに本年中に生命保険料や地震保険料などを支払った人がいる場合は、保険料控除申告書によって申告を受け、その異動後の状況により保険料控除額を再計算し、これを基にして年末調整のやり直しを行います。
年末調整をやり直す手順【1月31日以前】
年末調整のやり直しができるのは、従業員に対して「給与所得の源泉徴収票」を発行する前、かつ1月31日までです。そのうえで、以下のステップで作業を行います。

修正・再申告の内容確認と必要書類の準備
人事担当者の計算ミスや給与の追加払いなど、会社側の事情によりやり直しをする場合は、会社で再計算し、必要な修正を行います。
従業員の事情によりやり直しをする場合は、申告書を従業員に返却し、期限を決めて再提出してもらいます。
再提出された際は、控除証明書など必要な書類が揃っていることを確認します。
該当箇所に二重線をひいて修正する
申告書の該当箇所に二重線をひき、二重線の上下どちらかに修正内容を記入します。
修正テープ・修正液の使用、消えるボールペンの使用はNGです。
なお、令和3年度の税制改正により、源泉所得税関係書類について、押印を要しないこととされました。
よって、押印は必須ではなく、訂正印を押すかどうかは自社でルールを定めましょう。
過不足税額の再計算をし、差額を精算する
年末調整のやり直しを行い、本来の源泉徴収税額を算出したら、当該従業員に対して、過不足の精算を行います。
精算方法としては、過不足額を現金か振込で行うか、給与または賞与にて行います。
期限に間に合わない場合は確定申告となる旨を案内する
年末調整の訂正については、会社で対応できる期限は前述のとおり、1月31日までです。
これは、税法上、会社は1月31日までに以下の手続きを完了する必要があるためです。
- 給与支払報告書を市区町村へ提出(住民税計算の基礎資料)
- 法定調書(源泉徴収票など)を税務署へ提出
- 源泉所得税の納付額の確定
これらの提出後に年末調整の内容を変更すると、税務署・市区町村への再提出や住民税の修正が必要となり、社内での修正対応ができなくなることから、個人で確定申告してもらう必要がある旨を説明しましょう。

年末調整をやり直す手順【2月1日以降】
2月1日以降もしくは「給与所得の源泉徴収票」発行後は、従業員の協力を得て年末調整のやり直しが必要です。
会社では以下の手順で、従業員に確定申告するよう案内しましょう。
確定申告が必要な従業員を洗い出す
控除証明書の提出がなかった、申告書の再提出が遅れたなどの理由で、1月31日の期限内に年末調整のやり直しができなかった従業員をリスト化します。また、2月1日以降に修正したい旨の申し出があった従業員もリストに加えます。
対象となる従業員へ確定申告の案内をする
リスト化した従業員に対して、確定申告の期間内(通常は2月16日~3月15日ですが、曜日の並びによって前後することがあります)に確定申告するよう案内します。
なお、確定申告期間を過ぎても、扶養の追加や保険料控除の出し忘れなど、税金が戻る手続きである「還付申告」の場合は5年間申告が可能なため、説明すれば従業員も安心してくれるでしょう。
追加で税金を納める必要がある場合は「期限後申告」となり、延滞税などが発生する可能性があります。判明した場合は速やかに手続きをしてもらうよう案内をしましょう。
源泉徴収票の交付状況を確認し、申告手続きをフォローする
確定申告する場合は、「給与所得の源泉徴収票」に加えて、追加・訂正する控除の証明書、マイナンバー確認書類、本人確認書類、還付金の振込先口座等を用意し、e-Tax(推奨)や郵送、税務署持参などで申告となる旨を案内します。
過年度分の修正も要チェックを
過年度分の年末調整について、会社宛に税務署から是正を求める通知が届くことがあります。
配偶者控除や扶養控除等の適用対象外なのに、適用として処理していたケースなどが多く、この場合、年末調整をやり直し、追加徴収を求められます。
通知を受け取ったら、まずは該当の従業員にヒアリングし、事実確認を行います。その後、申告内容の修正と再計算を速やかに行い、不足税額を納付します。
修正作業は源泉徴収義務を負っている会社が行う必要があり、従業員の確定申告では対応できません。
まとめ
年末調整は、会社が従業員に代わって1年間の所得税の過不足を精算する仕組みです。
この計算は、扶養の状況や保険料の支払額など、従業員本人から提出された申告内容や証明書に基づいて行わるため、控除証明書の提出漏れや扶養人数の誤り、計算ミスや記入ミスなどがあると、所得税額にも過不足が生じることになります。
所得税は、本来納めるべき正しい金額に精算する必要があるため、誤りが判明した場合には年末調整のやり直しや確定申告による修正が必要です。
また、年末調整の結果は翌年度の住民税の計算資料にもなるため、誤った内容のままでは住民税にも影響が及びます。
年末調整のやり直しは、会社の源泉徴収義務を適正に果たすためだけでなく、納税者の払い過ぎや不足を正すための重要な手続きといえます。
短期に集中して行う必要がある年末調整は、人事担当者にとっては多忙となる事務作業ですが、その重要性を鑑み、従業員への事前周知も含め、用意周到に進めていきましょう。
プロフィール

長澤 千晴(特定社会保険労務士/産業カウンセラー/ライター) |
| HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 大学卒業後、大手旅行会社に入社し、団体旅行営業・添乗業務を担当。その後、出版業界に転身し、月刊誌・隔週刊誌・週刊誌及び書籍・ムックの編集に従事。 |
https://jinjiwriter.com/author/Chiharu
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