勤務間インターバル制度とは
インターバル制度とは
皆さん、こんにちは特定社労士の飯野正明です。
2019年4月以降、企業規模に応じて、順次時間外労働に上限規制がかかることは、前回のブログ「罰則付き!時間外労働の上限規制について」 でお話したところです。
なかなか難しいことを「要求されるているな…」と思われている経営者の方も多いのではないでしょうか。時間外労働については、やはり、やらない、やらせないのが一番ということになるのですが、どうしても時間内に終わらずに残業となってしまうことは十分に考えられます。ときには、夜遅くまで…となってしまうこともあるでしょう。
この場合、翌日の朝、いつもと同じ時間に会社に出社するとなるとゆっくり身体を休ますことが出来ないといったことがあります。前日遅くまで働いた上に、ゆっくり休めていないとなると翌日の仕事ぶりに影響が出ることも考えられます。このような時に有効となるのが、「インターバル制度」です。
インターバル制度とは
「インターバル制度」とは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を設定することです。前述の例のように夜遅くまで働いたので、「明日の朝は、いつもよりゆっくり出社していいよ!」ということです。
この制度は、労働者の生活や睡眠時間を確保することが目的です。どうやら、日本人の睡眠時間は先進諸国の中で最下位とのこと。寝不足は、うつ病や認知症のリスクを増加させると考えられています。私が通院している病院の医師は、「その日の内には寝るようにして、睡眠時間は、1日7時間が目標!」といつも言われています。
寝不足が、うつ病や認知症のリスクを増加させるとなると、翌日の仕事ぶりに影響が出るレベルの話ではありません!
睡眠時間の確保は労働者の健康を守るためにも重要なこととなるのです!!
例えば、通勤時間が1時間と考えると「2時間残業」して、退社時間は20時。1時間かけて自宅に着くと21時。寝るまでに3時間程の時間を過ごすことが出来ます。これくらいあればゆっくりとお風呂も入れるし、1日7時間の睡眠時間を確保することができそうですね。
これが、退社時間が1時間遅くなり、2時間遅くなり…となってくるとどうしても睡眠時間を削ることになります。また、通勤時間がもっと長い方もいらっしゃいます。うちの事務所には、1時間半以上掛けて通勤している職員もいます。
自宅でゆっくり休むとなると、退社時間の目安は「20時」といったところでしょうか。
しかしながら、いつも早く帰れるとは限りません。もちろん、残業せずに帰る時もあるでしょうが、退社時間が遅くなったときに、「インターバル制度」の出番となるのです。図をご覧ください。
例えば、インターバル(=休息時間)を「11時間」と設定すると、21:00まで勤務した場合には、翌日の始業時間9:00までの間は、12時間となっているので「11時間」の休息時間は確保できています。(図1)
(図1)
しかしながら、23:00まで勤務をした場合には、翌日の始業時刻9:00までの間は「10時間」しかないため、「11時間」の勤務時間を確保できません。(図2)
(図2)
この場合には、出社時間を1時間繰り下げて「10時」とすることで11時間の休息時間を確保することとなります。(図3)
(図3)
2019年4月1日からは、インターバル休暇の導入が企業の努力義務となります。
なお、労基法改正後に「特別条項付き36協定」を締結する場合には、何らかの健康確保措置を取らなければなりません。この健康確保措置の一つとして、インターバル制度は挙げられています。
助成金を活用して制度の導入を
休息時間を9時間以上とするインターバル制度を導入した場合、「時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」によって、「最大50万円」の助成金を受給することが可能です。
この助成金は、社会保険労務士などの外部専門家によるコンサルティング、就業規則・労使協定等の作成・変更、勤怠管理システムの導入等に要した費用の一部を助成するものです。インターバル制度の導入を検討している企業はこちらの活用をぜひご検討下さい。
なお、労働社会保険諸法令に基づく助成金の申請書の作成及び行政機関への提出等は、社労士法により社労士の業務と定められており、社労士又は社労士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、それらの業務を業として行えないこととなっています。ご注意ください。
インターバル制度の留意点
1.正確な始業・終業時刻の把握
そもそも、始業、終業の時刻が把握できなければ、何時間の休息時間を与える必要があるのかが明確になりません。正確な始業・終業時刻の把握が必須となります。インターバル制度の導入を機に勤怠システムの導入する場合、前述の助成金が活用出来ます。
2.休息時間の目安は?
休息時間については、特に定められていません。ちなみに、この「インターバル制度」はEUでは既に導入されている制度で、EUにおいては24時間につき最低連続11時間の休息が定められています。また、上記助成金においては「9時間以上」が対象となっています。
自社で勤務する労働者の平均的な通勤時間+7時間(睡眠時間の理想)。この辺りが休息時間の目安となるでしょう。
3.連続での適用には問題が…
インターバル制度を適用し続けると、極端な話かもしれませんが出勤時間がどんどん遅くなってお昼過ぎに出社なんてことにもなり兼ねません。
特定の労働者にだけ残業をさせない仕組みづくりが望まれますが、業務繁忙期などの特定の時期においてはインターバル制度の適用をしないなどの対応が必要なケースも考えられます。
いずれにしろ、労働者に良いパフォーマンスを求めるのであれば、休息、睡眠時間を確保することが必要であることを意識する必要があります。
4.確保した休息時間の取扱い
確保した休息時間が通常の勤務時間にかかった場合には、その時間帯についての労働は、免除となります(休息時間となります)。
この場合の、その時間帯に対する賃金の支払いは労使間で取り決めることとなっています。つまり、無休でも構わないということになります。
最後に
残業はいつもするものではなく、やらなきゃならないときだけやるものなのです。やらなきゃならないときなので、長い時間残業せざるを得ない状況が生じることがあるでしょう。
やるときにはやってもらう為にも『インターバル制度』は必要となるのです。
しっかりやってもらった後は、しっかり休む。休息時間を確保し、翌日以降に疲労を残させない働き方が「労働者の健康」を守ることにつながるのです。
プロフィール
飯野正明 特定社会保険労務士 明治大学大学院経営学修士 | |
1969年生まれ。社会人生活は、社会保険労務士一筋「27年」。2010年に東京都中央区日本橋に、いいの経営労務管理事務所を設立。現在は、Be Ambitious社会保険労務士法人代表として、職員9名(うち特定社会保険労務士2名)ともに、大手企業から中小零細企業まで多くの企業の労務相談の円満解決に力を入れている。“相談者の頼れる用心棒”としてたのしめる職場づくりを目指している。 主な著書に『労働法の知識と実務Ⅱ』(共著、東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会編) 、『職場トラブル解決のヒント』(ギャラクシーブックス発行)などがある。 |
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