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社会保険の扶養条件とは?扶養控除や年収の壁との関係を解説

従業員から「家族を扶養に入れたい」「年収がいくらまでなら扶養内で働けるのか」といった相談を受ける機会は少なくありません。ただ、ひと口に「扶養」といっても、社会保険の扶養と税金の扶養は別制度で、条件も手続きも異なります。

さらに近時はいわゆる「年収の壁」に関わる法改正が相次ぎ、古い知識では誤った案内をするおそれもあります。
この記事では、社会保険の扶養の条件を中心に、扶養控除との違いや年収の壁、手続きまでを人事担当者向けに解説します。

社会保険の扶養とは

社会保険の扶養とは、健康保険に加入している従業員(被保険者)に生計を維持されている家族が、「被扶養者」として健康保険の給付を受けられる仕組みです。被扶養者は自身で保険料を負担することなく、健康保険の給付を受けられます(一部を除く)。

また、厚生年金保険に加入している従業員(国民年金の第2号被保険者)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者は、「国民年金第3号被保険者」となり、こちらも自身で国民年金保険料を納める必要がなく、その期間は保険料納付済期間として将来の年金額に反映されます。

このように扶養は、家族が自身で保険料を負担することなく、医療(健康保険)と年金(国民年金)の保障を受けられる制度です。

扶養控除・配偶者控除との違い

「扶養」は税制でも使われる言葉ですが、扶養控除・配偶者控除は所得税・住民税の制度であり、社会保険の扶養とは別物です。
税の扶養は納税者本人の所得から一定額を差し引く仕組みで、一方、社会保険の扶養は家族が保険料の負担なく健康保険や国民年金の適用を受けられるかを判断する仕組みで、目的も判定方法も異なります。

実務上とくに重要な違いは次の3点です。

項目税(扶養控除・配偶者控除)社会保険(健康保険の被扶養者)
判定期間その年1~12月の実際の合計所得金額
(合計所得金額62万円以下=給与収入136万円以下。令和8年分以降)
認定時点から将来に向かって見込まれる年間収入
判定時点12月31日の現況で1年ごとに判定認定後、状況が変わるまで継続
収入の範囲非課税の通勤手当、失業給付、遺族年金・障害年金は含めない非課税の通勤手当、失業給付、遺族年金・障害年金も含める

例えば年の途中で退職した配偶者は、その年の税の扶養には入れなくても、退職後すぐに社会保険の被扶養者になれる場合があります。判定時点が異なるためです。

なお、給与計算システムを導入している場合、表示される「扶養人数」は、原則として所得税を計算するための「税制上の扶養人数」です。原則16歳未満の子は含まれず、障害者・ひとり親・寡婦・勤労学生に該当すると加算されます。

実際の家族の人数とも社会保険の被扶養者数とも一致しないため、従業員からの問い合わせが多い点です。

従業員の質問には、どの扶養の話かを切り分けて回答しましょう。

参考:No.1180 扶養控除|国税庁

参考:No.1191 配偶者控除|国税庁

社会保険の扶養対象となる条件

社会保険の扶養のうち、条件を細かく判断する必要があるのは健康保険の被扶養者です。
認定されるには、「家族の範囲」「国内居住・生計維持」「年間収入」の各条件をすべて満たす必要があります。

一方、国民年金第3号被保険者は、健康保険の被扶養者に認定された配偶者のうち20歳以上60歳未満の方が対象です。届出も被扶養者(異動)届と一体の様式で行うため、健康保険の被扶養者として認定されれば、配偶者は連動して第3号被保険者となります。
したがって、本記事の「扶養対象となる家族の範囲」で解説している条件がそのまま両制度の判断の土台になります。

なお、「扶養対象となる家族の範囲」の章の内容は協会けんぽ・日本年金機構の基準をもとにした解説です。
健康保険組合では独自の細則を設けている場合があるため、組合加入の会社は自社の規約もあわせて確認してください。

扶養対象となる家族の範囲

被扶養者になれるのは、原則として被保険者の三親等内の親族です。
ただし、同居(同一世帯)が必要かどうかで、次の2つのグループに分かれます。

【同居していなくてもよい家族】

配偶者(内縁関係を含む)、子・孫、兄弟姉妹、父母・祖父母などの直系尊属

【同居が必要な家族】

上記以外の三親等内の親族(義父母、おじ・おば、甥・姪など)、内縁の配偶者の父母および連れ子

例えば別居している自分の父母は扶養に入れられますが、配偶者の父母(義父母)を扶養に入れるには同居が必要です。なお、75歳以上の方は後期高齢者医療制度に加入するため、年齢到達以降は被扶養者になれません。

国内居住・生計維持などの条件

2020年4月からは、原則として日本国内に住所(住民票)があることが被扶養者の要件となっています。外国籍かどうかは問いませんが、海外に居住している家族は、留学中の子や海外赴任に同行する家族など、一定の例外に該当しない限り認定されません。

また、「主として被保険者の収入により生計を維持されていること」が必要です。同居の場合は対象家族の年間収入が被保険者の年間収入の半分未満であること、別居の場合は対象家族の年間収入が被保険者からの仕送り額より少ないことが、生計維持の目安とされています。

共働きで夫婦双方に収入がある場合の子どもについては、原則として年間収入の多い方の扶養に入れる取り扱いです。

年間収入の条件

被扶養者の年間収入は、原則130万円未満であることが必要です。ただし、60歳以上の方と障害厚生年金を受けられる程度の障害者は180万円未満、19歳以上23歳未満の方(被保険者の配偶者を除く)は150万円未満に緩和されています。

19歳以上23歳未満の150万円基準は、2025年度税制改正(特定親族特別控除の創設)に対応して2025年10月1日から導入されたもので、年齢は扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定し、学生であるかどうかは問いません。

ここでいう年間収入は、過去1年間の実績ではなく、認定時点から将来に向かって見込まれる収入額です。給与(通勤手当・賞与を含む)のほか、公的年金、雇用保険の失業給付、傷病手当金・出産手当金、不動産収入なども含めて判定します。

非課税の収入も含める点が税制との大きな違いです。

扶養に関係する年収の壁

扶養に関係する年収の壁

扶養内で働くパート・アルバイトの従業員からもっとも質問が多いのが、いわゆる「年収の壁」です。
社会保険の壁には「106万円の壁」と「130万円の壁」があり、これとは別に税法上の壁(136万円・178万円など)が存在します。

2025年から2026年にかけて、いずれも大きな制度変更があったため、最新の内容を整理しておきましょう(記事執筆時点、2026年8月の情報に基づいて解説しています)。

106万円の壁(2026年10月撤廃)

106万円の壁とは、短時間労働者が勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する基準です。従業員数51人以上の企業で、週の所定労働時間20時間以上、月額賃金8.8万円以上(年収換算で約106万円)などの要件をすべて満たすと勤務先で社会保険に加入し、家族の扶養からは外れます。

このうち月額賃金8.8万円の要件は、2025年6月成立の年金制度改正法(令和7年法律第33号)により2026年10月に撤廃されます。撤廃後は年収にかかわらず、週20時間以上などの要件を満たせば加入対象となり、企業規模要件も2027年10月以降、段階的に撤廃される予定です。

8.8万円の判定に通勤手当や割増賃金、賞与は含めません。130万円の壁とは収入の数え方が異なるため、注意が必要です。加入要件の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:社会保険の加入条件とは?2026年法改正ポイントを解説|レコルブログ

130万円の壁

130万円の壁とは、前述した被扶養者認定の年間収入基準です。勤務先の加入要件にかかわらず、年間収入が130万円以上(60歳以上・障害者は180万円以上、19歳以上23歳未満は150万円以上)になる見込みとなった場合は扶養から外れ、自身で国民健康保険・国民年金に加入するか、勤務先の社会保険に加入します。この基準は、106万円の壁が撤廃される2026年10月以降も残ります。

計算では通勤手当を非課税分も含めて全額算入し、時間外手当や賞与も含めた総収入で判定します。税の計算方法と混同しないよう注意してください。

一方、2026年4月1日以降は、給与収入のみのパート等について、労働契約に記載された賃金から見込まれる年間収入で判定する運用に変わりました。繁忙期の残業などで一時的に超えても、直ちに扶養を外れることにはなりません。

なお、130万円未満でも、勤務先の社会保険の加入要件(週20時間以上等、または通常の労働者の4分の3以上)を満たせば被扶養者にはなれません。

扶養控除・配偶者控除に関係する年収の壁

税法上の年収の壁は、社会保険とは別の制度です。令和8年度税制改正で基礎控除・給与所得控除が引き上げられたことにより、令和8年分から金額の水準が大きく変わりました。

●136万円:

扶養控除・配偶者控除の対象となる親族・配偶者の給与収入の上限(合計所得金額62万円以下)。令和7年分の123万円から引き上げられました。

●159万円/197万円:

19歳以上23歳未満の子などに適用される「特定親族特別控除」の基準。子の給与収入159万円までは親が満額63万円の控除を受けられ、197万円まで段階的に縮小します。

●178万円:

本人に所得税が課され始める給与収入の目安。配偶者特別控除を満額(38万円)受けられる配偶者の給与収入の上限は169万円です。

※これらの金額には令和8・9年分の時限措置(給与所得控除の上乗せなど)が含まれており、令和10年分以後は見直される予定です。

税と社会保険の壁は別々に判定されるため、「130万円を超えて社会保険の扶養を外れたが、税の配偶者特別控除は受けられる」といったケースも生じます。

従業員から「〇〇万円を超えるとどうなるのか」と質問されたときは、税と社会保険のどちらの壁の話なのかを確認したうえで回答しましょう。

参考:「年収の壁」への対応|厚生労働省

参考:源泉所得税の改正のあらまし 令和8年4月|国税庁

社会保険の扶養に入るときの手続き

従業員の被扶養者を追加するときは、事実発生から5日以内に届け出ることが原則とされています。人事担当者は、次の3つのステップで速やかに手続きを進めましょう。

【1】従業員から申請を受ける

扶養の追加が必要となるのは、従業員の結婚、子どもの出生、配偶者や家族の退職・収入減少などの場面です。

従業員から申し出を受けたら、まず「いつ・どのような事実が発生したのか」を確認します。婚姻日や出生日、退職日が被扶養者の認定日に関わるためです。

届出が遅れると、認定日の取り扱いや資格確認書の交付に影響が出て、その間の医療費が一時的に全額自己負担になるなど従業員に不利益が生じかねません。

あわせて、必要書類は扶養に入れる家族との続柄や収入状況、会社が加入している健康保険(協会けんぽか健康保険組合か)によって異なることを従業員に伝え、早めの準備を促しましょう。

【2】必要書類を確認する

添付書類は、大きく「続柄」「収入」「生計維持(別居の場合)」の3つの観点で確認します。

●続柄の確認書類

戸籍謄本(抄本)または住民票です。ただし、届書に被保険者と扶養対象者双方のマイナンバーを記載し、事業主が続柄を確認した旨を届書に記載すれば、添付を省略できます。

●収入の確認書類

市区町村発行の課税(非課税)証明書などです。扶養対象者が所得税法上の控除対象配偶者・扶養親族であることを事業主が確認し、届書にその旨を記載した場合は省略できます。

ただし、障害年金・遺族年金や失業給付など非課税の収入がある場合は、受取金額のわかる通知書等の写しが必要です。

●生計維持(別居の場合)の確認事項

別居の家族を扶養に入れる場合は、仕送りの事実と金額が確認できる書類(振込明細や現金書留の控えなど)を求められます。健康保険組合では、これらに加えて独自の「被扶養者状況届」などの提出が必要な場合があります。

【3】被扶養者(異動)届を提出する

書類が揃ったら、会社が「健康保険 被扶養者(異動)届」を作成して提出します。協会けんぽに加入している会社は、事実発生から5日以内に日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)へ提出します。電子申請(e-Gov)や電子媒体による提出も可能です。

配偶者を扶養に入れる場合、この届は「国民年金第3号被保険者関係届」を兼ねた様式となっているため、1枚で両方の手続きが完了します。

健康保険組合に加入している会社は、組合へ届出を行います。組合によって認定基準の細部や添付書類、提出期限が異なる場合があるため、事前に組合の規約や手引きを確認してください。

なお、配偶者の第3号被保険者関係届については、組合経由で日本年金機構へ届け出る流れとなります。認定されると資格確認書等が交付されるので、速やかに従業員へ渡しましょう。

参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構

社会保険の扶養から外れるケース

被扶養者が扶養から外れる主なケースには、以下のようなものがあります。

  • 就職して勤務先の社会保険に加入した場合
  • 年間収入が基準額(130万円・150万円・180万円)以上になる見込みとなった場合
  • 雇用保険の基本手当(日額3,612円以上・60歳以上および障害者は5,000円以上)を受給し始めた場合
  • 離婚した場合
  • 75歳に到達して後期高齢者医療制度に加入する場合

扶養から外れるときも、被扶養者(異動)届による削除の手続きが必要です。手続きが遅れると、資格喪失後に受診した医療費の返還を求められるなど、従業員とのトラブルにつながりかねません。

扶養を外れる際の判断基準や手続きの流れは、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:社会保険の扶養を外れる手続きとは?|レコルブログ

まとめ

社会保険の扶養は、健康保険の被扶養者と国民年金第3号被保険者で構成される制度で、税制上の扶養控除・配偶者控除とは判定基準も手続きも異なります。収入を「将来に向けた見込み額」で判定すること、通勤手当や失業給付など非課税の収入も含めること、家族の範囲や同居・国内居住の要件があることがポイントです。

また、2025年10月の19歳以上23歳未満の収入基準の緩和、2026年4月の労働契約ベースでの収入判定、2026年10月の106万円の壁の撤廃と、年収の壁をめぐる制度は大きく動いています。税制側でも令和8年分から136万円・178万円など新しい壁が生まれ、従業員が制度を混同するリスクは高まっています。

「税と社会保険の扶養は別物であること」「どの収入を含め、いつ時点で判定するのか」を正確に説明できるよう、本記事を日々の実務にお役立てください。

プロフィール

長澤 千晴プロフィール

長澤 千晴(特定社会保険労務士/産業カウンセラー/ライター)

長澤アンカー社会保険労務士事務所 代表
HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属

大学卒業後、大手旅行会社に入社し、団体旅行営業・添乗業務を担当。その後、出版業界に転身し、月刊誌・隔週刊誌・週刊誌及び書籍・ムックの編集に従事。
その後、管理部門への異動を機に社会保険労務士試験の勉強を開始。2011年、合格。2014年、特定付記。総務・人事の責任者として労務管理、採用、研修、法改正対応、就業規則改正、人事制度・賃金制度変更などを手掛ける。令和8年、社会保険労務士として独立

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