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社会保険の扶養を外れる手続きとは?必要書類・提出期限・遅れた場合のリスクを徹底解説

社会保険の扶養を外れる手続きは、事実発生から5日以内の届出が原則です。
対応が遅れると、従業員が誤って扶養のまま医療機関を受診してしまい、後日医療費の返還を求められるといったトラブルにつながるおそれがあります。

この記事では、社会保険の扶養を外れる場面と手続きの流れ、必要書類や提出期限に加え、従業員への影響、手続きが遅れた場合のリスクまで、人事担当者が押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。

社会保険の扶養を外れる場面とは

健康保険の被扶養者が扶養を外れる場面は、大きく分けて「従業員の家族本人が勤務先で社会保険の加入条件を満たしたとき」と「収入増加などにより扶養の条件を満たさなくなったとき」の2つです。

社会保険の扶養を外れる場面で確認が大切なのが、「いつの時点で扶養から外れるのか」という資格喪失日の考え方です。
資格喪失日を起点に届出期限や新しい保険への切り替え時期が決まるため、場面ごとにルールを理解しておきましょう。

従業員本人が社会保険加入条件を満たしたとき

これまで専業主婦(主夫)や無職だった家族が就職した場合や、パート勤務先での労働条件が変わり社会保険の加入条件を満たした場合は、当人が勤務先の健康保険・厚生年金保険に加入するため、扶養から外れます。

この場合、扶養から外れる日は「就職先で被保険者資格を取得した日(入社日など)」です。

パート・アルバイトなどの短時間労働者は、正社員の4分の3以上働いていなくても、次の条件をすべて満たすと社会保険の加入対象となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 月額賃金が8.8万円以上であること(年収換算で約106万円。いわゆる「106万円の壁」)
  • 2か月を超える雇用の見込みがあること
  • 学生でないこと
  • 従業員数51人以上の企業(特定適用事業所等)に勤務していること

なお、2025年に成立した年金制度改正法により、このうち「月額賃金8.8万円以上」の賃金要件は2026年10月1日に撤廃される予定です。また、企業規模要件も2027年10月から段階的に縮小され、最終的には撤廃されることが決まっています。

短時間労働者の家族を扶養に入れている従業員が多い職場では、今後、扶養から外れるケースが増えることが見込まれるため、最新の適用条件を確認しておきましょう。

社会保険の加入条件の詳細は、以下の記事で解説しています。

関連記事:社会保険の加入条件とは?|レコルブログ

扶養条件を満たさなくなったとき

被扶養者と認定されるには、収入要件と、被保険者との続柄・生計維持関係(家族の範囲や同一世帯であることなど)の要件を満たす必要があります。これらを満たさなくなったときに扶養から外れます。

収入要件の基本は「年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)」で、かつ同居の場合は被保険者の収入の半分未満、別居の場合は被保険者からの仕送り額未満であることです。

ここでいう年間収入は、過去の収入ではなく、扶養認定日以降の1年間の収入見込みで判定します。パート収入の増加などで年間収入が基準額以上になると見込まれるようになった時点で、扶養の条件を満たさなくなります。

なお、2025年10月1日以降は、19歳以上23歳未満の被扶養者(被保険者の配偶者を除く)に限り、収入要件が「年間収入150万円未満」に緩和されています。大学生世代の子どもを扶養に入れている従業員には影響の大きい改正のため、あわせて周知しておくとよいでしょう。

このほか、離婚により配偶者が家族の範囲から外れた場合、別居により生計維持関係がなくなった場合、被扶養者が75歳に到達し後期高齢者医療制度へ移行した場合なども、扶養から外れます。

扶養の条件(収入要件・家族の範囲・同一世帯要件)の詳細は、以下の記事で解説しています。

関連記事:社会保険の扶養条件とは?扶養控除や年収の壁との関係を解説|レコルブログ

社会保険の扶養を外れる手続きの流れ

社会保険の扶養を外れる手続きの流れ

社会保険の扶養を外れる手続きは、従業員からの申し出を起点に、会社が届出を行う流れとなります。
ここでは、協会けんぽ加入企業を想定した基本的な流れを4つのステップで解説します。
健康保険組合に加入している場合は、提出先や添付書類が異なることがあるため、加入する組合の案内をあわせて確認してください。

【1】従業員から会社へ申し出る

最初のステップは、従業員から会社への申し出です。ただし、従業員は「どのような場合に申し出が必要か」を知らないことが多いため、会社側からの周知が欠かせません。

次のようなケースが発生したら、速やかに申告するよう、入社時の案内や社内掲示、年に一度の被扶養者状況の確認(被扶養者資格再確認)の機会などを通じて伝えておきましょう。

  • 扶養している家族が就職した、または勤務先で社会保険に加入した
  • 家族のパート収入が増え、年間収入が基準額以上になる見込みとなった
  • 離婚した、家族と別居して仕送りをしなくなった

申し出の受付には、家族の異動内容を記載する社内様式(家族異動届・身上異動届など)を用意しておくと、必要な情報を漏れなく収集でき、後続の手続きがスムーズになります。

就職による削除であれば就職先の資格取得日、収入増加による削除であれば収入が基準額以上になった時期など、資格喪失日の判断に必要な情報を確認しておきましょう。

【2】会社が健康保険の扶養削除手続きを行う

従業員からの申し出を受けたら、会社は「健康保険被扶養者(異動)届」を作成し、扶養を外れる事実の発生から5日以内に提出します。扶養から外れる手続きは、被扶養者の「削除」の異動手続きとして行います。

提出先は、協会けんぽに加入している場合は日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)、健康保険組合に加入している場合は各組合です。

組合によっては独自様式や添付書類(就職先の資格情報がわかる書類の写しなど)を求められる場合があるため、事前に確認しておきましょう。電子申請(e-Gov等)による提出も可能です。

なお、扶養を外れるのが配偶者で、国民年金の第3号被保険者に該当していた場合は、健康保険の扶養削除にあわせて第3号被保険者の資格も失います。

就職して厚生年金保険に加入する場合は、第2号被保険者への切り替えが就職先経由で行われます。一方、収入増加などで扶養を外れて国民年金に加入する場合は、本人による手続きが必要です。従業員本人が14日以内に市区町村の窓口で、第1号被保険者への種別変更手続きを行うよう案内しましょう。

参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構

【3】健康保険証(資格確認書等)を返却する

被扶養者(異動)届の提出とあわせて、扶養から外れる家族に交付されていた資格確認書(従来の健康保険証に代わる書類)を回収し、返却します。高齢受給者証や限度額適用認定証などの交付を受けている場合は、それらも一緒に返却が必要です。

従来の健康保険証は新規発行が終了し、経過措置期間も満了しているため、手元に残っている場合は本人が破棄して差し支えありません(取り扱いは保険者の案内に従ってください)。

マイナ保険証を利用している場合は、カード返却は不要で、資格喪失の情報はオンライン資格確認のデータへ反映されます。ただし、データ反映までにはタイムラグがあり、資格喪失日以降に扶養の資格で受診すると医療費の返還問題が生じるため、受診の際に、どの資格になっているか窓口で確認するよう、本人に必ず伝えてもらいましょう。

【4】新しい健康保険へ加入する

扶養から外れた家族は、いずれかの健康保険に加入し直す必要があります。就職や労働条件の変更により勤務先の社会保険に加入する場合は、勤務先が資格取得手続きを行うため、本人の手続きは原則不要です。

一方、収入増加などで扶養を外れたものの勤務先の社会保険に加入しない場合は、本人が住所地の市区町村で国民健康保険の加入手続きを行います。

手続き期限は扶養を外れた日(資格喪失日)から14日以内で、加入していた健康保険の資格喪失を証明する書類(資格喪失証明書など)が必要となるのが一般的です。

国民健康保険の保険料は資格喪失日まで遡って発生するため、手続きが遅れても未加入期間の保険料負担がなくなるわけではない点も、あわせて案内しておきましょう。

社会保険の扶養を外れたとき・従業員への影響とは

扶養を外れる手続きを進めると、従業員から「保険料はいくらかかるのか」「何が変わるのか」と質問される機会が増えます。ここでは、扶養を外れた家族(および従業員の世帯)に生じる主な影響を3つの観点から整理します。

社会保険料の負担方法や金額が変わる

被扶養者である間は、健康保険料の負担はありませんが、扶養を外れると、加入する制度に応じて本人に保険料負担が発生し、世帯全体でみると手取りが減る場合があります。

負担の方法や金額は、勤務先の社会保険に加入するのか、国民健康保険に加入するのかで大きく異なります。

【社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する場合】

勤務先の社会保険に加入する場合、健康保険料と厚生年金保険料を会社と本人が折半で負担し、本人負担分は毎月の給与から天引きされます。保険料は給与額(標準報酬月額)に保険料率を乗じて計算します。

例えば、協会けんぽ加入企業で標準報酬月額20万円(40歳未満)の場合は以下のとおりです。

  • 健康保険料:月額約9,850円(本人負担分)
  • 子ども・子育て支援金:230円(同)
  • 厚生年金保険料:月額18,300円(同)
  • 合計:月額約28,380円

(令和8年度の保険料率・東京都の場合)

40歳以上65歳未満の場合は、これに介護保険料(1.62%・労使折半)が加わります。

保険料率は都道府県や年度によって異なるため、最新の保険料額表で確認しましょう。

もっとも、保険料負担は生じるものの、厚生年金保険への加入により将来の年金額が手厚くなるなどの給付面の変化もあるため(詳細は後述)、負担額とあわせて説明できるようにしておくと、従業員の理解を得やすくなります。

参考:令和8年度保険料額表|協会けんぽ

【国民健康保険に加入する場合】

国民健康保険に加入する場合、保険料(保険税)は市区町村ごとに定められ、前年の所得や世帯の加入人数などをもとに計算されます。

会社との折半負担はなく全額が自己負担となり、給与天引きではないため、市区町村から送付される納付書や口座振替により本人が納付します。

また、20歳以上60歳未満で国民年金の第3号被保険者だった配偶者は、第1号被保険者として国民年金保険料(令和8年度は月額17,920円)を自分で納付することになります。

納付を忘れると将来の年金額や障害年金・遺族年金の受給に影響するおそれがあるため、健康保険とセットで手続き・納付が必要であることを案内しましょう。

参考:国民年金保険料|日本年金機構

将来受け取る年金額や給付内容が変わる

扶養を外れて厚生年金保険に加入した場合、将来の年金は基礎年金に加えて報酬比例の厚生年金が上乗せされるため、受け取る年金額が増えます。

また、健康保険の被保険者本人となることで、病気やケガで働けない場合の傷病手当金や、出産のため仕事を休んだ場合の出産手当金など、被扶養者では対象とならなかった給付を受けられるようになります。障害・死亡時の保障も、障害厚生年金・遺族厚生年金の対象となり厚くなります。

一方、国民健康保険・国民年金(第1号被保険者)に加入する場合は、将来の年金は基礎年金が中心となり、傷病手当金や出産手当金に相当する給付は原則ありません。

同じ「扶養を外れる」場合でも、どの制度に加入するかで保障内容が異なるため、従業員から相談を受けた際は、保険料負担だけでなく給付面の違いも含めて情報提供できるようにしておきましょう。

家族の税負担額が変わる場合がある

扶養を外れる原因となった収入の増加は、税負担にも影響する場合があります。家族の収入が一定額を超えると、従業員本人が受けていた配偶者控除・配偶者特別控除や扶養控除の適用額が減少・消失し、従業員本人の所得税・住民税の負担が増えることがあります。

令和8年分の所得税では、扶養控除・配偶者控除の対象となる家族の収入ラインは、給与収入136万円以下(合計所得金額62万円以下)に引き上げられています。

なお、19歳以上23歳未満の子どもについては、令和7年分の所得税から特定親族特別控除が創設されており、令和8年分では、子どもの給与収入が136万円を超えても197万円以下までは段階的に控除を受けられます。

また、会社が家族手当(扶養手当)を支給している場合、支給基準を税法上または健康保険上の扶養と連動させているときは、扶養を外れることで手当の支給を停止する作業も必要です。

社会保険・税・社内手当のそれぞれで基準が異なることを従業員に説明できるよう、自社の賃金規程の支給基準もあわせて確認しておきましょう。

扶養を外れる手続きが遅れた場合のリスク

扶養を外れる手続きは、事実発生から5日以内の届出が原則です。従業員からの申し出が遅れたり、会社が届出を放置したりした場合のリスクは、会社よりも従業員側に大きく生じます。ここでは、双方への影響を整理します。

従業員にとってのリスク

扶養から外れる日(資格喪失日)は、届出をした日ではなく、就職日や収入が基準額以上になった日など、事実が発生した日に遡って認定されます。そのため、手続きが遅れても「届出までの間は扶養のまま」とはならず、資格喪失日に遡って資格を失います。

この間に扶養の資格確認書等を使って医療機関を受診していた場合、健康保険が負担した医療費(かかった医療費の7割等)を後から返還するよう求められます。返還後に国民健康保険等へ療養費の請求をやり直す手間も生じるため、金銭面・事務面の両方で本人の負担が大きくなります。

また、資格喪失日以降は本来加入すべき保険の資格取得手続きも遅れることになり、国民健康保険の保険料は資格喪失日まで遡って賦課されます。国民年金の種別変更が遅れれば、保険料の未納期間が生じ、将来の年金額や万一の際の障害年金・遺族年金の受給に影響するおそれもあります。

会社にとってのリスク

被扶養者(異動)届の提出義務を果たしていないことによる保険者からの照会対応や、遡及処理・訂正手続きなどの事務負担が発生します。

毎年の被扶養者資格再確認で削除漏れが発覚すれば、上記の医療費返還などのトラブル対応に巻き込まれ、従業員との信頼関係にも影響しかねません。

こうしたリスクを避けるには、扶養を外れる場面と申し出のルールを日頃から従業員に周知し、申し出があったら速やかに届出を行う体制を整えておくことが何より重要です。

まとめ

近時は、意識の変化により、プライベートの領域に関する情報を会社に伝えることに抵抗感を持つ従業員も増えていますが、報告が遅れると、さまざまな事務作業が発生します。

とくに社会保険の扶養を外れる手続きは、事実の発生から5日以内に届け出をする必要があるため、速やかに申し出てもらう必要があります。

どのような場面で申し出が必要かを従業員に周知しておくことが、滞りなく手続きを進める最大のポイントとなります。

扶養や社会保険の適用をめぐる制度は近年大きく変わりつつあります。人事担当者は最新の制度を正確に把握し、従業員への周知と迅速な手続きを両輪で進めることで、トラブルを未然に防ぎましょう。

ぜひ本記事を、自社の扶養手続きフローの点検にお役立てください。

プロフィール

長澤 千晴プロフィール

長澤 千晴(特定社会保険労務士/産業カウンセラー/ライター)

長澤アンカー社会保険労務士事務所 代表
HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属

大学卒業後、大手旅行会社に入社し、団体旅行営業・添乗業務を担当。その後、出版業界に転身し、月刊誌・隔週刊誌・週刊誌及び書籍・ムックの編集に従事。
その後、管理部門への異動を機に社会保険労務士試験の勉強を開始。2011年、合格。2014年、特定付記。総務・人事の責任者として労務管理、採用、研修、法改正対応、就業規則改正、人事制度・賃金制度変更などを手掛ける。令和8年、社会保険労務士として独立

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