給与テーブルとは?作成メリットと注意点・作り方を人事担当者向けに解説

従業員の給与を決めるうえで、「どのような基準で金額を設定するか」は重要なポイントです。
基準があいまいなままでは、昇給や昇格のたびに個別の検討が必要で、従業員から金額の理由を尋ねられたときにも、納得感のある説明が難しくなります。
そこで役立つのが、等級や役職などに応じた給与額を整理した「給与テーブル」です。
この記事では、給与テーブルの構成や種類・メリット・注意点から、具体的な作り方までを人事担当者向けに解説します。よくある課題と解決策も紹介しますので、これから整備を検討している企業はぜひ参考にしてください。
給与テーブルとは
給与テーブルとは、等級・役職・号俸といった区分に応じて、基本給などの金額や給与水準を整理した表です。賃金テーブル、賃金表と呼ばれることもあり、いずれもほぼ同じ意味で使われています。
なお、「テーブル」は、行と列で情報を整理した表を意味します。給与テーブルも、人事制度に応じてさまざまな形式がありますが、等級・号俸制では、縦軸に等級、横軸に号俸を配置し、その組み合わせから給与額を確認する形式が一般的です。以下は、その一例です。
| 等級\号俸 | 1号 | 2号 | 3号 | 4号 | 5号 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1等級 | 200,000円 | 205,000円 | 210,000円 | 215,000円 | 220,000円 |
| 2等級 | 230,000円 | 236,000円 | 242,000円 | 248,000円 | 254,000円 |
| 3等級 | 270,000円 | 280,000円 | 290,000円 | 300,000円 | 310,000円 |
混同されやすい言葉に、給与レンジがあります。
給与レンジとは、等級ごとに定めた給与の下限額から上限額までの幅を指す言葉です。
一方、給与テーブルは、そのレンジや金額を等級・号俸ごとに一覧化した表そのものを意味します。
給与レンジは給与テーブルを構成する要素のひとつ、と捉えるとわかりやすいでしょう。
給与テーブルの構成
給与テーブルに含める項目は、法律で決まっているわけではありません。
自社の人事制度に合わせて任意に設計できます。しかしながらゼロから考えるのは負担が大きいため、まずは一般的な構成項目を押さえておきましょう。
- 等級・グレード:職務や能力、役割のレベルに応じた区分
- 号俸:同一等級内の細かい段階(1号あたりの昇給額は「ピッチ」と呼ぶ)
- 基本給:等級・号俸に対応する基準額
- 役職手当:部長や課長、主任など、職位に対して支給する額
- 給与レンジ:等級ごとの下限額と上限額の幅
給与レンジを設計するときは、上位等級との接続方法もあわせて決めます。
代表的なのは、下位等級の上限額と上位等級の下限額が一致する「接続型」です。
ほかに、上位等級の下限額のほうが高い「開差型」や、両者が一部重なる「重複型」もあります。

年功序列制度の企業が多い時代には「重複型」が一般的でしたが、成果主義が広まってからは「開差型」を選択するケースも増えています。昇格時にどの程度の昇給を実感してもらいたいかによって、選ぶ形は変わるでしょう。
給与テーブルの種類
給与テーブルにはいくつかの形式があり、どの形式を採用するかによって、給与額や昇給の決め方が異なります。
代表的なものとして、次の4つがあります。
【号俸表型(単純・段階)】
等級と号俸の組み合わせごとに給与額を定める形式です。単純号俸表型では、「毎年1号ずつ」のように一定の号数を昇給させます。一方、段階号俸表型では、「評価Aなら4号、評価Bなら2号」のように、評価結果に応じて昇給する号数を変えます。給与額と昇給の道筋を明確にしやすい点が特徴です。
【昇給表型】
等級や号俸ごとの給与額ではなく、評価結果に応じた「昇給額」を定める形式です。例えば、評価Aなら10,000円、評価Bなら5,000円というように、現在の基本給へ金額を加算します。現在の給与水準をベースに昇給額を決めたい場合に活用できます。
【複数賃率表型】
同じ号俸に複数の給与額を設け、評価結果などに応じて適用する金額を決める形式です。毎年の評価をその年の給与に反映する「洗い替え」の考え方を取り入れることで、過去の評価結果をそのまま積み上げず、直近の評価を処遇に反映しやすくなります。
【ゾーン型賃金表】
同じ等級のなかを給与水準によって複数のゾーンに分け、評価と現在の給与水準の組み合わせによって昇給額を決める形式です。例えば、同じ高評価でも給与レンジの下限に近い従業員は昇給額を大きくし、上限に近い従業員は昇給額を小さくするといった設計ができます。等級ごとの給与レンジを意識しながら昇給を管理できる点が特徴です。
そのほかにも、実際の設計では、職種ごとに異なる給与テーブルを用意したり、等級によって昇給する号数を変えたりすることもあります。どの形式が適しているかは、自社の等級制度や評価制度、給与をどのように決定したいかによって異なります。
給与テーブルを作るメリット

給与テーブルを作る意味は、単に給与額を一覧にして見やすくすることだけではありません。
給与を決定する際の基準を明確にし、一定のルールに沿って処遇を決められるようにする点にあります。
ここでは、給与テーブルを整備する主なメリットを3つ紹介します。
昇給・昇格時の給与決定に納得感を持たせやすい
まず挙げられるメリットは、給与決定の根拠を明確にしやすいことです。基準が明確でなければ、昇給額や昇格後の給与が上司や担当者の裁量に左右されやすくなります。同じような評価や役割であるにもかかわらず、部署や上司によって処遇に差が生じれば、従業員の不信感につながりかねません。
給与テーブルがあれば、例えば「3等級・5号俸に該当するため、この金額になる」といった形で、給与額の根拠を説明できます。判断のばらつきを抑え、処遇の公平性を高めやすくなる点は大きなメリットです。給与がどのような基準で決まっているのかを従業員に説明しやすくなることで、処遇に対する納得感の向上にもつながるでしょう。
中途採用者の給与額を決めやすくなる
中途採用では、応募者の経験や能力をどのように給与額へ反映するかが悩みどころです。採用時の相場感や個別交渉だけで給与を決めると、既存の従業員との給与バランスが崩れることもあります。
給与テーブルがあれば、応募者の経験や能力、任せる役割などを自社の等級に当てはめ、給与額を検討する際の基準にできます。既存の従業員とのバランスを確認しながら、提示する給与額を決めやすくなるでしょう。
また、自社の給与水準を採用市場の相場と比較する際にも、等級ごとの水準が明確になるため、検証しやすくなります。
将来の人件費を予測しやすくなる
給与テーブルは、人件費計画を立てる際の土台にもなります。現在の従業員を等級や号俸などに当てはめることで、今後の昇給や昇格を想定した人件費のシミュレーションがしやすくなるためです。
例えば、段階号俸表型を採用している企業で「毎年平均2号ずつ昇給し、3年後に5名が昇格する」といった前提を置けば、将来の給与総額がどの程度増えるのかを試算できます。採用計画や賞与原資などを検討する際にも活用できるでしょう。
人件費は継続的に発生し、一度引き上げると簡単には下げられない費用です。給与テーブルをもとに将来の負担をあらかじめシミュレーションしておくことは、適切な人員・人件費計画を立てるうえでも重要です。
給与テーブルを作るときの注意点
給与テーブルは、一度作成すればそのまま運用できるものではありません。人事制度との整合性を確保するだけでなく、従業員への公開範囲や周知方法、日々の管理方法まで考えて設計する必要があります。ここでは、給与テーブルを作成・運用する際に押さえておきたい4つの注意点を解説します。
自社の人事制度・評価制度に合わせて設計する
インターネット上には、給与テーブルのテンプレートが数多く公開されています。構成を参考にすることは有効ですが、そのまま自社に当てはめるのは避けたほうが良いでしょう。
給与テーブルは、等級制度や評価制度などと連動して運用するものです。例えば、どのような基準で等級を決めるのか、評価結果を昇給にどのように反映するのかが定まっていなければ、給与テーブルだけを作っても適切に運用できません。
まずは自社の等級や役割、評価区分、昇給ルールなどを整理し、それに合わせて給与水準や金額を設定していきましょう。
公開・非公開の運用ルールを決める
給与テーブルをどこまで従業員に公開するかは、制度設計の際に検討しておきたいポイントです。
労働基準法では、労働契約を締結する際に、賃金の決定・計算・支払方法や賃金の締切日・支払日、昇給に関する事項などの条件を明示することが求められています。また、常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則にも賃金の定めを記載し、従業員に周知しなければなりません。
もっとも、給与テーブルそのものを開示しなければならないという法令上の規定はありません。明示や周知が求められているのは、賃金がどう決まるかというルールの部分だからです。ただし、給与テーブルを賃金規程の別表とするなど、就業規則の一部として位置づけている場合には、周知の必要があるため注意してください。
なお、給与テーブルを公開するかどうかは、次の点を踏まえて判断しましょう。
- 公開する利点:従業員が昇給後の給与水準や、キャリアに応じた処遇をイメージしやすくなる
- 公開による懸念:他の従業員の給与を推測されやすくなる、上限が見えることで頭打ち感を持たれる
自社の人事制度や組織風土を踏まえ、公開・非公開の範囲を検討することが推奨されます。
制度改定を前提に見直しやすい設計にする
給与テーブルは、一度作れば終わりというものではありません。最低賃金は原則として毎年改定されるため、下位等級の給与額が最低賃金を下回っていないか、定期的に確認する必要があります。
また、人事制度の変更や賃上げなどに伴い、等級区分や給与水準そのものを見直すこともあります。等級数や号俸数を細かく設定しすぎると、制度改定のたびに修正する範囲が広がり、管理の負担が大きくなります。
将来の見直しも想定し、自社で無理なく管理・運用できる粒度で設計することが大切です。
Excelでの管理は更新漏れ・入力ミスに注意する
給与テーブルをExcelやGoogleスプレッドシートで管理している企業も少なくありません。手軽に始められる一方で、運用中に更新漏れや入力ミスが起こる可能性があります。
例えば、昇給や昇格後の金額を反映し忘れたり、行や列を追加した際に数式が崩れたりするケースです。また、ファイルの構造や更新方法を特定の担当者しか把握していないと、異動や退職の際に引き継ぎが難しくなることもあります。
給与額の誤りは、従業員への不足額の精算などの対応が必要になるだけでなく、給与制度そのものへの信頼にも影響します。給与テーブルを作成する段階から、表計算ソフトで管理し続けるのか、システムを活用するのかも含めて、管理方法を検討しておきましょう。
給与テーブルの作り方

給与テーブルの作り方は、採用している等級制度や評価制度、給与体系などによって異なりますが、基本的な流れは共通しています。ここでは、給与テーブルを作る基本的な手順を4つのステップに分けて解説します。
【1】等級や役職など、給与を分ける基準を決める
最初に、どのような基準で従業員の給与に差を設けるのかを決めましょう。職務内容や職務遂行能力、役割・責任の大きさなど、区分の軸は企業によって異なります。
例えば、「担当者」「リーダー」「管理職」といった役割をもとに大きく区分し、必要に応じて等級を細分化する方法があります。組織規模や役職構成に対して等級を細かくしすぎると運用が複雑になるため、自社の実態に合った区分にすることが大切です。
また、「どのような役割を担えば次の等級に上がるのか」が判断できるよう、各等級に求める役割や能力などを言語化しておくと、評価制度とも連動させやすくなります。
【2】基本給・役職手当など、給与テーブルに含める項目を決める
次に、給与テーブルで管理する給与項目を決めましょう。基本給のみを対象とするのか、役職手当や職務手当なども含めるのかによって、給与テーブルの形は変わります。
このとき、家族手当や通勤手当など、本人の状況や実費などに応じて支給額が決まる手当は、給与テーブルとは分けて考えると整理しやすくなります。どの給与項目を等級や役割と連動させるのかを明確にしたうえで、給与テーブルに含める範囲を決めましょう。
【3】等級ごとの給与レンジと昇給ルールを決める
続いて、等級ごとの給与水準を設定します。採用市場における給与相場や自社の支払能力、現在の従業員の給与分布などを確認しながら、各等級の下限額・上限額などを決めていきましょう。
号俸制を採用する場合は、号俸ごとの金額や昇給幅も設定します。例えば段階号俸表型であれば、「評価Aは4号昇給、評価Bは2号昇給」のように、評価結果と昇給号数を対応させる方法があります。
あわせて、昇格した際にどの金額へ移行するのかなど、等級をまたぐ場合のルールも決めておくことが重要です。給与テーブルだけでなく、「どのような場合に、どのように給与が変わるのか」までセットで設計しておきましょう。
【4】人件費を試算し、運用ルールを整える
給与テーブルの案ができたら、現在の従業員を実際に当てはめ、人件費への影響を試算します。制度導入後の給与総額だけでなく、数年後の昇給・昇格を想定した場合に、人件費がどの程度増加するかも確認しておくと良いでしょう。
新しい給与テーブルを適用すると、現在の給与が新制度上の水準を上回ったり、下回ったりする従業員が生じることがあります。既存の給与を引き下げる場合は労働条件の不利益変更となるため、新しい給与テーブルに合わせて一方的に減額することはできません。
個別の同意を得る方法のほか、就業規則による改定の場合は、変更内容の合理性や代償措置を設け、従業員へ周知するなどの対応が必要です。激変緩和措置として調整給を設けるなど、移行方法を慎重に検討しましょう。
最後に、昇給・昇格の時期や決定権者、給与テーブルを改定する際の承認フロー、データの管理方法などを定めます。給与テーブルは、金額表を作るだけでなく、実際に運用できるルールまで整えて、初めて機能する仕組みになります。
給与テーブル運用のよくある課題と解決策
給与テーブルの運用では、昇給・昇格の反映や給与計算との連携、制度変更に伴う見直しなど、さまざまな課題が生じます。ここでは、給与テーブルの運用で起こりやすい3つの課題と、その解決策を解説します。
昇給・昇格時の更新漏れが発生する
給与テーブルの運用で注意したいのが、昇給や昇格の決定後に、給与テーブルや給与計算システムへの反映が漏れてしまうケースです。更新漏れに気づかないまま給与計算を行えば、誤った金額を支給することにもなりかねません。
こうしたミスを防ぐには、次のような運用ルールをあらかじめ決めておくことが有効です。
- 更新する時期と担当者、承認者を明確にする
- ファイルの保存場所を一本化し、最新版を分かるようにする
- 昇給・昇格の決定から給与計算への反映までをチェックリストで管理する
また、Excelで管理する場合は、セルやシートの保護機能を利用して数式の誤変更を防ぐほか、更新手順を文書化するなど、特定の担当者に運用が属人化しないようにすることも大切です。「誰が・いつ・どのデータを更新し、誰が確認するのか」まで決めておくことで、昇給・昇格時の反映漏れを防ぎやすくなります。
給与計算システムと連携性がなく二重管理になる
給与テーブルはExcel、給与計算は給与計算システム、従業員の等級や役職は人事システムというように、情報を複数の場所で管理している企業もあります。
このような状態では、昇給や昇格のたびに複数のデータを更新しなければなりません。手入力や転記の回数が増えるほど、更新漏れや入力ミスが発生する可能性も高まります。
対策としては、給与テーブルと給与計算システムを連携させるなど、同じ情報を何度も入力しなくても良い仕組みを整えることが有効です。例えば、従業員の等級や号俸を変更すると、それに応じた基本給が給与計算に反映される仕組みであれば、転記作業を減らせます。
システムを選ぶ際には、給与テーブルを登録できるかだけでなく、等級・役職の変更から給与計算までをどの程度連携できるかも確認しておくと良いでしょう。
給与テーブルの維持・更新に工数がかかる
給与テーブルは、昇給や昇格だけでなく、最低賃金の改定や賃上げ、人事制度の変更などに応じて見直す必要があります。従業員数や等級・号俸の数が増えるほど、Excelなどでの手作業による管理には負担が大きくなります。
前述したような更新漏れや二重管理を減らしたい場合は、給与テーブルを管理できるシステムを活用することも選択肢のひとつです。
勤怠管理システムの「レコル」は、給与計算オプションで給与テーブル機能に対応しています。基本給や役職手当などの支給金額を給与テーブルとして登録し、給与計算に利用できます。給与テーブルと給与計算を同じシステム上で管理できるため、Excelから給与計算システムへ金額を転記する手間もかかりません。

「レコル」は、勤怠管理が月額1人100円、給与計算オプションを含めても月額1人300円で利用できます。勤怠と給与を1つのシステムで扱えるため、勤怠データの転記作業も不要です。表計算ソフトで給与テーブルを管理することに課題を感じている方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
給与テーブルは、給与を決定する基準を明確にするための仕組みです。整備することで、昇給・昇格時の給与決定の根拠を説明しやすくなるほか、中途採用者の給与設定や将来の人件費の試算にも活用できます。
作成する際は、他社のテンプレートをそのまま当てはめるのではなく、自社の等級制度や評価制度、給与体系に合わせて設計することが大切です。また、従業員への公開範囲や周知方法、制度改定時の見直し方などもあわせて検討しておきましょう。
さらに重要なのが、作成後の運用です。昇給・昇格時の更新漏れや、Excelと給与計算システムの二重管理は、給与計算のミスにつながる可能性があります。誰がどのタイミングで更新するのかを明確にするとともに、必要に応じてシステムも活用しながら、無理なく継続できる管理方法を整えておきましょう。
プロフィール

内山 美央(特定社会保険労務士) |
| 社会保険労務士法人MIO Partners 代表社員 HR専門のコンテンツマーケティング「人事ライター」所属 新卒3年目で社会保険労務士資格を取得。ITベンチャーでの勤怠管理システムの営業・導入コンサルティング経験を経て、大手事業会社の人事部にて労務管理や人事業務のDX推進に携わる。独立後は「労働時間管理のプロフェッショナル」として、HRテックの知見を強みに、人事システムの選定・導入支援から制度設計まで、働き方の改善を入り口に、会社に寄り添った長期視点での人事労務サポートを提供している。 |
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